2012年02月13日

撃て、永楽通砲!『ノブナガン』1巻

 誰でしょうね、こんな記事タイトルを打ちながらドヤ顔になっているのは。
 ええわたしです。
 でもさ! このデザイン見たらそう言わずにはいられなかったんだよお。

 久正人『ノブナガン』1巻(アース・スター コミックス)

 書店には是非この本を平積みか棚面陳で売ってほしい!
 いやそりゃ、面陳の方が棚差しより有利なのはたいていの本に共通してるでしょうけど、この漫画は特に帯とビジュアルの効果が大きいんですよう。
 タイトル見た時は、そこまで惹かれなかったんですよ。
 ああまた信長かと。異世界に召喚されたり未来のレストランに飛ばされたり女子高生に憑依したりそもそも女の子だったことにされたりと大変だな、と。
 しかしですよ、『ノブナガン』の帯にはこう書かれているのですよ。

「織田信長が銃になる…!?
 偉人の魂を武器に変え
 進化する侵略者に立ち向かえ!!」

 今度は銃になっちゃうのか信長!
 それに「偉人の魂を武器に」ってことは、信長に限らないし銃にも限らないのか!

 ここでようやく興味を持って裏表紙を見るんですが、そこには作中の一コマが載っていて、主人公とおぼしき少女が腕に装着した巨大な銃を構えている姿が描かれているんですが――
 その銃の先端が、「永樂通寳」なんですよ。

 うん、買った。このデザインを見られた時点で金払って良いと思った。

 そこまで来てようやくあらすじに目をやります。裏表紙から引用させていただきましょう。
「修学旅行で台湾を訪れた女子高生「小椋しお」。
 そこに出現した謎の巨大怪獣「進化侵略体」に襲撃を受けるが
 偉人の魂を受け継ぐ者たち「E遺伝子ホルダー」に助けられる。
 そして友人の危機に、しおの「偉人の魂」が覚醒する…!」


 「偉人の遺伝子でE遺伝子(ジーン)って駄洒落かよ!」と笑う人もいるでしょうが……これがね! 想像以上にガチで熱くて格好良いんですよ!

 偉人が別の時代・別の世界で活躍するお話、好きな人多いですよね。ええ自分もです。
 しかし、聖杯戦争にせよ廃棄物との戦争にせよ、使える人物は基本的に武人。直接戦闘を行える人物か、戦闘指揮を執れる人物に限られます。
 戦に縁のない人間は活躍の場がありません。少なくとも前線には出られません。

 その一方、『ノブナガン』で活躍する条件は「歴史に名を残す傑物」であること。
 偉人の遺伝子から形成される武器となると、元が武人である必要はないんです。
 具体的には、「マハトマ・ガンジー」だって「アイザック・ニュートン」だって活躍できます!
 彼・彼女らの武器がどういう能力を持つかというのは、実際に読んでいただきたいところですね。

 「E遺伝子ホルダー」たちが立ち向かう敵、「進化侵略体」はかなり洒落にならない恐るべき異星起源種。
 連中は隕石に紛れて単細胞の状態で地球の海に落下。
 そこで地球の環境に適応して猛スピードで進化・学習し、陸上へと侵攻を行うのです。
 出現が確認された順番に名称を挙げていくと、
 ジョンストン魚雷型
 ハワイ巡洋型
 ビキニ巡洋型
 サイパン重巡洋型
 サイパン砲艦型
 台湾揚陸艇型
 台湾歩兵型
 その最終目標はおそらく、惑星を生態系ごと乗っ取ること。
 「進化侵略体」に通常兵器は効かず、「E遺伝子ホルダー」たちの「AUウェポン」でしか対抗できません。
 織田信長の生まれ変わりであることが判明した小椋しおは、否応なくこの絶滅戦争に身を投じることとなり……。

 ギャグっぽいタイトルと侮ることなかれ。
 地球の命運をかけ、多彩な能力を用いる「E遺伝子ホルダー」たちの派手で熱い戦いが見られます!
 これは早く続きも読みたいですねえ。まだ名前しか出てない「ラスプーチン」や、名前とビジュアルしか判っていない「モーツァルト」に出番はあるのでしょうか。どんな活躍をしてくれるのでしょうか?
 興味を持った方は是非、買って応援してください。


 ところで主人公の女子高生・小椋しお、かなりの軍オタなんですよね。
 パッと見ただけで「F-CK-1」や「CM-11」が判るとか、どんだけですかー!(笑)

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2011年09月19日

美少女って見ててムカつきませんか『美少女を嫌いなこれだけの理由』

 すっごく久しぶりの更新ですがTSモノの話ではないです。ただこの界隈の人間も結構楽しめるんじゃないかとは思いますね。
 なにしろ発売直後、極楽トンボさんから直で「間違いなく猫目さんにはツボると思うんで、読んでみてくださいねー!」と薦められたぐらいですし。
 はい、速攻読んで大いに気に入りましたとも(^^) 遅くはなりましたがやはり宣伝はしておきたい。

 遠藤浅蜊『美少女を嫌いなこれだけの理由』(このライトノベルがすごい!文庫)

 《美少女》と呼ばれる種族と人類が有史以前より共生しているっぽい地球、が舞台。
 《美少女》って言うからには外見は皆美少女です。完璧なまでの美少女ばかりです。
 ええ、老いも若きも男も女も――全員外見が美少女、という種族なのです。
 当人たちには普通に区別がつきますが、ほとんどの人類に美少女の実年齢と実性別の区別なんてまず不可能です。
 ちゃんとメンタリティも男女異なるんですよ?
 男性の《美少女》は女性が恋愛対象ですし、言動も男性的です。

 外見は可憐な美少女なのに、メンタリティも喋り方も完全に中年のおっさんなキャラとかいます。
 
 まあ外見以外にも色々特徴があるんですが、とにかく理不尽です。
 ひたすら理不尽な種族です。
 「美しく可愛らしくあること」を神に義務付けられたかのような――いや、保障されたかのような種族です。
 個人的にはその恵まれっぷりが非常に妬ましいです。
 
 だいたいなんでメンタリティが男性なのに当たり前のように可愛い服着てるんですか。
 ええ、ええ、わかってます。そういう種族なんですね。
 《美少女》ですもんね。
 理由は創造神に訊けってことですね。ふぁっく。

 
 とまあそんなイカレ設定の種族が隣にいる日常が描かれているわけですから、面白くないわけがありません。
 
 ああそうそう。男女の区別があるってことは、男性の《美少女》にも男性機能があるってことです(通常時は全裸になっても女にしか見えませんが)。
 ぶっちゃけて言えば、相手が《美少女》の女性であれ人類の女性であれ、ちゃんと孕ませられるってことです。
 つまり、ビジュアル的には実に不思議な組み合わせの夫婦とか親子が存在し得るわけで……うん想像すると愉快この上ない。
 

 ところで主人公はとある事情から《美少女》の性別年齢をほぼ正確に判断できるんですが、自分の読み落としでなければ、某キャラだけ実性別を教えてくれません。
 あれだけ可愛くておっぱい大きくて一生老いないのに男性かもしれないとか……。
 まったくムカつきます。
 これだから《美少女》は。

2011年07月03日

それはギャグか狂気か真摯な問いか『僕の妹は漢字が読める』

 伏兵にもほどがある。


 発売前からラノベクラスタ外にも一気に話題が広まったので、ご存知の方も多いでしょう。
 
 かじいたかし『僕の妹は漢字が読める』(HJ文庫)

 舞台は23世紀。
 この時代の日本人は大半が漢字を読めず、21世紀では考えられないレベルで萌えと二次元を崇拝している。
 「正統派文学」はひらがなのみの特異な文体で描かれ、萌えとパンチラと無意味な脱衣に満ち満ちている。
 そんな日本で小説家を目指す高校生イモセ・ギンは、二人の義妹とともに、「正統派文学」の大家オオダイラ・ガイのもとを訪れる。
 敬愛するオオダイラと親交を深めることができたギンだが、ある日彼ら4人は謎の現象に巻き込まれ――

 発売前に興味を持った人の例に漏れず、自分も公式の立ち読みで内容を知って頭を抱えると同時に戦慄を覚えたくちです。
 これはもう実際に読んで頭抱えるのが一番。
 23世紀の日本ってのが、もう狂気を感じる次元ですからね。
 「文学は死んだ」なんてレベルじゃないぞ(^^;

 それで、持て囃されているのがこう……途轍もなく「軽薄」で「低俗」な作品群なわけです。
 オオダイラ文体に至ってはもう、「低俗」とかいう次元ですらなくて、まともな神経では読むことさえできない。


 そんな社会を描くことで、作者は何を見せようとしているのか――凄く気になるから買ったわけですが、ええ、このブログの記事を読みにきてる以上、気になるのは別のことかもしれませんね(^^;
 いいでしょう、まずはそっちの要素について。

 「伏兵」って言ったのはこっちのことです。


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2010年09月11日

最新型戦略級魔法少女を運用せよ!『魔法少女プリティ☆ベル』2巻

 作者買い以外で1巻を買ったやつの大半! ネタ漫画だと思って、買っただろう?
 そりゃあ表紙が普通の魔法少女モノで、中じゃあボディビルダーのおっさんが魔法少女役こなしてると聞けば、表紙詐欺のギャグだと思うわな。
 (知らない人のために言っておくと、変身しても容姿体格は変わらず衣装を無理矢理着てる誰得状態)

 でも違ったんだ。
 ネタで終わるような作品じゃなかったんだよ。
 読んだ人はわかると思うけど、主役・高田厚志さんは魔法少女の格好でボディビルのポーズ取って喜んでる変態じゃない。
 大人としての義務を果たすために危険を自ら引き受けた、最高に格好良い覚悟ある漢なんですよ。
 2巻帯では虚淵玄さんが「これで本当にカッコイイもんだから始末に負えない」と書かれてますが、まさにその通り。
 
 そして、物語が本格的に動き出すこの巻において、この漫画の面白さは危険域に突入する――!

 KAKERU『魔法少女プリティ☆ベル』2巻(ブレイドコミックス)

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2010年02月04日

2009年下半期ライトノベルサイト杯に投票します

 ようやく職場復帰!
 まだ首は辛いので、整形外科に寄ってリハビリしてます。
 今年の厄はもう終わりだと思いたいですね。せめて夏が終わるまではトラブルなしで!


 さて、2009年下半期ライトノベルサイト杯への投票です。

『ぷりんせす・そーど! (3) 戦うサツキと恋の道』
【09下期ラノベ投票/既存/9784797354652】

 もっと注目されても良い作品!
 戦闘の度に主人公が女装させられたり性転換魔法で女体化させられたりといった要素に引かれて買ったのは確かですが、真の魅力はそこじゃないと思う。
 陰謀ありありの戦争で、どこでどう情勢が引っくり返るかわからないので面白い。
 →感想記事

『這いよれ! ニャル子さん3』
【09下期ラノベ投票/既存/9784797356359】
 
 安心して読めるネタ塗れラノベ。
 3巻では男女入れ替わりを書いてくれたことよりも、その手段として「偉大なる種族」の技術を用いてくれたことに感激。アンタよくわかってるよ!
 →感想記事

『紫色のクオリア』
【09下期ラノベ投票/新規/9784048679046】
 
 SF脳を刺激する良作。
 この作品を楽しめた人は、一刻も早く小林泰三の『玩具修理者』を買って読むんだ。他の収録作品まで読むんだ。
 ああ、君たちの惑い苦しむ姿が目に浮かぶようだよ。

『アンシーズ 〜刀侠戦姫血風録〜』
【09下期ラノベ投票/新規/9784086305051】

 自分の「男」を抜き出して武器に変えたら、身体が女の子になっちゃうのは当然だ!
 男をかけた男の戦い、ただし絵的には美少女のみ!な最強素敵設定が光る、TS学園バトルラノベの決定版。
 web掲載最初期からの読者としても元同人仲間としても、この作品が本になって世に出たことには感動を禁じえない。
 →感想記事

『ねこシス』
【09下期ラノベ投票/新規/9784048680714】

 俺妹シリーズ真のヒロインたる黒猫の原型キャラが登場するなら読まずにはいられない!
 と思って手に取ったのだが、それだけでは終わらない良作だった。
 人外の存在がヒトの身体感覚や社会生活にに戸惑い、少しずつ馴染んでいく描写が秀逸。

『末代まで! LAP1 うらめしやガールズ』
【09下期ラノベ投票/新規/9784044748012】

 幽霊と霊能者がタッグを組んで、100キロババアに乗ってレースをする――って、そんな珍妙な設定にのめり込めるのか?と思ったのですが、これがかなりイケるんです。
 幽霊と霊能者、それぞれの特性が上手く組み合わさったレースシステムはなかなかにワクワクさせてくれるもので、続編の公式戦が楽しみ。
 作者が挿絵を担当しているだけならともかく、商業誌に漫画を載せられるレベルというのは凄い。

『クロノ×セクス×コンプレックス (1)』
【09下期ラノベ投票/新規/9784048681452】

 「ファンタジーとSFはTSとの相性が良い」とは言うものの、タイムリープと魔法学園という、それだけで一本作れる要素を両方混ぜながらちゃんと面白いというのは見事。
 ワクワク感はかなりのもので、先の展開、裏の展開を色々想像せずにはいられない。
 →感想記事

『魔王様げ〜む!』
【09下期ラノベ投票/新規/9784059035428】

 可愛い女の子に変えられた男は、魔王様に押し倒されるべきなんだよ!
 TSのお約束を完璧に踏まえつつも、そこにとどまらない超優良コメディ。
 もっと広く才能を知らしめたい新人さん。
 →感想記事

『シアター!』
【09下期ラノベ投票/新規/9784048682213】

 お金の話をきっちり考えられる人って大好きです。
 演劇経験者は間違いなく楽しめる&胃が痛くなる作品ですが、同人活動経験者にもかなり通じるところがあるのでは。ということで演劇を知らない同人屋にどんどん読ませたい。
 そうそう、これは感想じゃないんですけど、脚本集は絶対売れると思うので、積極的に作ってくれると嬉しいです小劇団の皆さん。 

『龍盤七朝 ケルベロス 壱 』
【09下期ラノベ投票/新規/9784048682190】

 今最も続きが読みたい作品じゃないだろうか。
 主人公たちの超人的な戦闘に目を奪われる。燃えずにはいられない。しかし、倒すべき敵は完全に理外の存在……。この絶望的な状況が始まりでしかないというのが信じられない。
 どうでも良い話だが、廉把の戦いぶりを見て「こいつならアーチャー務められるな!」とか考えてしまう自分はいまだにFate脳。


 選び始めてみたら、思った以上に新規部門が豊作で、削るのに苦労してびっくり。あれか、冬コミサークル参加しなかったからか(^^;
 TS要素のある作品がやたら多いですが、贔屓したわけじゃないよ! 今期は本当にクオリティ高いの多かったんだ。
 折角ですし、この機に少しでも人目につけば……。

2009年12月09日

蟲憑き増殖中!『碧海のAiON』4巻

 夏コミへの参加を検討されている方、もうコミケカタログは買われましたか?
 「同人誌を作ろう!」のコーナーでも書いていますが、コミケにサークル参加する人間が最初に買うべきなのは「サークル参加申込セット」――ではなく。
 最新の『コミックマーケットカタログ』です。たとえ今回、現地に行かなくても!
 サークルの抽選で落とされる、かなりの割合が書類不備です。特に初めての場合は。
 カタログを隅々まで読んでおけば、そういった事態を防ぎやすくなります。買い物用のデータが載ってるだけの本じゃないんだよ! 重要な情報、役に立つ情報山盛りです。
 あと余裕があればマンレポとかも読んで、他の人たちがどんな思いでこのイベントに参加しているのかも感じ取ってもらえると嬉しいですね。



 『碧海のAiON』4巻で口移し寄生来たーーっ!!
 待ってた待ってた。こぉれを期待してたんだ。
 帯に書かれた「感染拡大!!」のコピーは本当でしたね。
 空ろな笑顔で凶器を用意する女の子たち、イイなあ。
 この作品は影崎由那さんの変態性が結構出ていて、ヒロインが「ぐっちゃんぐっちゃんにされるために作られた」娘なもんだから、5巻の妄想が膨らんじゃうなあ……。
 まあ、女の子が男に殺されるのはわりとダメなんですけどね、自分。
(だから「呪怨」(漫画版)はNGで、「喰霊 零」の魍魎は超OK)

 表舞台に上がってきた人魚も人外ヒロインな立ち位置を確保しつつあるし、ますます面白くなってきました。
 けど、星音とシーラって血みどろで殺し合う関係だよなあ……何しろあの首だよ? ますます危険な作品になってきた(^^;
 まあ、短編集ではカニバリズムだって載せてたもんね。
 で、わたしはそれを普通に楽しめてるわけなんですが(ヤバイものはもっとヤバイし)。

2009年11月04日

舞台は迷宮ディストピア『オープンダイス・キングダム』

 速見螺旋人『オープンダイス・キングダム』(冒険支援株式会社)

 TRPG「迷宮キングダム」の紹介コミックです。
 プレイしたこともなければルールも知らない人間なんですけど、友人から紹介されてつい買ってしまいました。結構お高いのに……(汗)
 冗談のように奇妙でありながら、徹底的に作り込まれた世界観に惚れてしまったんですよね。

 「迷宮キングダム」の舞台となるのは「百万迷宮」と呼ばれる世界。
 迷宮災厄(ダンジョンハザード)と呼ばれる現象によって、すべての空間が迷宮と化してしまった世界です。
 この世界に空はなく、「天階」と呼ばれる迷宮が広がり、この世界に海はなく、「深階」と呼ばれる迷宮が広がっています。それらの階層に挟まれた真中の階層が「グランド・ゼロ」であり、人間たちはこの壁と通路といくつもの部屋で構成された迷宮の中で暮らしています。
 勿論、ただ迷宮になっているだけではなく、そこには致死性のトラップもあれば大量のモンスターもいる。
 天階には「天使」、深界には「深人(ふかびと)」がそれぞれ住んでいますが、どちらも人間とはまったく違う精神構造の異種なので注意が必要です。グランド・ゼロと天階・深階はエレベータ(原理不明)で繋がっていますが、うっかり生きた人間が乗ってしまうと、着いた先で食い殺される可能性も高いです。
 「エルフ」と呼ばれる種族の中には美しい種もいますが、深人の一種であり、人間よりは魚類に近いです。不用意に近づくと食われたり奴隷にされたりすることもあります。
 
 また、迷宮化現象は今なお進行中であり、昨日まで通路があったところに壁が出現してしまったり、もっと複雑に変化してしまうこともある。
 もう人々が見ることのなくなった太陽の代わりに「星」と呼ばれる鉱石の光で農業を営んでいるのですが、せっかく石畳を剥がして畑を耕しても、ある日突然迷宮に戻ってしまうことがあります。しかも、生産物の1%は「血を吸う野菜」に変化し、農夫に襲い掛かります。
 もう絶望するしかなさそうなディストピアですが、人々は結構タフに生きてます。ランドメイカーと呼ばれる者たちを中心に作られた、無数の小王国に寄り集まって。

 ランドメイカーというのは土地の迷宮化をある程度防ぐ能力を持った人間で、彼らが結成した「宮廷」が国の運営の中枢を担い、怪物を退治し、冒険に出て迷宮を切り開き、他国との戦争(頻繁に起きる)にも対処します。
 随分と役割が大きいですが、たいていのRPGに出てくる冒険者に当たる存在です。
 この漫画の主な舞台となる「オープンダイス王国」はランドメイカー5人程度、総人口100人程度の卓上王国ですが、数ある王国の中には列強と呼ばれる大勢力も存在します。
 知識階級が支配する、伝統と格式の「千年王朝」。
 百万迷宮の完全破壊による人類解放を目指す「ダイナマイト帝国」。
 器官車に引かれて移動する遊牧国家「メトロ汗国」。
 財貨の量が力となるサラリーマンディストピア「ハグルマ資本主義神聖共和国」。
 などなど。
 ハグルマは特に異様な国家と言えるのですが、そうなった理由づけはきちんとなされています。

 あと、個性的な宗教として「ビクトリー教」というものがありますね。
 ロシア・ミリタリー繋がりもあってか、こんなところで紹介されていましたので、そちらを見てみると早いかと思います。
 「軍拡は一時の恥。軍縮は一生の恥」など、神官・テオドラの言動はかなりイっちゃってますが、ビクトリー教神官としてはこれで正しいのだそうな(笑)

 ざっと世界観を紹介してまいりましたが、わたしもまだ表層部分しか理解してないと思います。
 なんとも興味をそそる奇妙な世界ですよ。



 ちなみに、小ネタですが、TSネタも入っています。
 呪いをかけられていて、女性しか愛せないという姫が登場するのですが……。
 呪われたままの方が、皆幸せだったのに!(笑)

2009年10月26日

ロボ娘の身体に人間の脳『ぴことぴけ』2巻

 以前、かなり暴走した記事で紹介してしまった中島零さんの『ぴことぴけ』2巻が発売!
 この巻にて完結です。ああ、もっと読んでいたかった……。

 そういえば、前回は作品の説明すらろくにしてないんでした。
 えーと、警察官になりたての主人公・鏑木璃子は初出勤途中に交通事故に遭い、撥ねた当人である新三ツ崎重工の研究者たちの手によって、ヒト型ロボットに脳を移植されてしまいます。
 元々警察署に配備予定の機体だったこともあり、璃子はロボ婦警「長府ぴこ」として生活することに。
 実はロボットではなくサイボーグだということは、一応周囲には伏せられてます(というか言っても信じてもらえないのですが)。

 ……うふあー、何度読んでもぴことぴけ(姉妹機)は可愛いなあ。
 わたしもあんなロボ娘に脳移植されたいですよ。
 たとえエッチなことができなくても構いません!
 どうせ今だってできないんだし、あれだけ可愛くなって可愛い服とか女性用制服とか着られれば、それだけでもう御の字ですよ!
 (いや性的な行為ができないとは明記されてないですけど、機体の用途からして、んな機能までつけてないだろうと 。肌の感触や触覚はヒトに近くて、入浴とかが楽しめる程度の機能ではあるんですよな……。)
 
 それに、機体各所の機械的な部分、ヒトらしからぬ機能や形状のところにまた惹かれるといいますか……。
 ああいう非人間的な身体になってしまうというか、モノに成り果ててしまうことを想像すると非常にゾクゾクするといいますか。
 前にも言いましたけど、なんといってもあの瞳!
 機械的なあの瞳!

 あんな物……っ 物質!!!
 諸行無常!! 盛者必衰!!

 ――すいません、取り乱しました。
 あー、なんでこんなに、人外な瞳に惹かれるんでしょうなあ。
 (瞳に限らず、また機械に限らずですけど)

 2巻ではハリコフ重工製の「KV7」という機体(巨乳オプション付き)も登場するんですけど、こちらもなかなか捨て難い……。
 おっとそういえば、犯罪者にハッキングされかかる展開もあるんでした。あくまで未遂ですけど、最初は無線で、次はコネクタを直接挿し込まれそうになります。

「大丈夫やて 怖がらんでええ……♪
 コイツでウチと繋がれば……新しいセカイが…」


 ってね!
 あ〜、頭ン中侵されそうになるのもいいなあ。有線だとよりイイね!

 なんだか、また作品内容じゃなくて脳内を垂れ流してしまった感じではありますが、2巻もロボ娘生活を想像して幸せになれる内容だったと思っていただければ(^^;

2009年10月20日

秋の夜長は関係ないけど読書は進む最近

 夏からこっち、何度も体調を崩しては持ち直しというのを繰り返していたら、だんだん完調時の身体がどんな感じだったかわかんなくなってきました……。
 実はもう元の状態に戻っているのに不調だと思い込んでいるだけではないのだろうか、とか。
 まあ、「長時間PCの前に向かっていられない」という状態は脱したんで、良くなってはいるんでしょう。
 今も首と頭痛いですけど。

 たとえ致命的に身体が悪くても、斑木研究所には行かない方が良いですな。
 『フランケン・ふらん』4巻は相変わらずふらんが悪意に鈍感で、「間違ってないけど一般感覚からズレてる」言動の連発で素敵でした。
 イジメに遭ってたヴェロニカはやっぱり普通の娘だし。性格的には一番可愛いのでは。
 わたしの最萌えキャラであるアドレアさんは人一人生きたまま飲み込んでました。それなんて触手プレイ! いかん、アドレアさんの体内体験してみたい。
 視覚的トラウマ率の高い出産の話を除くと、今回一番印象に残ったのはプリン(犬)の話でしょうか。あの映画は酷い(笑)
 あと、カバー下も相変わらず静かに酷すぎる。

 『ミカるんX』4巻は最初の山場
 なんというか、もう――本当にアニメ(&特撮)大好きですな高遠るいさん!
 あの古い字体で
 第壱期 最終参部作
 とか書かれると、こちらも震えが来ます。

 今月はラノベ新刊を順調に読めていて、昨日9冊目。
 学生時代は電車通学だったから、月10冊なんて当然だったのになあ……。
 『ねこシス』は鉄板買いだったんですが、それでも期待以上の出来。
 「ヒト以外」が「ヒトの身体」になった感覚をあれだけ丁寧に描写できる伏見つかささんなら、他にも色んなパターンを書けそうな気がします。
 わたしは『俺妹』の黒猫のことを、完全に猫又だと解釈して読んでいて、てっきり千夜子と同一人物だと思っていたんですが……。
 『ねこシス』の方がプロトタイプではあっても、完全に世界が繋がっているわけではないようですね。でも設定自体は同じなのかな?
 「マスケラ」には噴きましたよ。あれは最高の登場でしたねえ。

 『迷宮街クロニクル3 夜明け前に闇深く』
 カラーページを見た時点で即座に「もう啓一と別れなよ」と神野由香里に語りかけた人間です。お前は奥野か。
 いや、だってさ、あの娘はもっと幸せになれるはずだし、なるべきだよ。いつまでも啓一に縛られていたら苦しむばかりだと思う。
 
 いつ、誰が死んでもおかしくないという緊張感は今回も健在。まさかあの人が……。
 やはりHPの増えない本物の人間がダンジョンを探索するというのは恐ろしいこと。あっけなく一撃で死にますからね。この冒険者生活には憧れたくても憧れられません。
 今巻では地下迷宮の謎に迫る発言が出るなど、終局へ向けての動きが見られます。
 第3層の「あの区域」では確実に何かが起こりそうで怖いのですが、果たしてどんな結末を迎えるのか。実に待ち遠しいです。

 
 さて、読んでばかりいないで、そろそろ書く方も再開しようか……。リハビリが要りそうです。

2009年10月13日

敵も味方も過去から来た魂『双心のサヤ−刀姫推参!−』

 ちょおーーーーっ!? 個人的に思わぬ収穫がっ!!

 鳥生浩司『双心のサヤ−刀姫推参!−』(HJ文庫)

 大財閥の御曹司だが、メイドの紗耶と駆け落ちをして安アパート暮らしをしている上月雪柾。
 ある日、怪しげな暴漢に雪柾が襲われた時、紗耶に変化が。
 時代がかった物言いをし、刀を振るって暴漢を撃退した紗耶の身体に宿っていたのは、戦国時代のお姫様であり、雪柾の先祖でもあるというサヤ。
 なんでも、上月家に伝わる守り刀を通じて、紗耶とサヤの魂が入れ替わってしまったのだという。
 その後も、彼女たちはくしゃみをする度に入れ替わるようになってしまい……。

 というわけで、時代を超えての女同士の入れ替わり。
 見所としては、現代の知識がないゆえに奇行を繰り返してしまうサヤだとか。それを見て困惑する同級生たちとか。愛する紗耶の身体に他人が入っていることで、その扱いに雪柾が戸惑うさまとか。
 メイド=侍女とは「侍(さむらい)+女」と書くのだから、主に仕えるサムライガールのことなんだ!という解釈の下、
「妾が、そなたの侍女(めいど)になってやる!!」
 という台詞が飛び出て、実際その通りにメイド姿で日本刀を振るってチャンバラを繰り広げることとか。
 ――だと思っていたのですが!
 いたのですが!
 いやそれも確かにそのとおりなんですけれども!

 読み始めるまでまったく予想してなかったんですが、上月雪柾の命を狙って現れる連中というのが、最初の暴漢からすべて、サヤと同じ時代より送り込まれた禍魂(マガツタマ)に取り憑かれた人間だったのです!
 同級生の少女たちが、男性の禍魂に憑依されて集団で襲い掛かってくる展開もあり。
 つまり僅かながらもTS要素もあるということですが――そんなことより!

 重要なのは、わたしが「悪霊に憑依されたり催眠術で操られた少女に命を狙われるシチュエーション」に激しく興奮する人間だということだーーーーっ!!!
 禍魂たちは雪柾の命を奪うことしか考えていないので、色っぽい展開なんぞはありませんが、構いませんっ。たとえバッドエンドになっても(ならないけど)上等っ!
 もうこのシチュエーションだけで、わたしにとってはたいていの18禁作品にも勝るご馳走ですっ!!

 はぁはぁ。
 ……す、すいません、邪道な楽しみ方をして。
 でもこれは、こればっかりは変えられない。喋らずにはいられんのじゃああ……。
 くっ。禍魂に取り憑かれ、邪悪な笑みを浮かべながら刃を振るう少女の挿絵があったら言うことなかったんですが。<それはこの作品のウリじゃねえ

 あとですね。この「禍魂に憑依された少女たち」の中に、一人すっごく気になる娘がいるのですよ。
 殆どの場合、禍魂に憑依された人間は武器を取って襲い掛かってくるだけで、心が男なら口調も男のまんま、被憑依者の人格なんぞまるで無視、なんですが。
 一人だけ、何事もなかったかのように日常生活を送り、周囲に疑われることもなく本人らしく振る舞い、裏で黒幕として暗躍している人物がいるのです。
 彼女が憑依された(であろう)瞬間の描写が、またゾクゾクするので、以下に引用しておきます。
 ネタバレなので一応収納。

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2009年09月19日

経口憑依シーンが絶品『EVILIVE』2巻

 涼目当てで買ったアイマスDSと、館長さんのシナリオ目当てで買った『妹こうかん!』が昨日届きました。
 ぬおー、まだうみねこEP5終わってないぞ……。
 そして最近のDSは、もっぱら麻雀の練習に使われています。


 D.P『EVILIVE』2巻(ヤングチャンピオン烈コミックス)

 女悪魔・ベルフェゴウル=ラーゼンデヴォラは心臓に難病を抱えていた少年・桐堂志貴と契約し、彼に健康な肉体を与える。志貴を自分の虜にして、魂を真っ黒に汚しきってから地獄へ持ち帰ろうと目論むベルフェゴウル。
 しかし、エクソシストと組んだ志貴によって尻尾を切り落され、力と知能の大半を失ったちんちくりんな姿にされてしまう。
 心臓を治してやった恩も忘れて横暴に振る舞う志貴。どんなに働いても虐げられるベルフェゴウルの明日はどっちだ。

 うん、やっぱりこっちの視点の方がしっくりきます(爆)
 何度読み返しても志貴の方が外道ですもん。
 あと、この本(というかヤンチャン烈)は成年向けカテゴリに入れた方がしっくりくるような……。

 さて、2巻に収録された第10話には、このシリーズを読み始めたきっかけとなるシーンが!
 単行本化が待ち遠しかったですとも。
 ベルフェゴウルを追って人間界にやってきた女悪魔・ビーブリが、エクソシストの少女・唯緒の体を乗っ取るのですが、この時の描写がまた秀逸でしてな!
 まずは唯緒の兄を乗っ取ったうえで襲い掛かり、口移しで唯緒の体内へ。
 ピンク色の内臓の中に、笑い声とともに黒い霧が広がる。
 悪魔に侵食された印のように、唯緒の胸下に黒い葉脈状の染みが広がる。
 唯緒の口から黒い羽根が溢れ出し、涙を浮かべた抵抗の表情が、すぐに邪悪な笑みへと変わって瞳孔が縦に裂ける。

 経口憑依好きにはたまらない描写ですよ(^^)
 女→女の憑依ではありますが、絵のエロさもあって実に興奮しましたね! 連載時は何度も読み返したもんです。

 残念なのは、折角少女の体を乗っ取ってもすぐにバトル勃発で、その体でのエロい展開にならなかったことですねー。
 ……まあ、唯緒は小学生なんで限界はあるでしょうけど。
 いや1巻買って驚きましたわー。高校生か、せいぜい中学生だと思ってましたよ!

 しかしD.Pさんの描くバトルシーンは迫力がありますね。戦闘モードな女悪魔たちの凄味はかなりのもの。
 ポコシリーズにも頻繁に登場するように、和むちびキャラにも定評がありますけど、こんな逆ベクトルの絵でも力を見せつけるとは。
 エロシーンも肌に合いますし……ああ、『ポコのお仕事』以前の単行本も買いたかった!


 
 ちなみに、わたしが一番好きなのは悪魔の本性を完全に現している時のベルフェゴウルです。
 大きく裂けた口には鋭い歯が並び、額にも眼が現れ、曲がった角が生え、肌の色が変わったうえで全身に禍々しい文様が浮かび、手脚も獣、というか魔物じみたものに変化する。
 わたしを誘惑する時は是非こっちの姿で!
 人間向けに媚びた少女の姿だと、逆にあまり関心が湧かなくて困ります(爆)

2009年09月12日

生まれつつあるカモ

 ブームに押されて、というよりも多くの人の池田愛に押される形で(笑)、今更ながら『咲−saki−』の原作に手を出しました。

 なかなか読まなかった理由は、完全に乗り遅れたからとか、流行ってから手を出すのはなんか悔しいとかの捻くれたものもあるのですが――
 それ以上に、麻雀のルールを欠片も知らない、ってのがあったりします。
 ポン・チー・カンの意味もわからない。
 役をまったく知らないので、九蓮宝燈とかでもなきゃ揃ってるように見えない。
 テンパイの手前がイーシャンテンということすら、ムダヅモの2巻読むまで知りませんでした。
 流石に、大三元を食らっても血を噴いたりしないとか、牌をメスで斬ってはいけないことぐらいはわかりますけど(爆)

 まあ、咲は異能バトルだから麻雀知識なくても良いよなんて言われたこともあるのですが、試しにアニメを見たタイミングが悪かった。
 県予選決勝の中堅戦後半と副将戦前半でしてね。

「テンパイ」
「「「ノーテン」」」
「流局〜っ!」
 (略)
「本当に何もしてませんでしたわーっ!」

 
 という部分をいきなり見ても、何が起こってるのかさっぱりわからなかったんですよ(^^;
 画面に牌が表示されても、そこから何も読み取れませんしね。
 せめて県予選開始時点から観始めるか、あるいはステルスモモまで観ていればもっと興味を惹かれたんでしょうけどねえ。

 そんな具合だったんで躊躇してたんですけど、身近な人間がハマったこともあって、試しに1巻を買ってみたところ――
 あ、良かった、凄く面白い!
 ヒットしてるだけはあるというか、「点数が毎回プラマイゼロ」とか「嶺上開花を必ず出せる」とかやられれば、どんなに麻雀素人でも、人間技じゃないってわかりますもんな。
 コップの水をこぼさずに峠を走る、みたいな。

 その後はあっという間にハマって、6巻まで揃えてしまいました。
 ああっ、半年前に読み始めていれば、アニメも確実に観てたろうにっ……!
 仕方がないのでニコニコで補完してます。忙しい人シリーズとか。
 『池田ァ! GONG』は神作。池田を好きになりすぎるっ。
 でも一番好きなのは福路キャプテンな! 初めて絵を見た時からキャプテンラヴです。
 
 そして、ハマると今度は麻雀そのものもやりたくなるわけでして、今慌ててルールを勉強してます。
 県内で麻雀打てる知り合い、ぱっと3人は顔が浮かびますしね。
 ん、でも、今から打ち方を覚えても、良いカモになるだけではないのだろうか(汗)

2009年08月08日

2009年上半期ライトノベルサイト杯に投票してみます

 ギリギリですが、2009年上半期ライトノベルサイト杯に投票してみます。
 いつも「参加してみたいなあ……」とか思ってるうちに締め切りが過ぎてしまうのですが、今回はちょっと参加してみようかと。
 というか、トラックバック飛ばすのすら初めてだったり(^^;
 上手くいかなかったら、まあそれまでかー。

林トモアキ『戦闘城塞マスラヲ Vol.5 川村ヒデオの帰還』
【09上期ラノベ投票/既存/9784044266189】

 殆どノリで書いていたにもかかわらず、極小の伏線まで完全回収。そして、何度思い返しても涙が出るクライマックス。文句なしに傑作。
 これから読む方には、是非『お・り・が・み』を先に読んでおくことをお薦めしたい。鈴蘭たちが背負っているものの重さを知るために。

林トモアキ『ミスマルカ興国物語 IV 』
【09上期ラノベ投票/既存/9784044266196】

 林トモアキの底知れなさをあらためて実感した作品。陰謀の深さに打ちのめされろ。

アサウラ『ベン・トー3 国産うなぎ弁当300円』
【09上期ラノベ投票/既存/9784086304672】

 理想のライトノベルのひとつに挙げたい作品。とんでもなく非常識で馬鹿な内容なのに、話の作りはまるでラノベのお手本のよう。その見事な融合に唸ってしまう。
 そして、腹の虫も唸ってしょうがない。

伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない (3) 』
【09上期ラノベ投票/既存/9784048677585】

 ワナビには辛いかもしれないけれど、ワナビにこそ読んでもらいたい。
 黒猫が「彼女」に送った言葉が胸を打つ。

林亮介『迷宮街クロニクル (2) 散る花の残すもの 』
【09上期ラノベ投票/既存/9784797354096】

 死にフラグが存在しない恐怖。
 死と隣り合わせの日常を生きる、大勢の人間それぞれの内面を見事に書き出しています。
 読み終わったあと、ついつい『世界樹の迷宮U』を始めてしまいました。

竹宮ゆゆこ『とらドラ10!』
【09上期ラノベ投票/既存/9784048675932】

 アニメも素晴らしかったけど、原作最終巻のゆりちゃん先生の活躍も見てほしいんだぜ。
 私生活はかなりダメなことになってるけど、教師としては本当に素敵な人だと思う。
 
西尾維新『偽物語(下)』
【09上期ラノベ投票/既存/9784062837026】

 歯磨きプレイには愕然とした。まさか、まさかそんな変態行為が……!
 阿良々木君の変態紳士っぷりが目立つ巻ですが、本筋では結構真剣な見せ場もあります。

雪乃紗衣『彩雲国物語 黄梁の夢 』
【09上期ラノベ投票/既存/9784044499181】

 投票コードの最新刊は過去話なんですけど、本編の方での政治的な絶体絶命ぶりが凄いと思います。
 男性向け作品でありがちな力技は使われない気がしますし、果たして乗り切れるのか?


川原礫『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』
【09上期ラノベ投票/新規/9784048677608】

 完成度の高い作品。読む前は『クリス・クロス』と比べてしまうんじゃないかと思いましたが、杞憂に終わりました。
 作り込まれたゲーム世界は、それが牢獄でなければ惹かれずにはいられない。
 ただ、アスナが色々と理想的すぎて素直に萌えられない自分は負け組。

逢空万太『這いよれ! ニャル子さん 』
【09上期ラノベ投票/新規/9784797354140】

 こういう、ネタ詰め込みまくりの阿呆作品というのもラノベには欠かせないと思うんですよ。
 安心して楽しめます。
 ニャル子さんがもっとこう、SAN値が下がりそうな姿を見せてくれると、さらに興奮できるんですけどね。
 美少女姿は仮の姿で構わないんですよ。本性がアレだと思えばこそ惹かれるっ。


 思いの他新規作品を開拓できていないことが、ちょっとばかりショック。ぬうん、『紫色のクオリア』は7月だから対象外だしなー。
 既存部門では読了作品がそれなりにあるんですが……。
 秋は今年に出た作品をじっくり崩していきたいところですね。

2009年08月03日

果たしてアヤメの正体は……?『乙女革命アヤメの!3』

 気になってる方もいるようなので、優先的に記事を書きましょう。
 TS疑惑があったこの作品、今回ですべての謎が明らかになりました。多分最終巻です。

 志茂文彦『乙女革命アヤメの!3』(MF文庫J)

 あらすじの出だしからして
「ふと気がついたら美しい女の子になっていたのでびっくりした――。」
 だったり、記憶喪失の主人公に
「これはね、あなたへの罰!
 あなたはかつて、人の心をもてあそび、あなたを愛した人を利用し、裏切り、大勢の優しい人を傷つけたの。
 ここはあなたの煉獄ってわけ。罪を償い、赦されるまでは、そのままでいなくちゃダメよ。」

 というメッセージが残されていたりで、TS疑惑が生じるのも無理はない。

 しかし、この作品世界は一人たりとも男が登場しない甘甘百合空間。
 加えて「トイレに行く美少女なんていません!」と言わんばかりに綺麗なものしかない世界。
 主人公であるアヤメ自身が、美少女である自分に当惑していたとしても、元男という線は薄いな……と思っておりました。

 で、今まで伏せていましたけど、わたしの予想は「アヤメは未来の姫子である」というものでした。
 そう考えると色々筋が通るんですよ。「あなたへの罰」というメッセージの対象にもなり得るし、姫子より能力が弱いのは将来的に弱まったからと考えられるし、匂いが薄いのも同様だし、僅かに胸が大きいのも(爆)
 
 ――けど外れたっ!
 そっちだったかぁっ! ていうか、それは思いつかんっ!
 まあ掠ってもいないというわけでは……いやいや、詳細は伏せます。
 取り敢えず、「男ではなかった」とだけ名言しておきましょう。
 TSファンにとっては残念ですが、真の百合を望む人たちには朗報ですね(笑)

 
 ストーリーの方は、姫子の計画が本格的に動き出し、事態が急転します。
 ……ただまあ、リアリティとかは求めない方が良いですからね。
 あくまで、今まで読んできたとおりの、ふわふわした砂糖菓子世界の出来事だと思って読みましょう。

2009年07月15日

波動関数は発散する!『紫色のクオリア』

 とうとうアキバblogに捕捉されるようにっ。
 スピードではどうしても関東圏のサイトに敵わないわけですけど、半分意識的半分天然で検索順位を高めてきたかいがありましたかね。

 
 ここ一月ほどは集中して小説を読めない状態でしたけど(漫画はそれなりに読んでました)、週末から週初めにかけて、時間を縫うように電撃新刊を3冊読了。
 うち1冊が『紫色のクオリア』です。
 「ラノベのオールタイムベストは?」と訊かれると「『悪魔のミカタ』!」と答えるような人間ですんで、うえお久光作品の即買いは当たり前。しかし、それでもなお、うえお久光さんの底は読みきれないんだよなあ……。

 『紫色のクオリア』に登場する毬井ゆかりは、人間が“ロボット”に見えるという少女。
 そう聞くとつい「ああ、それでロボットが人間に見えて、冷蔵庫に入ってた○○の肉うめー、になるんですね」とか言いたくなるんですが<混ざってる混ざってる
 まあそれは置いといて。
 物語は、毬井ゆかりの親友となった少女、波濤学の視点で進行します。

 わたしは大学時代に哲学系の学科にいたもんですから、当時触れた学問と作中で登場する考察が丸被りでニヤニヤしながら読んでました。懐かしー。
 けれどそれ以上に、序盤で強く受けた印象は「あれ……? うえお久光なのに普通に読みやすいぞ?」というものでした。
 普段の文体の癖がなくって、普通に読み易くて、「少し不思議」だけど普通に女の子同士の友情が描かれてて、普通に面白くて。
 面白いんだけど、なんで突然、こんな作風に?と思ってしまったのです。

 が。

 やはり、うえお久光はうえお久光だった。
 癖の強さのみならず、その底知れぬ脳内宇宙という点において。
 またしても、ここまで圧倒されるとは……。

 2編目、「1/1,000,000,000のキス」。

 刮目せよ。ここから、物語は急転する。

 それ故にこそ、これ以上情報を出すのは勿体無い。
 けれども決して表紙やあらすじや序盤からは想像できない「1/1,000,000,000のキス」の欠片を目にしたからこそ、『紫色のクオリア』を読んでみたいと思う人間もいるのではないか。
 そう考えると、やはり、これだけは言っておきたい。

 
 小林泰三好きは読むべし!!
 
(記事タイトルは、つまりそういうことです)

 というわけで幾夜大黒堂さんあたりには是非読んでもらいたい。多分、今修羅場真っ最中だと思いますけど。
 (などと馴れ馴れしい文を書いて、〆ー)

2009年06月25日

可愛いんだってば見てってば!『クロとマルコ』

 きゅうわぁーーーーーーーーっっ!!と叫びそうになりました。
 店内だったんで全力で我慢しましたけど。

 掘骨砕三さんの『クロとマルコ』(ヤングチャンピオン烈コミックス)を確保。
 うはあー……裏表紙見ただけで幸せです。

 裏表紙見て「可愛い」と思った人外好きな貴方は速攻買って損なし!
 裏表紙見て「これはちょっと……」と思った貴方は試しに買ってみて! 新しい世界が見えるかも!


 表題作「クロとマルコ」は、太陽系のすべての惑星&矮惑星&小惑星帯で人間が生活しているウソ宇宙が舞台。
 あ、人間っていってもホモ・サピエンスじゃないですよー。というかホモ・サピエンスは登場すらしてないような。
 たいてい、ヒトとケモノが混ざったような外見だったり、ケモノそのものが直立歩行しているようなのだったり、トカゲだったり。
 クロやマルコといった小惑星帯の人たちはヒトと機械が融合したような人種で、仲間に噴機種(ロケッティ)とか航空種(プレナー)という人種もいたりします。
 こんな具合に異形揃いでして、掘骨さんの作品に馴染みがある人にとってはいつも通りな印象ですが、初めて読む人はちょっと驚くかもしれません。

 ――で、前置きはこの辺にしといてですね。
 2話目から登場するスーパーの売り子さんで、ガニメデ人のジェリンがすっごく可愛いのですよ! 超好み!
 ガニメデ人の外見は、ヒトとケモノが融合したような感じ。ああ、獣耳と尻尾がついてるだけなんてことはないですよ。顔以外は毛皮に覆われてますし、手の形もヒトとはまったく違うんですから。
 もう本当にすっっごく可愛い男の子でしてね。
 ああ、押し倒したい!

 ……とにかくそれが言いたかったのだー。
 もっとヒトから離れた外見のカロン人が好みという人も間違いなくいるはず。

 
 裏表紙で一番目立ってる仔たちが登場するのは「鼠と竜のゲーム」。
 収録作の中では一番異形度が高いかもしれません。
 掘骨さんの作品はしばしば性別の境も踏み越えてしまうのですが、同じように種族の境もあっさり飛び越えてしまいまして、これは後者に当たる作品。
 
 
 「白い竜」は大人に読ませたい食育のお話――なんて紹介すると堅苦しいですかね。
 いや、「Live On Flesh」の世界だったら速攻で発禁になりそうな漫画なものですから。。
 実際の内容は、決して説教臭くもなく、ごくごく普通の日常として、食べ物になる生き物との生活が描かれています。
 舞台は恐竜の再生に成功した日本。
 飼育と繁殖が出来るようになった恐竜は、観光資源であるとともに、新たな食糧にもなっています。
 畜産農家の主人公が、飼っているサウロロフスの頭を抱きしめながら「シロ…お前…おいしいよね…」と呟くシーンが印象的。
 この「シロ」は通学中の小学生たちを背に乗せて歩くこともあるんですが、子供たちは「シロはもうすぐハムになるのよ」なんて話を聞きながら育ちます。あー、いい環境だなあ。
 そういえば、わたしらは小学校の頃、肉屋の脇にシカの死体がどでんと置いてあるのを見ながら下校したもんです。まあ驚きはしましたけど嫌悪感はなかったよなあ、なんてことを思い出しました。
 
 「翼のざわめき」は唯一連載時に読んでましたね。
 キスで増えるカラスのお話。
 キス以外のことはしないのに、カラス娘がやたらとエロく感じてぞくぞくしたもんです。

 
 いつも以上にとりとめのない記事になってしまったかも。
 まあ「この本でレビューとか無理!」って思いましたもんね。
 けどねー、読んでてこんだけ幸せな気分になっちゃうとねー。何かしら感じたことを書き残さずにはいられないんですよ。
 あと、一般誌から出たのも折角の機会ですんで、この本が今まで掘骨作品を知らなかった人の入り口的なものになればいいなーと思います。
 いつかまた、18禁の舞台でも描ける日が来ればさらに嬉しいのですが。

2009年06月20日

『ミスミソウ』から受け取った熱量

 『ミスミソウ』のことをご存知ない方は、まず下のリンク先を読んでおくと良いでしょう。

 「ミスミソウ」に見る、閉じた社会と壊れていく心(たまごまごごはん)
 答えと価値観の崩壊したセカイしか、見えない。「ミスミソウ」2巻(同上)


 これらの記事で気持ち悪さと恐ろしさを感じつつも惹かれてしまい、それでも1巻帯に書かれた「私は家族を焼き殺された。」という言葉を前に一度は尻込みをしてしまった作品。
 いざ買ってみると、一気に引き込まれました。
 そして、この度無事発売された3巻の結末まで辿り着き――つくづく、良い出会いだったと思っています。

 陰湿な苛めと、凄絶な惨劇。そして復讐。醜く壊れていく人間たち。
 どう考えても精神力を大いに削られ、鬱になって引き摺ってしまいそうな内容。
 であるにもかかわらず、わたしがこの作品から感じ取ったのは、凄まじいエネルギーでした。

 インクに魂を練り込んで描いているとしか思えない。
 いや、本自体は印刷所で刷られているんだから、たとえ血液だって混ぜ込めないのですが――機械による量産を経てもまだ薄まらない、作者の情念がすべての絵から滲み出してくる。そう思えてならなかったのです。
 本当に魂を削らなければ、こんな圧倒的な作品は、こんな凄味に満ちた絵は描けないんじゃないか。
 この連載が終わったら押切蓮介さんは死んでしまうのではないか。そんな不安にすらかられました。

 押切さんの絵柄はかなり独特で、一般的に見て、整った絵とはみなされないかもしれません。
 しかし、『ミスミソウ』を読んだ印象としては――物凄い画力の持ち主だ、と言わずにはいられない。
 何度も、心を鷲掴みにされました。
 作品に注ぎ込まれた熱量が半端ではないことを、確信します。

 そして、この絶望的な物語を読んで湧き上がってきたのは、怒りや悲しみ、嫌悪感よりも。
 力です。元気が湧き上がってきたのです。
 押切さんが注ぎ込んだエネルギーが、そのまま自分に注入されたかのような気分でした。
 また、「これほどの絵を見て、これほどの作品を読んで、お前はまだ「筆が乗らない」などとだらけるのか?」という思いにかられ、いてもたってもいられなくなりました。

 そうやって筆をとったからといって、自分も凄い作品が書けるかというと、そう上手くはいかないわけですが――。
 でも、とにかく無性に、創作意欲をかき立てられたんです。

 
 こんな経験はなかなかありませんし、また、こういう感想もなかなか聞きませんが、この体験も合わせて、わたしは『ミスミソウ』を称えずにはいられません。
 最悪の読後感に襲われる方も多いと思いますが、興味を持っていただけたら幸いです。

2009年06月15日

少女に罵倒されたい人へ処方『ダンタリアンの書架』

 ずっと積読状態だった、三雲岳斗さんの『ダンタリアンの書架』(スニーカー文庫)を1〜3巻まで読んだのですが、これは素晴らしいですな!

 外見年齢12〜13歳の人形のような美少女が罵ってくれるのですよ。
 ああいやいや、カラー口絵の「このボケナス……!」を見てわかったような気になっちゃいけません。そんな口調はメインではないのです。

 「黒の読姫」ことダリアンの魅力は、敬語罵倒にこそあるのですよ!

「お腹も空いてきたのです。いつまでこうして待たせるつもりなのですか。さんざん道に迷った挙げ句に、こんなところで車を故障させるなんて。おまえは無能なのですか、ヒューイ」
(1巻10ページより)


「この風景のどこを眺めたら、そのようなものが手に入ると思うのですか。今の季節にこんな寒々しい場所に迷い込むような間抜けな運転手は、この世でもおまえだけなのです」
(同11ページより)


 ……たまんねー。
 ああ、敬語というほどきちんとした喋りではないかも。けど、基本的にこういった硬質な口調での罵倒がメインでしてね。少女に少女らしからぬ罵倒をされたい人が読むと、もれなく幸せな気分になれます。

 それでいて、甘い物、特に砂糖をたっぷりまぶした揚げパンに目がないもんだから、ギャップが可愛くてしかたがない。
 うはー、これは萌えますわー。

続きを読む

2009年05月13日

連戦連勝は強さを意味しない『迷宮街クロニクル』

 どんなにレベルアップしてもHPも防御力も上がらないし蘇生魔法も覚えない。勿論、どんな重傷でも即座に全回復するような便利アイテムは存在しない。
 そんなRPGがあったら、消費者にはそっぽを向かれてしまうでしょう。
 しかし、そんな「RPGのような世界でありながら、ゲームのような都合の良さを排除した世界」を描いた小説は――とんでもなく面白かった!

 林亮介『迷宮街クロニクル@ 生還まで何マイル?』(GA文庫)
    『迷宮街クロニクルA 散る花の遺すもの』


 話題に完全に乗り遅れ、今ごろ読んだことを悔やまずにはいられない……。
 やばいぐらいに面白かったです。
 
 現代日本の京都に、突如出現した地下迷宮。
 そこに蔓延る怪物の死体からは、人類では調合困難な化学物質が大量に抽出できて、手に入れば多額の利益につながる。
 かくして、命懸けで地下ダンジョンに挑む探索者が集う街、「迷宮街」が出来上がった。
 探索者や、探索者と関わる多様な人間たちのドラマを描いた群像劇。それがこの小説です。

 この作品の特色を表わした一文を挙げるなら、なんといってもこの言葉。
「ここでは、人が簡単に死ぬらしい」

 冒頭でも書いたように、どんなにダンジョン探索RPGっぽい舞台でも、どんなに怪物を倒そうとも、ゲームみたいなレベルの上昇なんかは発生しない世界です。
 上がるとしたら、せいぜいSTRやAGIぐらいでしょうか?
 LUKなんて上げようがないですし、何より致命的なのは、HPが上がらないこと。伝説級の防具だって存在しない。
 常に一撃死の危険が付きまといます。特殊攻撃だろうとなかろうと。

 だから、街中にその強さが知られてる人でも、信じられないほどあっけなく死んでしまうんですよね。
 読者の誰もが通った道だとは思いつつも、
「ここでは、人が簡単に死ぬらしい」
  この一文が出たときの衝撃は、凄まじいものがありました。
 以降、まったく気が抜けません。
 死にフラグが存在しないことが、こんなにキツいとは……。
 2巻の展開も容赦がなく、つくづくこの作品世界の非情さを思い知らされます。

 それでも、読み進めずにはいられないんですよねえ。
 最近しばしば目にするようになった「Web小説の商業作品化」なんですが、半端なく上手い。
 よくぞ、老若男女さまざまな何人もの人物の心情を、ああも見事に書き分けられるものです。各キャラクターの日記やメールの文章まで駆使していて、それがまた自然なことにも唸らされます。

 
 死亡率14%は伊達ではなく、「この作品世界で生活してみる」妄想にもちょっと躊躇してしまう世界。
 けれども……ああっ、無性にダンジョン探索型RPGがやりたくなるっ!!
 ……そういえば、手元には何故か、手付かずの「世界樹の迷宮U 諸王の聖杯」が(爆)
 いや違うよ! 最近買ったんじゃないよ!
 昨年末にね? こう、熱にうかされてて(比喩でなく)、プレイする時間のあてもなかったのに買っちゃったんですよねえ。
 ああなんて余計な買い物をしたんだと思ってたんですが、まさか今になってやりたくなるとは(^^;
 まったく思わぬ刺激をしてくれたもんです、この小説も。

2009年04月29日

要・殺され萌え属性?『唐傘の才媛 壱』

 人外・ヤンデレだらけの旅館ラブコ…いや、アクション漫画 - 唐傘の才媛(1)(真・業魔殿書庫)

 「殺され萌え」とか聞くと思わず飛びついてしまう人間がここにいますよ(爆)
 普通の人なら「踏まれたい」とか言うところで「殺されたい」とつぶやく人間ですよ。

 いやまあ、一番興奮するのは「操られてたり体を乗っ取られてたりする女の子に殺されるor殺意を向けられる」というシチュエーションなんですけどね!
 そうでなくとも、美しさと恐ろしさを併せ持った存在に殺されるというのは、すごく魅力を感じることであります。
 一番殺されたい相手は、「アトラク=ナクア」の初音姉様ですねえ……<今でも「姉様」がデフォなあたり、根深い
 当時は冒頭の男子生徒ズとか豚教師に嫉妬したもんです。本気で。
 
 さて、リンク先の記事にて発売を知った『唐傘の才媛』の1巻。
 これ読み切りの時だけ読んでたんですわ! 普段掲載誌をチェックしてないんで把握してなかったんですけど、連載化&単行本化まで至ってたんですねえ。うはー嬉しい。
 そして緋鍵龍彦さんが描いてたんですなっ!
 当時はまだ名前を知らなかったので、今ごろびっくりです。
 
 ほんの数部しか入荷しないだろうと思い、祈るような気持ちで書店に行ったら、なんと平積みタワー。
 ……流石はLOの売り上げが毎月増えている書店<マテ

 
 一応、ここでも軽く『唐傘の才媛』の説明をば。
 難儀な女の子から逃げてきた青年・揖宿六助が旅館に転がり込むも、そこは和風の魔女が女将を務め、人外のモノが棲む細縁亭。化物に群がられるやら女将にしばかれるやら置いてきたはずの女の子に忍び寄られるやらで散々な目に遭う六助ですが、ずるずると細縁亭に長期滞在することになってしまいます。
 
 でまあ、メインヒロインは素敵に目つきの悪い和風魔女な女将・水落紅っぽいんですが、一番インパクトがあるのはやはり、六助が逃げてきた原因である、大病院の娘の華房乙女。
 逃げるのも無理はなくて、彼女、ヤンデレさんなのです。
 それも「好きなもの、可愛いものをみると切り刻んで腸(なかみ)に触れずにはいられない」という性癖の持ち主なのです。
 さ、サシデレどころの騒ぎじゃねーっ!? いやそっち読んでませんがっ。
 乙女の思いに心を打たれた紅が「この上ならどんな事をしても死なないし元に戻せるし意識も失わない」という魔方陣に六助を縛り付けてしまうのですが、その時の乙女の喜びようときたら。
 なんて(彼女だけにとっての)相性最高な、(ある意味)夢のような空間。

「大丈夫です 優しくしますから…
 最初にお腹を切って 内臓を綺麗に取り分けて……
 脈打つ心臓に口付けして それから…


 うん、この場面が凄く強烈に印象に残ってたんですよねえ……。
 そりゃあ、レビュー読んですぐにピンと来るってもんです。

 流石にこんな目には遭いたくねえー(汗) せめて意識をオとしてあげようよ。
 いや、殺されるのは好きなんですけどね、痛いのには弱いのよ。痛みを味わいたいわけではないのよ。
 痛覚というか触覚全般が敏感なので、痛みへの耐性はかなり低いです。
 でも読む。
 小林泰三とか乙一とか甲田学人とか、好んで読んでます。
 現実の自分が痛みに弱いからといって、そういう創作物が苦手ということにはならんのです。
 そしてやっぱり、刃物を持って迫ってくる女の子も好きなままで。

 そんなこんなで、お近づきになるにはかなりハードルの高いヤンデレな乙女ですが、彼女の役目は六助を恐怖のどん底に突き落とすだけには止まりません。
 「億千万のメス」とか呼ばれそうな勢いで、人の身とは思えない活躍を見せてくれます。いいぞもっとやれ。
 この子を目当て読む価値は、充分にあるでしょう。
 しかし、ヒロインがヒロインをメス塗れにするのはいーのか、一般誌的に(笑)

 
 この漫画の魅力は他にもあるんですが、その辺は色んな人から聞いていただければということで。
 個人的に好みなのは、むしろ和服魔女な紅だったりしますし。

 あ、最後の「もう1人の拇印」には盛大に噴いたもんです。罠だろうと思ってはいましたが、こう来るとは……悪質すぎる(^^;
 次巻も楽しみです。
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