2012年02月24日

西尾市議会と中日新聞の消防団バッシングが招く、地域防災の崩壊

 このブログでは普段と毛色の違う、しかも長大な記事となりますが、重要な件につきご理解いただきたいと思います。

 2月22日、中日新聞朝刊に目を疑うような悪質な記事が掲載され、全国の消防団員から戸惑いと怒りの声が上がっております。

「西尾の消防団、公費でコンパニオン代」
(↑新聞紙上では団員を擁護する意見も併記されていましたが、公式サイトの記事は批判的な論調の文章しか掲載されておらず、そちらが中日新聞の公式見解であると判断いたします)

 さらに夕方には、以下の記事がアップされました。
「西尾の消防団、震災翌日も公費で宴会」

 はっきり言いましょう。
 何が問題なのかまったく理解できません。
 消防団の実態についてまともな取材を行っていないことは明白であり、実に劣悪な記事であると言えます。
 公務員叩きもここまで来たか、世も末だなと思わずにはいられません。
 おそらく、運良く消防団に一切の関わりを持たずに生きてこられた人(特に都会の住民)は記事に同調して「けしからん!」と考えてしまうでしょうから、詳しい解説を行います。

・消防団員の身分
 まずは基礎知識から。消防団員は「特別職の地方公務員」です。
 しかし、「公務員=相応の給料をもらっている人間あるいは特権階級」ではありません。
 「消防団員は特別職の地方公務員である」というのは、何か特別な権利を有しているという意味ではなく、むしろ一般民間人よりも多くの制約と義務を課されているという意味です。
 しかも消防団というのはそれが本職なのではなく、他に仕事を持っている人間が空いた時間で、プライベートを削って参加する仕事なのです。

・消防団員の処遇

 記事中では「団員報酬(年間1人5万5千〜14万3千円)」と書かれていますが、これは実に怪しい数字です。
 というのも、金額に幅がありすぎるからです。
 例えば千葉県四街道市の消防団員報酬(年額)は、団員が3万2千円、班長が3万8千円。
 14万円以上ももらえるのは、団長だけです。

 これで「年間14万円も貰っている団員がいる」というのは、平社員と管理職の給料を並べて語るようなもので、実に悪意のある、または無知を曝け出した記事であると言えるでしょう。
 わたしの想定よりも記者が愚かだった場合、年間活動報酬と退団金を混同している可能性もありますね。
 また、横浜市では団員2万円、班長2万1千円、団長ですら5万円。雀の涙とはこのことです。

上ではかなり好意的な推測を述べたのですが、この「年間1人5万5千〜14万3千円」という記述には、その元となっている可能性の高い文書が存在します。
 西尾市議員・鈴木規子がばら撒いているビラに、まったく同じ数字が書かれているのです。
 消防団に対する悪意に満ちた品性下劣な文章であり、最早怪文書と呼べるレベルです。
 中日新聞の記者は、この文書だけを見て他の取材をせずに記事を書いたのではないか?と疑いたくもなります。

・消防団員の労働量の実態

 消防団の主な活動のひとつに、「操法大会に向けての練習」があります。
 操法大会とは、ポンプに布ホースと筒先を繋ぎ、実際に送水を行って的を倒すまでの速さと正確さを競う大会です。ここで身に着ける動作・操作は実際の消火活動でも必要とされるものが多く、消火活動訓練的な意味合いを持っています。
 2010年11月23日にNHK総合で放送された「火を消すだけじゃない 消防団の底力」という番組が良い出来だったんですが……ネット上で公開されてませんかね?
 まあ、こちらのサイトで「操法」の詳細を確認してもらうと良いでしょう。
「e‐カレッジ 防災・危機管理」
 この練習量ですが、早朝または夜間1〜2時間の練習が、緩いところで年間30日程度。厳しいところでは100日をゆうに超えます。

 さらに、毎月1〜2回、休日を使った消火設備等の点検業務。
 毎月19日の防火PR(半鐘を鳴らしながら消防車が近所を回っていますよね。あれです)。
 秋・春の火災予防週間(↑を一週間やるってことです)。
 年末3日間の夜警(19あるいは20時〜0時まで拘束。朝まで拘束の団もあるかも?)。
 火災出動(夜中でも叩き起こされ、平日であれば仕事を休まされる場合も。また、プロの消防隊にも活動限界があり消火後すぐさま撤収してしまうので、残火監視は消防団の仕事となります。夜間に火災が発生した場合、翌朝まで寝ずの番をさせられることもあります)。
 台風・地震などの災害に対応した出動。
 地域行事への参加。祭の警備。出初式の階梯操法(当然練習もある)。
 忙しい月ですと、土日の半分以上が潰れることもあります。
 本職と消防団活動の板挟みとなり、精神を病んでしまう人もいます。

 さあ、活動報酬と労働量の実態ををざっとお教えしました。ここで問います。

 あなたは、この条件で働きたいと思いますか?

 これでも「無償ではないのだからボランティアではない。文句を言わずに働け」と言えますか?

 しかも、消防団員は頻繁に命の危険に晒されます
 東日本大震災で多くの消防団員が殉職されたことは記憶に新しいと思います。雲仙普賢岳の火砕流でも、危険な地域に無理矢理侵入したマスコミを連れ戻そうとした団員が巻き添えになって殉職されました。
 しかし「あれらは特別な例だ」と思っている人はいませんか?
 消防団員の殉職は、激甚災害指定クラスの災害以外でも容易に起こり得ます。
 例えば台風・豪雨による増水。伝聞ですが、実話です。
 堤防上で水位の監視を命じられ、暴風雨の中、川岸で監視。当時は情報が錯綜していてわからなかったが、解散後、実はある地点で冠水寸前になっていたことが判明。
 もし、もう少し雨が強かったら……と、団員は血の気が引いたそうです。
 また、うちの近所でも住宅火災が発生したことがあるのですが、あたり一面に白い煙が立ち込め、視界はほとんどゼロ。煙のせいで喉が痛く、まともに呼吸もできない。
 そんな環境で、消防隊員・消防団員の怒号が飛び交っていました。

 さて、もう一度質問です。

 消防団員の報酬は、その負担に相応しい額ですか?
 命に見合った金額ですか?


 勿論、公務中の負傷によって障害を負った場合は見舞金が支払われ、殉職した場合は遺族に弔慰金が支払われます。そのための共済制度があります
 (※東日本大震災によってあまりにも多数の殉職者が出たため財源不足となり、弔慰金の額は引き下げられました。)
 しかし、当人にとっては死んだらおしまいですよね。
 報酬を受け取れるのは、生きている間だけなんです。
 地域住民は、消防団員が生きている間に慰労するべきなんです。

・西尾市消防団員は非難されるべきか?

 ここまで理解したうえで、中日新聞の記事をもう一度読んでみましょう。
 ……西尾市消防団員の金の使い方は、非難されるべきものですか?
 彼らには、日々の活動を労われる権利があるのではないですか?

 それに、厳密に「公金」から遊興費が出たとは断定し難い部分があります。
 記事中にはこう書かれています。
「100人分の団員報酬(年間1人5万5千〜14万3千円)と、出動1回ごとに1人2800円支払われる手当の全てを慣例で団がプールしていた」
 ……これって「公費」でしょうか?
 一度団員の懐に入ったお金ですよね。それって私有財産じゃありませんか?
 自主的に集めて、共同で管理していた。そのお金は、当然団員が自由に使って良いんじゃありませんか?

 何故共同管理していたのか理解できない人もいるかもしれませんが、推測は容易です。いやまあ、現役団員からの証言ももらっているのですが。
 簡単な話、幽霊団員対策です。
 活動報酬は団員個人の口座に直接振り込まれるため、出席率に関係なく等額受け取ることができます。
 しかしこれでは、名前だけ登録して活動に参加しない団員、忙しくて滅多に参加できない団員まで金を受け取ることができ、不公平が生じます。
 そこで、活動報酬が振り込まれ次第回収・共同管理することで、消防団活動に参加している者のみが正当な恩恵に与れる環境を構築するのです。
 激務の対価で飲み食い……いったい何が悪いんでしょう。

 こう言う方もいるかもしれません。
「消防水利管理費名目になっているのだから、助成金を遊興費に充てたのだろう」と。
 ならば返しましょう。だからなんですか?と。
 何故助成金を遊興費に充てるような事態が発生するのか?

 答えは簡単、金が足りないからです。

 日々の活動に伴う飲食代・備品代などで、団員活動報酬はあっという間になくなってしまいます。なにしろ雀の涙ですから。
 でもそれでは、消防団員は必要経費しか受け取れていないのと同義ではありませんか。
 頑張ってくれた団員たちを労い、新たに入ってくる団員を歓迎する。その費用はどこから捻出すれば……。
 これ以上は言わなくても理解できますよね。

 「それでも公金である以上、遊興費に充てるのは問題だ! もっと厳格に管理するべきだ!」
 と堅苦しい理想を主張するヒトもいるでしょう。
 ならばこう返します。

 そもそもの制度がおかしい、と。

 団員を労うのに充分な、負担に相応しい金額を最初から支払っていれば良いのです。活動報酬を増額すれば良いだけです。
 そのうえで助成金を打ち切るのなら、誰も文句は言わないでしょう。

 現行制度のもとで厳格な資金運用を強要するのは、地域防災の重要な柱のひとつである消防団員を無用に苦しめるだけの愚策でしかありません。

 「震災直後に宴会を開くのは不謹慎」ですか?
 一応相手をしておきましょう。というか、繰り返しになるのですが――
 消防団員は公務によって死ぬかもしれないんですよ?
 東北の犠牲者を他人事だと思っているから宴会を開けるのではありません。「明日は我が身」だとわかっているから、生きているうちに少しでも楽しく過ごすのです。
 愛知県は、東海地震が起これば甚大な被害が出ると予想されています。当事者意識など、無いはずがないではありませんか。
 「津波注意報発令中」?
 記事中に「災害対策本部解散後」って明記されているじゃないですか。
 あれですか、あなたは仕事上がりの飲み会や晩酌も一切禁じられるのが正義だとお考えですか。でしたらもう話が通じませんので、どこかわたしの目の届かないところへ行ってください。


・消防団員の冷遇は、地域の防災能力を著しく損壊させる。

 キツくて危険で責任ばかり大きくて、割に合わない仕事。
 実質ボランティア。

 こんな消防団活動を、好き好んでやりたがる人間なんてそうそういません。
 ならば何故参加するのかと問えば、こう返ってくるでしょう。
「この地域に住んでいるからだ」と。
 義務感・正義感・善意・しがらみ・諦め。そういった想いによって
「嫌なことも多いけど、まあ仕方ない。やってやるか」
 そうやって参加し、なんとか楽しみを見つけていくのが消防団活動です。

 しかしですね……義務感で自分たちを律するのにも……冷遇にも……限度ってものがあるのですよ。

 サービス残業への批判、最近特に盛んですよね。
 どうです? 消防団活動。サービス残業と似ているとは思いませんか?
 時給換算してみて、どう感じられますか?
 やりたくないって、思いませんでした?
 その時間で最低賃金のバイトやった方がマシだって思いませんでした?

 そんな実情と世相の変化が合わさり、消防団員の数は年々減少と高齢化の一途をたどっております。
 今後も地域防災能力を、消防団を維持したいのならば、待遇の改善が必要になってくるでしょう。東日本大震災によって、防災能力の向上は日本中で急務となっているはずです。その一環としても、対応が必要でしょう。
 しかし驚くべきことに、愚かにも、西尾市は23日、消防団交付金の廃止を決定しました
 最早、西尾市消防団の崩壊は免れえないのでは、というのが自分の予想です。彼らが今後すべての活動をボイコットし、あるいは一斉退団して自ら消防団を事実上の廃止に追い込んだとしても、それを責める気はありません。

 さらに警戒すべきは、この愚挙が中日新聞によって連日報道されていることです。それもあのような低劣な記事で。
 もし今後、この件が各地に飛び火し、消防団の待遇悪化が相次いだとしたら……。
 多くの消防団が存続不可能となり、地域防災能力が著しく低下する恐れがあります。


 それを防ぐために、今回この記事を書かせていただきました。
 皆さん、もっと消防団の実態を知ってください。
 ネットで調べるだけでも具体的な数字が、一次資料が大量にみつかります。
 身近に消防団員がいる方は、直接実情を教えてもらってください。
 マスコミの垂れ流す偏った情報に騙されないでください。
 そして、皆さんの地域の消防団員を、どうか支えてあげてください。


 最後に、言わせていただきます。
 地域防災能力を削がんとする西尾市議会、及びそれを後押しした中日新聞。

 両者を「公共の敵」として、

 
声を大にして非難いたします!!

 絶対に許せません!

 
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
posted by nekome at 23:26| Comment(11) | TrackBack(0) | 日記

2012年02月23日

王道入れ替わりTSにしてそこに留まらない!『山田君と7人の魔女』連載開始!

 噂には聞いていましたが、巻頭カラーで入れ替わりTSモノが連載開始とはマガジン始まりすぎでしょおおおおおおおおおおおお!?
 表紙における宣伝からして
「優等生女子とアウトロー男子が入れ替わり!
 吉河美希にしか描けない学園コメディ誕生!!」

 カラー扉絵のキャッチフレーズとアオリは
「ボーイ チェンジ ガール ラブコメディ新連載
 心と体が入れ換わる!
 新たな世界が見えてくる!!
 キミとの出会いが全部の始まり!!」

 ですからね。メジャー少年誌が入れ替わりTSを前面に押し出して売り出すとは……!

 進学後落ちこぼれてやさぐれている男子高校生・山田竜は、クラスメイトであり学年トップの成績を誇る美少女・白石うららと共に階段を転げ落ちた拍子に入れ替わってしまいます。
 
 保健室で目を覚ました時、山田は白石の体になっているんですが、この気付きのシーンからして完璧!
 「TSモノにおいて『気付き』のシーンは非常に重要」というのは、我々の間では常識。
 その水準からしても文句のつけようがありません。

 なにしろ、ベッドで身を起こして視線を下ろしたら胸の谷間が!
 そしておもわず揉んで確かめる!
 股間を触って「・・・・無え!!!」
 慌てて姿見に自分を映して「白石になってんじゃねーかぁぁッ!!!」

 ……そう、こうあるべき。こうあるべきなんですよ。帰宅後に気付くとかあり得ないですもん。
 
 しかし、こういうベタな内容だけで終わらないのが本作品です。
 入れ替わりを自覚して白石の様子を確かめようとすると、なんと彼女は山田の体のままで教室に戻ったというのです!
 慌てて教室へ向かうと、そこには平然と、不自然なほど熱心に授業を受ける「山田」の姿が。
 教室からつまみ出すも、山田の体の白石は「状況はわかっているが、元に戻れるであろう方法は放課後まで試す気はない。また気絶するのは困る。これ以上授業を休めない」と会話を打ち切ってしまいます。
 しかも、平然としているもののどうやらトイレまで経験したご様子(汗)

 完全に白石のペースなんですよね。
 これ、男の方が内気・弱気なキャラだった場合は珍しくないんですよ。『僕と彼女の×××』『AKUMAで少女』『先輩とぼく』とかでも元女側が主導権握ってますもんね。
 しかし、『山田君と7人の魔女』は男の方が不良であるにもかかわらず一向に自分のペースで行動できない! これは面白いですよ。というか、こっちの方が面白いですよ!
 だって、内気な少年が女の子になって、一層受け身キャラになって……じゃ当たり前すぎるじゃないですか。男らしいキャラが女になって、それでも振り回されてしまうのが面白いんです。

 とはいえ山田だって思春期の男の子です!
 やられっぱなしじゃありません。女子トイレに入って下着姿(+α)を拝むぐらいはしますよー。

 でも根が善人なのか、白石のイメージを崩さないよう、人目につくところでは「女の子らしく」振る舞ってあげようとします。
 うん、「女の子らしく」です。
 あくまで男子がイメージする「女の子らしく」です。
 過剰なまでにきゃぴきゃぴした「女の子らしく」です。
 つまり……「本物の女の子らしく」は、それ以上に「白石らしく」はないんですよね(笑) おかげでことごとく空回り。

 ここまでは、「TSモノとしての面白さ」を徹底的に押さえた王道的な作りなんですが、白石の体で過ごすうち、山田は彼女が抱えている事情を身を持って知ることになり――
 
 単なるコメディの道具として入れ替わりTSを用いるだけでなく、捻りを加え、さらに一歩踏み込んだ物語作り。
 一話読み切りとしても通用する綺麗なまとめ方であると同時に、連載の導入としても申し分ない内容。
 実に完成度の高い作品と言えますねー。これは当分、マガジンを購読する週が続きそうです……!

 ――ところで、『山田君と7人の魔女』ってタイトル、気になりますよね?
 最初は「魔女」って言葉から、入れ替わりの手段に魔法・魔術等が用いられるのかと思ったのですよ。
 しかし白石うららは(ちょっと厄介な事情を抱えているものの)普通の少女でした。
 となると、「魔女」とはもしかして「男にとって不可解な存在」である「女性」そのものを指しているのでは、という推測もできます。
 さらに、「7人」ってまさか……入れ替わり対象が7人登場するのか?と考えちゃいますよね。
 山田が入れ替わりによって「7人の魔女」――「7人の女性」を理解していく内容になるのでは、とか想像しちゃいませんか?

 いやいやいやいや焦るのはまだ早い。
 一般層向け作品での肩すかしは何度も食らってきたじゃないか。
 しかし……しかし、もし期待通りの内容になったとしたら、それはTS作品史に残る神作品となり得るやも……!
 妄想どまりになるかもしれませんが、まさかの超メジャー誌で目の離せない作品が始まったものです。

2012年02月22日

女勇者に憑依できたらナニする?『ツイてる勇者さま!』

 TSエロ小説ジャンルで活躍する狩野景さんの新作、ついに出る!

 狩野景『ツイてる勇者さま!』(あとみっく文庫)

 即位したての少年魔王・アーヴェンガルドは、少数の仲間とともに魔王城へ潜入してきた女勇者・クラリスによって打ち倒されてしまう。
 しかし死後気が付くと、アーヴェンガルドの魂はクラリスの肉体に憑依していた!
 どうやらクラリスの意識がない間だけ身体を使えるらしく、彼女に気付かれないのを良いことに魔王はパーティの人間関係を引っ掻き回し始め――

 読む前は「魔王の側にイニシアティブがあるのかな?」と思っていたのですが、どうやらほぼ対等だったようですね。
 魔王は勇者が起きている間のことを知らず、勇者は魔王が身体を使っている間のことを知りません。
 けど魂が他人の肉体に入ってるわけですから当然、魔王の方は事態を理解できると。
 だから! 色々やらかしちゃってくれるわけです!(^^)

 状況を把握した魔王が真っ先に考えたのが「勇者の身体で悪逆の限りを尽くすことで、勇者と人間共に復讐してやろう」だというのが素晴らしいですね。
 TSエロ作品に登場する、魔を統べる王ともなれば、憑依シチュでそれぐらい考えてもらわなければ。
 しかし残念なことに、完全な乗っ取りはできておらず、身体を使えるのは勇者が寝ている間だけ。
 ならばと魔王が考えたのは、ネオン王国の辺境に巣食う「喚身の魔女」ナスタロヴィカ(!)の力を借りて勇者の精神を追い出すこと。
 魔王の存在に気付いた魔導士の少女・エピカを脅してナスタロヴィカのもとへと誘導させつつ、巨乳な女剣士とレズったり初心な聖騎士を誘惑してからかったり……。

 「こんなエロゲがやりたかったんじゃー!」と叫びたくなるようなシチュエーションでして、序盤は大興奮。
 憑依TSならではのエロシーンも勿論嬉しいのですが、それ以上に好きなのがエピカを脅迫する時のこの台詞。
「分かっているだろうが、俺に背けば勇者のすました顔に跡が残るような傷を付けてやるからな。いくら勇者とはいえ女にとってはかなりのショックになろうだろうなあ?」
 こう言って自分(クラリス)の顔にナイフを突きつけるんですよ! Yes! ナイス憑依脅迫!

 ただ自分の趣味的に残念なのが、アーヴェンガルドが女体で快楽を貪ることにあまり積極的ではないことですねー。
 彼の嗜好はあくまでノーマルなので、どちらかというとパーティ内の人間関係をかき乱す方がメインになるのです。
 男をからかったりはしても、自分がヤられるのは嫌、と。

 とはいえ、これは男性としては至極普通な思考。
 女に憑依したその日から男に跨りたいって変態は残念ながら少数でしょうからね。

 まあ意図せざるものだったとはいえアーヴェンガルドも男を知ったことですし、無理なく2巻が出せる内容になっていますんで次こそは、
 このTSっ娘、陥落た……!
 と言えるようなシーンがあることを期待したいです。
posted by nekome at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2012年02月21日

「Teiresias」は『ツイてる勇者さま!』を応援します!

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 この作品を応援しなければ、自分は自分でいられない。自分は自分を許せないっ……!

 狩野景『ツイてる勇者さま!』、2012年2月21日、あとみっく文庫より発売予定!

 やってくれますね狩野景さんーーーーっ!!
 キルタイムがTS押しに舵を切って! 狩野景さんのTSモノにGOサインが出て、変身モノ出して変身モノ出して入れ替わりモノ出して、ここでついに! 満を持しての!
 憑依TSモノ来たーーーーっ!!

 しかも「倒された魔王が女勇者に憑依」とか!
 常時乗っ取りっ放しじゃなくて、好きな時だけ身体使ってパーティーメンバーとエロいことするとか!
 最高! 最高すぎる! もう今から興奮と妄想が止まらない!

 ちょっと諸事情あって『換身の騎士アルベルト 淫靡な魔女と入れ替わった肉体』(二次元ドリームノベルス)発売直後の記事更新タイミングは逃してしまったんですが、あれがまた素晴らしいシチュエーションとクオリティでしたからね。
 (連載1話目感想はこちら)
 高潔な騎士が邪悪な魔女と身体を入れ替えられ、しかもその肉体は魔女本来のものではなく過去同じく入れ替えられた罪なき少女のものだったりして、自分自身の肉体に犯され、自分のことを魔女だと思い込んだ仲間たちからさんざん嬲られ、さらには肉親とも関係を持ってしまい――
 屈辱感と倒錯感と背徳感に責め苛まれながら悦楽に蝕まれ堕ちてゆくさまは読み応えがありましたねえ。
 狩野景さんのTSモノは新シリーズになるほど「TSモノとしてのクオリティ」がアップしているように思われますので、最新作でしかも憑依となればそりゃもう期待しちゃいますよ?!
 期待しちゃって良いですよね?
 あああ待ちきれないいいいいいいいいいいいいい!

 (※記事作成日:2012年2月7日)

posted by nekome at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2012年02月20日

どっちを選ぶ?×2……だけじゃない?!『アイドルプリテンダー』1巻

 今週のTSモノ攻勢は一体どうしたことでしょうか。どれから読んでどれから感想を書くべきか悩ましすぎます(^^;

 で、まずは「俺が女の子になっちゃったら、百合かBLか、それが問題だ!」と帯の時点で始まりすぎているこの作品から行きましょう。

 晴瀬ひろき『アイドルプリテンダー』1巻(チャンピオンREDコミックス)

 主人公・因瑛太(ちなみえいた)は憧れの先輩に振り向いてもらうため、漢の中の漢を目指して日々荒っぽい生活を送っていた。
 しかし高熱で意識が朦朧としている時にうっかり怪しい薬を飲んでしまい――目が覚めた時には美少女の姿に!
 実はその薬、寮のルームメイトで変人の小栗圭介が大金をはたいて買ったもの。
 もう一度薬を買うためには、その美しさを活かしてアイドルになって稼ぐのが一番!と小栗に説得された瑛太は、漢の中の漢に戻るため、アイドル「ちなみ」として女を磨くことに……?

 「男に戻るために女らしくなれ! しかもアイドルとして!」という超速球展開。こういうの――大好きだぜ!
 ナルシストかつ女装趣味という小栗にワンピースをあてがわれてメイクまでほどこされ、鏡に向かったちなみの「俺がこんなに可愛いはずがない! 俺がこんなに可愛いはずがない!」という反応にはニヤニヤが止まりませんね。
 元の性格が性格なので、女らしく振舞うことに抵抗がある、けど外見はめっちゃ可愛い、という王道的ギャップ描写が充実していてたまりません。

 アイドルを目指す過程で、既にその業界で活動を始めていた憧れの先輩・北乃ユイカとお近づきになってしまったり、(変態だけど)なにかにつけて優しくしてくれる友人・小栗にときめいてしまったり、はたまた女装少年にも迫られたりして――!?
 男に戻って先輩に告白するか?
 女のままで先輩とつきあっちゃうか?
 女のままで友人とくっついちゃうか?
 多分ないけど、女のままで女装少年に身を許しちゃうか?
 性別の選択に恋愛ルートの選択まで絡まって、揺れ動くちなみの明日はどっちだ!

 TSっ娘をとりまくドキドキニヤニヤな要素が満載で破壊力抜群です。絵もひたすら可愛いですし大当たりですよこれはー。

2012年02月13日

撃て、永楽通砲!『ノブナガン』1巻

 誰でしょうね、こんな記事タイトルを打ちながらドヤ顔になっているのは。
 ええわたしです。
 でもさ! このデザイン見たらそう言わずにはいられなかったんだよお。

 久正人『ノブナガン』1巻(アース・スター コミックス)

 書店には是非この本を平積みか棚面陳で売ってほしい!
 いやそりゃ、面陳の方が棚差しより有利なのはたいていの本に共通してるでしょうけど、この漫画は特に帯とビジュアルの効果が大きいんですよう。
 タイトル見た時は、そこまで惹かれなかったんですよ。
 ああまた信長かと。異世界に召喚されたり未来のレストランに飛ばされたり女子高生に憑依したりそもそも女の子だったことにされたりと大変だな、と。
 しかしですよ、『ノブナガン』の帯にはこう書かれているのですよ。

「織田信長が銃になる…!?
 偉人の魂を武器に変え
 進化する侵略者に立ち向かえ!!」

 今度は銃になっちゃうのか信長!
 それに「偉人の魂を武器に」ってことは、信長に限らないし銃にも限らないのか!

 ここでようやく興味を持って裏表紙を見るんですが、そこには作中の一コマが載っていて、主人公とおぼしき少女が腕に装着した巨大な銃を構えている姿が描かれているんですが――
 その銃の先端が、「永樂通寳」なんですよ。

 うん、買った。このデザインを見られた時点で金払って良いと思った。

 そこまで来てようやくあらすじに目をやります。裏表紙から引用させていただきましょう。
「修学旅行で台湾を訪れた女子高生「小椋しお」。
 そこに出現した謎の巨大怪獣「進化侵略体」に襲撃を受けるが
 偉人の魂を受け継ぐ者たち「E遺伝子ホルダー」に助けられる。
 そして友人の危機に、しおの「偉人の魂」が覚醒する…!」


 「偉人の遺伝子でE遺伝子(ジーン)って駄洒落かよ!」と笑う人もいるでしょうが……これがね! 想像以上にガチで熱くて格好良いんですよ!

 偉人が別の時代・別の世界で活躍するお話、好きな人多いですよね。ええ自分もです。
 しかし、聖杯戦争にせよ廃棄物との戦争にせよ、使える人物は基本的に武人。直接戦闘を行える人物か、戦闘指揮を執れる人物に限られます。
 戦に縁のない人間は活躍の場がありません。少なくとも前線には出られません。

 その一方、『ノブナガン』で活躍する条件は「歴史に名を残す傑物」であること。
 偉人の遺伝子から形成される武器となると、元が武人である必要はないんです。
 具体的には、「マハトマ・ガンジー」だって「アイザック・ニュートン」だって活躍できます!
 彼・彼女らの武器がどういう能力を持つかというのは、実際に読んでいただきたいところですね。

 「E遺伝子ホルダー」たちが立ち向かう敵、「進化侵略体」はかなり洒落にならない恐るべき異星起源種。
 連中は隕石に紛れて単細胞の状態で地球の海に落下。
 そこで地球の環境に適応して猛スピードで進化・学習し、陸上へと侵攻を行うのです。
 出現が確認された順番に名称を挙げていくと、
 ジョンストン魚雷型
 ハワイ巡洋型
 ビキニ巡洋型
 サイパン重巡洋型
 サイパン砲艦型
 台湾揚陸艇型
 台湾歩兵型
 その最終目標はおそらく、惑星を生態系ごと乗っ取ること。
 「進化侵略体」に通常兵器は効かず、「E遺伝子ホルダー」たちの「AUウェポン」でしか対抗できません。
 織田信長の生まれ変わりであることが判明した小椋しおは、否応なくこの絶滅戦争に身を投じることとなり……。

 ギャグっぽいタイトルと侮ることなかれ。
 地球の命運をかけ、多彩な能力を用いる「E遺伝子ホルダー」たちの派手で熱い戦いが見られます!
 これは早く続きも読みたいですねえ。まだ名前しか出てない「ラスプーチン」や、名前とビジュアルしか判っていない「モーツァルト」に出番はあるのでしょうか。どんな活躍をしてくれるのでしょうか?
 興味を持った方は是非、買って応援してください。


 ところで主人公の女子高生・小椋しお、かなりの軍オタなんですよね。
 パッと見ただけで「F-CK-1」や「CM-11」が判るとか、どんだけですかー!(笑)

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2012年02月11日

マッドサイエンティストは記憶コピーで自分FUCK!『ハカセが助手でオレがオレで。』

 幾夜大黒堂さんがまたまたやってくださいました!

 『ペンギンクラブ山賊版』3月号掲載『ハカセが助手でオレがオレで。』

 自分のことを理解してくれない人間の助手などいらん! 自分と同じ知識を持った助手を創造してくれるわ!
 と考えた博士・松戸研太は女性型人造人間の頭脳に自分の記憶をめいっぱいコピーするのですが……記憶どころか自意識までコピーされていた!
 助手が言うには、「オレは目覚める直前まで松戸研太として生きてきた!」とのこと。
 完全に想定外の結果だったのですが、普通に自分の身体で生きている博士にとってはある意味他人事。この現象を探求することなく、速やかに助手の性能が目的に叶うものかどうか確認しようとします。

「この身体の目的って… はっ!!」
「さあ まずは……!」
「だが断る!!」
「まだ何の確認か言ってないだろ?!」
「言わんでも自分の考えは… 女性型助手にした理由知ってるし!!」
「わかってるならいいじゃんか!」

続きを読む

2012年02月06日

操るアバターは生身の女の子?『NOT LIVES ‐ノットライヴス‐ 』1巻

 連載もちらっと読んでたんですが、単行本で1話目からちゃんと読んだら思ってた以上の当たりでした!
 だってね、表紙を見るとヒロインとおぼしき美少女の横に、ゲーム風の選択肢が描かれているのですよ。

「そのまま通り過ぎる」
「呼び止める」
「いきなり抱きつく」
「天宮鏡花を操る」

「天宮鏡花を操る」って。

「天宮鏡花を操る」って。

 大事なことなので2回言いました。ええもうこの時点で興奮必至ですよ! そりゃ買っちゃいますよ!

 烏丸渡『NOT LIVES‐ノットライヴス‐』1巻(電撃コミックス)

 多数の同人ゲームやソーシャルゲームを製作し、そこから収益すら上げられるほどの極度のゲーム創作バカ・三神シゲル。
 ユーザーのリクエストに応えるべく、いつものように大量の「資料用ゲーム」を買い込んで自宅に向かうのですが、途中で人とぶつかって荷物がバラけてしまい――慌てて拾い集めて帰宅後確認すると、見覚えのないゲームディスクがひとつ。
 『NOT ALIVE』とだけ書かれたそのゲームディスク。マニュアルどころかジャケットすら存在しないので、どんなゲームか予想がつかなかったものの「どんなゲームでもゲームであるなら資料になる!」と創作バカのポジティブ思考でプレイしようと、ディスクに手を触れます。

 しかしその瞬間、ディスクは彼の身体の中に溶け込み、
「ユーザー登録が完了しました
 情報をアバターへ転送します」
 というシステムメッセージが表示された後、彼は不思議な空間に取り込まれ、気が付くと――

 女になってる!!(どーん)

 ここ、過去最速クラスの「気付き」シーンだと思うんですがお読みになった方いかがでしょう?
 
 気付いた時点で目の前にショーウィンドウがあったものだから、はい♪
 右手挙げて
 左手挙げて
 頬つねって
 (貧乳だけど)胸触って
 スカート捲ってパンツ眺めて

 女になってる!!(どーん)

 ですよ。
 おいおいおいおい。なんですかこの美味しすぎるスタートはと(笑)
 しかもその女の子の姿のままで、「未知のゲーム」に興奮して瞳を光らせ頬を緩ませてるもんだから「別人になってる」感が強いのなんの。

 ただし、正確に言うと、これは三神シゲルが女の子になったわけではありません。
 フルダイブ型のゲーム世界で女性型アバターを操作しているわけでもありません。

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2012年02月04日

生の代償――性の代償?『サイ:テイカー 2人のアルテミス』第0話

 林達永(イム ダリョン)&李秀顯(イ スヒョン)コンビのTSモノを読める日が来るとは……!
 こいつァ感動ものですよ。実は林達永さんが原作務めてる作品は掲載誌でチラ見する程度(あと『フリージング』のアニメを観た程度)で、単行本1冊も持っていないんですがたいてい組んでる作画担当さんの絵柄が大好きでしてね!
 じゃあなんで単行本買ってないかというと、買い始めるとキリがなくなるからです。仕事しすぎです先生!

 しかし今回ばかりは、禁を破って買わねばなるまい!
 『月刊コミックアライブ』3月号で連載開始された『サイ:テイカー 2人のアルテミス』は充分すぎるほど期待できるTS枠なのだから……!
 
 まずは設定のご説明――
 この作品世界には「ライフ」と呼ばれる特殊かつ万能な新資源があります。それは普通の人間には出入りできない「狭間の刻」でしか採取することができません。
 ではその空間を認識できるようにするにはどうすれば良いのかというと、「ライフ」を動力とし、それを特定の使用者にシンクロさせることで対象を超人に変化させる装備「サイ」と契約し「サイテイカー」になるのです。
 ただし、適性の問題があるので「サイテイカー」になれる人間は限られます。

 はーい質問きましたねー?
 じゃあそもそも、その「サイ」を起動させるための「ライフ」はどっから採ってきたのよ?って疑問ですねー。
 特殊装備を使わなければ採取できない資源を消費して起動する特殊装備……普通に考えれば成り立ちませんよね?
 まあそこには、公にされていない真実があったりするのです。
 つまり……現在世間に認知されている「サイテイカー」というのは人工的に作り出されたものに過ぎず、オリジナルが存在するわけなんですよ。
 そのオリジナルが使っていた道具と採取してきたライフを活用して創られたのが「サイ」だったということです。

 この辺、社会の裏で色々と揉めごとがありまして……前置き長くなりましたが、その揉めごとが原因で主人公の少年が事件に巻き込まれるのです。


 さーてそんじゃネタバレ行きますよー一般読者ならともかくここの読者はネタバレ部分こそが購読の理由になりますからねー。
 けど連載開始直後だし、思いっきり格納しますよー。

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2012年01月28日

TSファンの痒いところまで手が届く『なりゆきショウガール』

 今やアンリアル屈指のTSエロ漫画家、まる寝子さんの最新単行本は迷わず買い!です!

 まる寝子『なりゆきショウガール』(アンリアルコミックス)

 『コミックアンリアルアンソロジー 催眠術・マインドコントロール編』「みゆんみゆんにしてあげる」を読んだ時から、「おおっ、この方なら良いTSモノが描ける……!」と思っていたものですけど、最近はこちらの想像を超えるバリエーションでTSモノを次から次へと発表! それらの多くが詰まっているのが、この単行本です!

 「いれかわりイノセンス」はオーソドックスな入れ替わりモノながらも、男女双方とも内面の描写が充実している作品。あとがきによると、本当ならエッチシーン以外にもTS的な見所を描きたかったそうで。そこは是非、またの機会にやっていただきたくっ。

 「アルティメットおやま」は女装モノかーと肩を落としかける人もいるでしょうが、それはまだ早い。主人公は女形の修行のため「女子として」転校してくるのですが、早くも性別バレの危機に。水泳の授業を乗り切るため、秘技によって肉体を女性に変えるのです。
 つまり女装モノに見せかけた変身TSモノ。で、こっからが素敵なんですが、この秘技は肉体に対する自己催眠のようなものでして、自分が女であると強く認識すればするほど変化が進み、定着していってしまうのです! そう、この設定は「堕ちるTSっ娘」を描くのに非常に向いている! いやー見事ですわー。

 表題作でもある「なりゆきショウガール」は特にクオリティの高い作品。というか! 自分好み!
 「発表会のアシスタントガール ※男性に限る」という謎のバイト募集に応じてみた主人公。行った先で渡されたのはキャンペーンガールの衣装。それを着ると、驚異のテクノロジーによって肉体が女に変化してしまいます。
 雇用先の研究者が言うには、その「メタモルウェア」こそが目玉製品であり、イベント期間中、女に変身したままでキャンギャルを務め、最終日に種明かしをしたいとのこと。
 流されるままにキャンギャルデビューしてしまう主人公。不慣れな姿ゆえに最初こそ戸惑っていたものの、注目が集まるのにしたがって気分が乗ってきてしまいます。
 だよね! 可愛い女の子として注目されて、写真撮影求められたりしたら悪い気しないよね!
 っていうか、男心をそそる衣装と媚びたポーズで撮影会モデルとかやりたいから! や・り・た・い・で・す・か・らーっ!!
 ついつい調子に乗ってしまう主人公の心情も理解できるってもんですよ。
 いやほんとキャンギャルとか憧れるんで、理想のひとつを体現してるんですよねえこの作品。

 そして主人公への感情移入度という点ではさらに上を行くのが「♂♀トランスレイヤー」
 この作品の主人公、「同人イベントでコスプレしてみたいけど、やりたいのは女性キャラのコスプレであり、似合わないからやらない」という、あれ? なんで自分登場してるの……感(^^;
 そんな彼が偶然手にしたのが某企業の試作品美容液スプレー。これを男性の身体に吹きかけると、その部分が女性的に変化してしまうのです。
 女らしい顔、女らしい骨格と胸の膨らみ。
 それらを手に入れられたのなら――そう、やるっきゃない! 女性キャラのコスプレを!
 美少女レイヤーとしてイベントを満喫する主人公は、会場でオタク友達2人と遭遇。彼らにナンパされたものだから、面白がってついてゆくのですが、正体がバレそうになる度にスプレーを追加使用し、肉体をどんどん変化させて乗り切ろうとしてしまいます。
 そう、段階的部分変身モノなんですよこれ。狭いとこ突いてきますよね〜。
 当然ながらエロ展開に持っていくわけですが――オチが凄い! 正直これは予想できませんでしたわー。このコマだけで興奮度がえらいことに!

 「俺、メタドール」はタイトルからして説明するまでもなく、まさかの! メタドールものです!
 単純な変身・入れ替わり・憑依ならともかく、商業誌でメタドールが読めるなんて……!
 プログラムによって支配され、本意に反して他人の命令に従ってしまうとか、ツボを突いてくれますよ。エロシーンで描かれる「変化」も実に好みで、もうどんだけ狙い撃ちすれば気が済むのかっ。


 とまあ、TS内メジャージャンルのみならず痒いところまで手の届く素敵な作品群となっております。
 しかも巻末にオマケ漫画的な「くらしの知恵袋 女の子になってしまったら」が掲載されているのですが、これが「18禁TSガイド的」な内容でして、発想が完璧にTS愛好者のそれ……!
 最後の最後まで感服させられてしまいました。
 最早まる寝子さんは、TSエロ漫画専門家の一人と言えましょう。あとがきにも今後の希望が書かれておりましたし、これからもこのジャンルでのご活躍をお祈りしたいところです!
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