2012年03月27日

正義を名乗らないTS魔法少女『魔王な使い魔と魔法少女な』

 懺悔しなければなりません。
 名古屋で開催された『魔法少女まどか☆マギカ展』を堪能することを優先して、本書を読むのが遅れたことを。
 そして全国のTSファンに命じなければなりません。
 『魔王な使い魔と魔法少女な』を――全力で買い支えよ!!

 みみとミミ『魔王な使い魔と魔法少女な』(スーパーダッシュ文庫)

 アキバblogさんが発売直後に記事書いてくれたので、初動は悪くないと思いたいんですが……出遅れたっ!
 この作品はすぐに読んですぐに宣伝して少しでも初動売上に影響与えて編集部営業に数字を見せつけるべきだったっ……! この才能を埋もれさせてはいけない!
 
 一応最初に言っておきますと、イラスト効果もあってビジュアルのギャップはなかなかですが、本文中でのTSモノとしての描写は決して濃いものではありません。
 が、主人公がTSするラノベで自分が今まで読んできた中では――ぶっちぎりに面白い!

 主人公の男子高校生・朝霧瑞希は捨て猫のような少女を発見(ダンボールハウス製作中)。彼女が所持していた「契約書」に誤ってサインしてしまったところ、魔法が発動。少女は瑞希の「使い魔」となってしまう。
 少女――リノは魔界の王、「魔王」を自称。事情があってこちらの世界で単身過ごすことになったのだが、先立つものもないし瑞希がうっかり「使い魔契約」してしまうしで色々困っているので同居させてほしいと懇願してくる。
 そう悪い話でもないのだが返事を渋る瑞希。何故ならば、彼には他人に知られたくないとある事情が――


 (こっから先はネタバレ含み&新鮮な読書体験を損なう恐れがありますのでご注意ください)

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2012年02月22日

女勇者に憑依できたらナニする?『ツイてる勇者さま!』

 TSエロ小説ジャンルで活躍する狩野景さんの新作、ついに出る!

 狩野景『ツイてる勇者さま!』(あとみっく文庫)

 即位したての少年魔王・アーヴェンガルドは、少数の仲間とともに魔王城へ潜入してきた女勇者・クラリスによって打ち倒されてしまう。
 しかし死後気が付くと、アーヴェンガルドの魂はクラリスの肉体に憑依していた!
 どうやらクラリスの意識がない間だけ身体を使えるらしく、彼女に気付かれないのを良いことに魔王はパーティの人間関係を引っ掻き回し始め――

 読む前は「魔王の側にイニシアティブがあるのかな?」と思っていたのですが、どうやらほぼ対等だったようですね。
 魔王は勇者が起きている間のことを知らず、勇者は魔王が身体を使っている間のことを知りません。
 けど魂が他人の肉体に入ってるわけですから当然、魔王の方は事態を理解できると。
 だから! 色々やらかしちゃってくれるわけです!(^^)

 状況を把握した魔王が真っ先に考えたのが「勇者の身体で悪逆の限りを尽くすことで、勇者と人間共に復讐してやろう」だというのが素晴らしいですね。
 TSエロ作品に登場する、魔を統べる王ともなれば、憑依シチュでそれぐらい考えてもらわなければ。
 しかし残念なことに、完全な乗っ取りはできておらず、身体を使えるのは勇者が寝ている間だけ。
 ならばと魔王が考えたのは、ネオン王国の辺境に巣食う「喚身の魔女」ナスタロヴィカ(!)の力を借りて勇者の精神を追い出すこと。
 魔王の存在に気付いた魔導士の少女・エピカを脅してナスタロヴィカのもとへと誘導させつつ、巨乳な女剣士とレズったり初心な聖騎士を誘惑してからかったり……。

 「こんなエロゲがやりたかったんじゃー!」と叫びたくなるようなシチュエーションでして、序盤は大興奮。
 憑依TSならではのエロシーンも勿論嬉しいのですが、それ以上に好きなのがエピカを脅迫する時のこの台詞。
「分かっているだろうが、俺に背けば勇者のすました顔に跡が残るような傷を付けてやるからな。いくら勇者とはいえ女にとってはかなりのショックになろうだろうなあ?」
 こう言って自分(クラリス)の顔にナイフを突きつけるんですよ! Yes! ナイス憑依脅迫!

 ただ自分の趣味的に残念なのが、アーヴェンガルドが女体で快楽を貪ることにあまり積極的ではないことですねー。
 彼の嗜好はあくまでノーマルなので、どちらかというとパーティ内の人間関係をかき乱す方がメインになるのです。
 男をからかったりはしても、自分がヤられるのは嫌、と。

 とはいえ、これは男性としては至極普通な思考。
 女に憑依したその日から男に跨りたいって変態は残念ながら少数でしょうからね。

 まあ意図せざるものだったとはいえアーヴェンガルドも男を知ったことですし、無理なく2巻が出せる内容になっていますんで次こそは、
 このTSっ娘、陥落た……!
 と言えるようなシーンがあることを期待したいです。
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2011年05月01日

待ち受ける淫らな運命に期待!『換身の騎士アルベルト』第一話

 『ピルグリムメイデン』や『目覚めると従姉妹を護る美少女剣士になっていた』などのTSモノで活躍されている狩野景さん。現在発売中の『二次元ドリームマガジン vol.58』から、また素晴らしい連載を開始してくれました!

 タイトルは『換身の騎士アルベルト 淫靡な魔女と入れ替わった肉体』
 見ての通り、今回は入れ替わりモノです!

 第一話は「魔女討伐」。
 武勇で知られる名家に生まれ、白鷺騎士団団長からも将来を嘱望されている、若き高潔な騎士アルベルト・メリン。
 白鷺騎士団で百人長を務める彼は、辺境の町を荒らす邪悪な魔女を討伐せよとの命を受け、部下を率いて魔女の住む洞窟へと向かう。
 魔女に召喚された魔物との激しい戦闘をくぐり抜け、なんとか単身魔女の元へと辿り着き、彼女を拘束することに成功したアルベルトだが――。

 はい、期待通りの展開が待ち受けています。
 魔女・ナスタロヴィカの罠にかかり、彼女と性交してしまうアルベルト。
  男として初めての絶頂を味わった直後、アルベルトは魔女と肉体を入れ替えられてしまいます。
 自分の肉体を奪った「魔女」に激しく犯され、開発されきった女体の生み出す快楽に抗えず、蕩けていくアルベルト。
 コトが終わった後「魔女」に逃げられ、ナスタロヴィカの姿で取り残されたアルベルトを待ち受ける運命は……。


 生真面目が過ぎ、夢精以外の射精を初めて味わった直後に女の悦びを教え込まれるんですから、アルベルトの受けた衝撃たるや如何ほどのものでしょうね(^^;
 人生観変わるレベルの快楽じゃないでしょうか。
 潔癖な騎士を堕とさんと誘惑する妖艶な魔女とのセックス〜強制入れ替わりセックスの流れも、快楽に溺れる描写も素晴らしいですし、この後アルベルトを待ち受けるであろう展開にもゾクゾクきます。
 きっと、自分のことを魔女だと思い込んだかつての仲間たちに、たっぷり慰み者にされちゃうんだろうなあ……羨ましいなあ……。なにせ魔女による被害はひどいものでしたから、さぞかし恨みをぶつけられ、嫌というほど性欲の捌け口にされるのでしょう。
 緑木邑さんの描くナスタロヴィカの、蠱惑的な容姿と豊満な肉体もたまりませんし。自分もあんな女性と入れ替えられたいですよ。
 今から第二話が楽しみでなりません。


 ――これだけでも充分に「是非買うべし!」なレベルなんですが、さらに、個人的に見逃せない記述が!

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2011年02月04日

魅惑の肉体で周囲を魅了『目覚めると従妹を護る美少女剣士になっていた』

 発売から日が経つとどんどん書きづらくなっていけませんね。まあ、かなりの勢いで売れていたようなのでご容赦願おうということで。

 
 狩野景『目覚めると従妹を護る美少女剣士になっていた』(あとみっく文庫)

 タイトルにすべてが表れていますね! 『ピルグリムメイデン』の狩野景さん、新シリーズもTSモノです。
 『ピルグリムメイデン』と同じ世界観ですので、そちらも読んでいると「おっ」と思うキャラや情報が出てきたり。
 ちなみに、略称は「めると」で!

 あらすじは公式から。
「退魔師の分家筋に生まれた一条遼は、ある夜目覚めると身体が女になっていた!!
 さらに時を同じくして従妹の結女が、鬼への生け贄「鬼慰姫」として狙われ始める。
 遼は結女を守る「鬼斬姫」の役割を果たすため、身体が女体化したらしく!?
 鬼斬姫となって退魔の力を得た遼は、 果たして鬼たちの手から片思い中の従妹を守れるのか!?」

 早速、表紙に美少女――「鬼斬姫」となった遼の姿が描かれているのですが、表紙を捲ってすぐ目に入るカラー口絵1枚目が特に素晴らしくてですね! ブラウスを肌蹴て胸の谷間に太刀を挟んでるんですが扇情的すぎてまったくもう羨まけしからん! こんな身体が欲しいですってば……。

 さて本編感想ですが、ネタバレ度高めで話したいため格納いたしますね。

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2010年11月06日

いよいよ物語は核心へ!『クロノ×セクス×コンプレックスB』

 TSを含めてもTSを抜きにしても本っっ気で面白いから、まだ1冊も読んでない人は今からでも追っかけた方が良いですよ。

 壁井ユカコ『クロノセクス×コンプレックスB』(電撃文庫)

 2巻では元男子ならではの気安さで、女嫌いの男子生徒バーニーに急接近してしまった三村。そーなのよ女の嫌な部分を持たないTSっ娘は、男のハートを掴みやすいんですよね。当人が女子コミュニティにげんなりしていれば尚のこと、男子との距離は縮まりやすいというもの。
 そんなわけで壁井ユカコさんわかってるぅ!と快哉叫ばずにはいられなかったわけですが、3巻でもやってくれました!
 カラー口絵にも描かれてるんで、これはもう言っちゃっても良いでしょう。

 ミムラin三村×三村inミムラなシーン来たーーーーっ!!
 三村朔太郎になったミムラ・S・オールドマンは元女子にもかかわらず、三村朔太郎だったころの三村朔太郎よりも男前で、ミムラ・S・オールドマンとなった三村朔太郎を余裕の表情で押し倒しちゃうのです。
「この際だから、お互いに“初めて”を“自分自身”と経験してみるのも面白くない?」
 なんて言っちゃって!
 一方の三村inミムラは精神面でも圧倒されるわ女の子の華奢な身体では抵抗できないわで涙目で慌てふためくのですよ。
 なんて美味しそもとい可愛い。
 このシーン(&イラスト)だけでご飯3杯いけるというものですね!
 何度ツボを突いてくれるんだ壁井ユカコさん!
 入れ替わりなのに入れ替わり相手が登場しない、と嘆いていた方にも喜ばしい展開ですね。

 ……とまあ、TS嗜好を刺激するシーンでつい盛り上がってしまうのですが、2巻を読んだ方にはご存知の通り、三村には残酷な事実が告げられます。
 失意のままクロックバードで無為に時を過ごす三村。
 そんな彼のために時間魔法を使ったオリンピアが、再び事件を起こして……。
 
 オリンピアの動機は良いとして、この大騒動は必要なのか?と最初は思ってしまったのですが、この事件が一気に三村をすべての真相へと近づけることになるんですよね。切迫した状況で辿り着いた、身体の中が冷え切るような答え。読んでいて、彼の必死さに共感してしまう展開、上手いです。
 1巻から匂わされていた物語の核心は、当初の不安を更に上回る重苦しさを持って立ちはだかります。
 普通に考えて、三村の進む先には大惨劇しか見えない。
 三村の目にも、惨劇しか映っていない。

 だから、1巻を読んだ時から物語がどう着地するのか怖くて仕方なかったのですが……。
 
 ――ここに来て盛り上げてくれました!
 面白い。凄く面白い。この要素は考えていなかった。
 ここから先は完全に未知の世界。けれど旬のラノベの中で屈指の面白さであることは確信できる。何を見せてくれるのかどう魅せてくれるのか、実に楽しみです。
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2010年10月30日

ダークなSF入れ替わり!「盗まれた昨日」

 久々の更新ですが、これで復活、とは言い切れなかったりします。とりあえず、この作品だけは紹介しておきたかったので。

 
 単行本で読んでいた方はご存知だったのでしょうけど、最近文庫化された小林泰三『天体の回転について』(ハヤカワ文庫JA)に素晴らしい入れ替わりモノが収録されていましてね!
 タイトルは「盗まれた昨日」

 某国の実験によって起こされた現象により、すべての人間が記憶を長期間維持することができなくなった世界。
 なんとか復旧を成し遂げた人類は、人工長期記憶システムを利用することで日常生活を送れるようになっていた。
 人々は身体に差し込んだメモリに長期記憶を保存することが当たり前になっている。

 主人公の女子中学生は「大忘却」後に生まれ、メモリを使って生活することが当たり前である世代。
 ある晩、彼女が目覚めると、自分の身体が中年男性のものにになっていることに気付く。
 身体に差し込まれているのは、確かに自分のメモリ。何者かが彼女のメモリを中年男性の身体に移したのだ。
 それでは今、この中年男性のメモリは女子中学生の身体に差し込まれているのではないか?
 状況を調べていくうちに、自分が身体を使っている男性が犯罪常習者らしいということにも気付き、不安に襲われた少女は急いで家に戻る。そこにいたのは……。


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2010年03月27日

男を懸けた男の戦い『アンシーズ 3〜刀侠戦姫飛恋録〜』

 終わってしまった後から始まる戦いというのは燃えますね!

 宮沢周『アンシーズ 3〜刀侠戦姫飛恋録〜』(集英社スーパーダッシュ文庫)

 自らの「男」を武器へと変換、肉体を女子へと転換させて戦う「アンシー」たちの物語。完結の3巻です。
 自分を鍛えようと決意し、本来敵であるサークル「竜巻組」のギルの下で修行することにしたトモ。
 しかし、その修行の場は……え、メイド喫茶?!

 はい、竜巻組と行動を共にするトモは、修行の名の下にメイド喫茶他色々なバイトをさせられているのでした。
 女の子としてのバイト……だと?
 ぬおお、それ凄く楽しそうじゃないですか。くっそうアンシーにはそんな楽しみ方もあるのか。
 いや、本当は学外で無闇に抜刀してたらいけないんですけどね(^^;

 それから、トモにバイトさせてたのも一応意味はありますからね!
 ギルはお金にがめついですけど、頼りになるいい兄貴なんですよ。ドリルツインテな女の子モードしか出てきませんけど、兄貴は兄貴なのです。
 初登場時にはここまで魅力的なキャラになるとは思いませんでしたねえ。

 しかし初登場時に想像できなかった活躍といったらミツウさんですよ! ただのヤンデレじゃないんです。
 2巻でもアシストキャラとして見事な役割を果たしていましたが、今回は完全に「報われないヒロイン」ポジション。
 生徒会長との戦いの中で真実を知り、心が折れかけたトモを叱咤し、奮い立たせることができたのは、不利な立場で苦悩していたミツウさんだからこそだと思うんですよね。
 心身ともに痛みに曝されるなかで必死に言葉を投げかける姿にはぐっとくるものがありますよ……。

 徹底的に負けた後、普通に考えれば完全に手遅れ。
 そういった状況からの戦いってのは熱いですよね。
 折られても、折れない。
 絵的には美少女ばかりでも、間違いなく「男の戦い」な最終決戦でした。


 ちょっと真面目モード入りましたが、最後の最後にギャグパートへの感想行っちゃうよ!
 黒耀ハンマーオーケストラ大好きです。なんであんな息が合ってなきゃ出来ない芸当をやろうとするのに仲悪いの君たちは!(笑) あの会話シーンはまたどっかでお目にかかりたいもんです。
 こっそり出てくるスガさんとミヤワキには今回も笑わせていただきました。前から好きなモブキャラなんですけど、最後の最後に本気で噴いたよ!
 ところで、マシンガンの「カタナ」があるぐらいですから、弓矢型のカタナとかランタン型のカタナとかぶ厚い本のカタナとかも余裕ですよね(爆)


 『アンシーズ』はこれにて一旦終了。宮沢周さん、お疲れ様でした!
 また出来るだけ早いうちに、新たな作品が見られる日を楽しみにお待ちしています!
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2010年03月07日

早すぎた性倒錯展開?『ぼくと魔女式アポカリプス 3』

 全然更新できてなくて申し訳ないっ!
 最近体力的に余裕がなくて、SS執筆もまったく進んどらんのです。呟く程度ならできるんですが……。
 しかし、もっと忙しい人たちがもっと頑張ってるのも目に入るんで、弱音を吐いてばかりもいられませんな。
 ひとまず、感動が冷めないうちに感想記事をひとつ上げておこうと思います。

 水瀬葉月『ぼくと魔女式アポカリプス 3 Nightmare Crimson Form』(電撃文庫)

 スタートラインから事件の決着、その過程まで含めてまったく救いがないというこの物語。
 2巻はまた特に痛々しく、誰一人救われないという非常に読み手を選ぶ内容でした。TS的な旨みもなかったため、ここで取り上げるのも難しいものがありました。
 でも好きなんですよ!
 本っ当にひどい敵で、本っ当にひどい事件で、爽快な要素なんて欠片もないのに、間違いなく娯楽作品だと感じるんです。
 鬱グロで塗り固め、歪んだフリをしていても、まっとうな物語として作られていることがわかるから、ですかね。
 「普通は退屈で嫌いだ」と言い、自分たちを「致命的に間違った存在」と位置づけている主人公・宵本澪も、本性は気の毒になるくらい真人間で絶対に正義を振りかざさない、可愛さすら感じられる子ですしね。

 前置きが長くなりましたが、要するに――多少辛くても頑張って3巻に辿り着くんだ!
 救われなさは相変わらずですが、3巻ではTS的にびっくりな展開も待ち受けています。

 まず復習。
 代替魔術師である澪は、戦闘態勢を取る=顕化した時、翼を生やした少女の姿になります。胸は大きめ。
 これは「顕化した際、原初魔術師の姿を模した身体に一時的に変化してしまう」という理屈によるものです。

 では、もし代替魔術師が女性で、原初魔術師が男性だったらどうなるのか?

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2010年02月08日

喪失に喪失を重ねる物語『ぼくと魔女式アポカリプス』

 首やらお腹やらの不調が続いていて、全然創作に注力できません。げふん。
 新旧入り混じりの積本崩しは、それなりに順調なんですけどね。

 さて、4年前の発売なんでものすっごく今更なんですが、面白かったんだから仕方ない。

 水瀬葉月『ぼくと魔女式アポカリプス』(電撃文庫)

 いっそ微笑ましいぐらいに中二病全開の男子高校生・宵本澪(よいもと・れい)は、「面白い変わり者」だと認めたクラスメイトの少女・砧川冥子の行動を追っているうちに「代替魔術師」たちの戦いに巻き込まれる。
 滅びた魔術種たちが人間を依り代として“根源闇滓(ルート・アンシィ)”を奪い合い、種の復活を目指す争い。その中で《翼人》という種の代替魔術師として選ばれた澪は、翼を生やした少女の姿で戦いに身を投じることになってしまう。

 当時出回っていた感想や漂ってくる雰囲気から「TSは主体じゃないんだろうなー」と思っていて、確かにそうだったんですけど、予想していたよりはずっとTS要素が豊富な作品でした。
 裸になって胸の感触を確認するやら、翼を収納して街へ出て、女物の服を(下着込みで)買わされて着せられるやら、知り合いに会って「ミオ」という女の子を演じる羽目になるやら、そのまま女子陣にスパへ連れ込まれるやら。
 なんだよそういうことは早く言ってくれよもう。
 当時出回ってた情報じゃあ、わたしの背中を押すには不十分だったんだよ。「TS要素アリ」なだけで無闇に飛びついたりしないんだぜーな気分だったんだもの当時。
 ちなみに女体化の原理は、「顕化(アピアランス)した際、原初魔術師の姿を模した身体に一時的に変化してしまう」からというもの。つまり女になってる時というのは基本的に戦闘形態で、普段は男として生活しています。

 TS界隈以外から聞こえてくる感想はひたすら「鬱グロ鬱グロ」というもので、これも発売当時に読むのを躊躇した原因。
 いやわたしは鬱グロ耐性高い方なんですけど、どんなコンディションで読んでも平気というわけではないので、そりゃ後回しになると。
 実際に読んでみたらまったく平気どころかかなり楽しめたので、さっさと手を出しておけば良かったと大いに後悔……。

 とはいえ、重い展開の連続というのは確か。
 まず、澪やヒロインの冥子が務めることになった「代替魔術師」という立場からして辛い。選択肢があまりにも少なく、リスクや負担ばかりが大きい。
 ネタバレになるので詳しくは言いませんが、ゼロどころかマイナスからのスタートで、しかもゴールと呼べるものがあるのかさえ不明とは……。
 でも、この設定を持ってきたことには素直に感心します。読み物として面白いもの。
 「選択肢を提供する」と言ったレンテンシアの位置づけも巧い。最初のうちは動機の読めないキャラでしたけど、最後の告白を聞いて完全に納得。
 
 代替魔術師の戦いの果てに救いはなく、クライマックスの展開は心を抉ります。
 悲劇を予想してはいたものの、真相はさらに上をいく悲劇でした……。


 
 さて、真面目な(?)感想はここまでにして、どうしても言っておきたいことがひとつ。
 澪のクラスメイト、機波草太というキャラクターが美味しすぎる。
 腹黒ショタで、可愛く擬態しては次々に女の子を食い物にし、必要とあらば男にも腕ハグして甘えてくるって……なにそれ食っちゃうぞというか食われたい。
 120ページ台の澪と草太の距離感がやたらラブラブに見えて、「もうお前らさっさとヤっちゃえよ」と思ったのがどっかの誰かさんに毒されたせいかどうかは定かではない。
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2010年01月29日

真摯なまでの入れ替わり描写『ココロコネクト ヒトランダム』

 事前に公開されていたカラー口絵のおかげで、買う前からワクワクが止まりませんでしたよっ!
 集団入れ替わりってわかっててあのシーンの絵を見るともう……!
 まだ買うかどうか決めてないたわけは、さっさと公式サイト行ってこいっ!

 庵田定夏『ココロコネクト ヒトランダム』(ファミ通文庫)

 既存のどの部活にも収まらなかったはみ出し者の集まり、文化研究部。そこに所属する(させられた)、八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文の5人。
 趣味嗜好はバラバラながらも、なんでもありな文研部をフル活用していつもバカ騒ぎしていた彼らの身に、前触れもなく人格入れ替わり現象が降りかかる。
 同時に入れ替わる人数も、入れ替わっている時間も完全ランダム。
 どんなタイミングだろうがお構いなしに起こる人格入れ替わり。この現象が常態化する異常な日常を強いられることになった5人は――

 
 本気ですね、この作者。
 「人格入れ替わり」でも「男女入れ替わり」でも「集団入れ替わり」でも、どの切り口で見たとしても、入れ替わりにまつわる描写に本気で力入ってます。
 突然人格が入れ替わる現象に直面した少年少女たちが何を思い、どう行動するのか?ということを真剣に想像して書いていることが確信できます。
 やっつけ仕事はありません。

 堅っ苦しいこと言ってるのもなんですよね。具体的に、どんな場面が書かれてるかというと――

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2010年01月04日

TS戦士よ漢を目指せ!『アンシーズ2〜刀侠戦姫言想録〜』

 同志・宮沢周さんの大人数TS学園バトルラノベ、2冊目は3ヶ月間隔で出ました! よくやった!
 東京で読んでたものだから、記事書くのがすっかり遅くなってしまいましたが。
 
 宮沢周『アンシーズ2〜刀侠戦姫言想録〜』(集英社SD文庫)

 自らの男をカタナに変え、身体を女子へと転じさせて戦う「アンシー」たち。
 男を賭け、世界をも書き換える力を目指す彼(彼女?)らの目に映るものは――
 
 「男らしくあること」を目指して戦っていても、戦うためには女の子に変身しなくてはならないという設定が素晴らしすぎますよね(^^)

 ……ところで、あの、すいません、新キャラの呼び名が「机の角」と聞いて、エロいことしか想像できなかった変態がここにいます(爆)
 ご、ごめんよぉ。ちょうどそういうの書いてたんだよぉ。
 実際には「机の角に肘をぶつけて痺れる程度の威力」から来てる呼び名でしたからねっ!

 今巻からは展開をまったく知らないもので、期待半分不安半分でしたが、なんのなんの、ばっちり面白い。
 新キャラの生徒会長がかなり良い味出してます。あの台詞回しはツボに入りました。
 どうしても子安武人声で脳内再生されますが(笑)
 1巻ではヤンデレ方面でインパクトが強かった光羽さんも、そこにとどまらず、潤滑剤役として地味に重要な役回りをこなしてくれています。
 なんというかこう、光羽さんにしかできない、光羽さんだからこそできる役割を果たしてくれているよなあ、と。いやホント、良いキャラですよ。

 ヒカルさん昏倒の原因が明らかになったところでは、素で感心してしまいました。
 あんなところに伏線が隠れていたとは……!
 想像していなかったにもかかわらず、ヒントがしっかり記憶に残っているのがまた小憎らしいというか、巧い。

 そして、ラストには新たな伏線がっ!?
 う、うおぉーいっ! こいつァ気になってしょうがねえぞいっ!
 より頼もしくなったトモの姿も見たいですね。
 さあ、また3ヶ月後の3巻目指して邁進だっ! 目指せ年4冊ペース!
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2009年12月01日

これぞTSメイドライフ!『魔王様げ〜む!』

 まさか、まさかここまで素敵な内容だとはァーーーーっ!?!?
 この界隈の人間撃沈必至!

 渡島健康『魔王様げ〜む!』(メガミ文庫)

 貧乏貴族の三男・レイモンドは、借金で首が回らなくなった父親に命じられ、魔王を倒すために単身魔界へと赴く。
 しかし、あっさり負けてしまったうえ、魔法をかけられて美少女に変身させられ、メイドのレモンとして魔王に仕えるハメに。
 行動原理がすべて「女のため」で、今までも倒した相手を女に変えてきた魔王・ディンゴは、当然レモンにも頻繁に迫ってきて――

 開始数十ページで、既に諸手を挙げて降参モード。
 いや、まだTSに至ってなかったんですけどね。それでも、この時点でコメディとしてあまりにも優秀!
 もう面白くってしかたないんです。
 今後も、この方のコメディ作品なら、TS抜きでも買いたいですね。

 しかもレイモンドが女にされてからも、勢いはまったく衰えません。
 慣れないメイドの仕事でいっぱいいっぱいになっている間にも、隙を見ては肩を抱き、押し倒し、愛を囁いてくるディンゴ。
 魔王に気に入られたレモンに、嫉妬の雷(魔法)を落としてくる美少女メイド長。
 そして、思わぬ姿で現れる敵対勢力。
 退屈する間もなく起こるイベントに、好色魔王とのお約束な掛け合い。そのどれもが愉快でたまりませんし――ことごとくTSファンのツボを突いている!
 これよ、これこそTSメイドライフ。
 わかっている。この方は完璧にわかっている!
 ただ基本を押さえているだけではなく、「こんなシーンが見たい」という欲求に、さらに一味加えて答えてもくれる!
 まるでTSの理想が形になったかのようだ……!

 もう絶賛しかできません。
 メイド生活だけでもお腹いっぱいなのに、最後に出てくる敵とか最高すぎるでしょう……!
 参った。降参です。
 変身系TSコメディが好きなら、買わないなんてあり得ません。



 ああ、レモンと立場代わりたいなあ。
 魔王専属メイドになって、あんな風に迫られたいなあ。
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2009年11月30日

TS下僕少年誕生?!『ピルグリムメイデン 深紅の巡礼聖女』

 暫定的にラノベカテゴリに置いておきますけど、ジュブナイルポルノですんで注意ー。

 キルタイムコミュニケーションのブログには「TS下僕少年」の文字が。
 こういう言葉を自然に使うとか、さっすがキルタイム! TSファン希望の星!

 狩野景『ピルグリムメイデン 深紅の巡礼聖女』(あとみっく文庫)

 肝試しで廃病院に足を踏み入れた斉木冬馬は不死者の集団に襲われる。
 そこに駆けつけたのは、不死者を狩る教皇庁異端審問局の巡礼聖女・紅坂玲音。しかし戦闘の中、冬馬は玲音の駆るチェーンソーによって不死者ごと四肢を切断されてしまう。
 玲音の手によって一命を取り留めた冬馬だが、その身体は、あるきっかけで女体化し、玲音の命ずるままに動く人形へと改造されていた!

 改造による強制的な女体化&下僕化とか、素敵すぎるシチュエーションですね!
 それに、レーベルがレーベルなのでエロいっ! 実にエロい!


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2009年11月09日

TS!×SF!×ファンタジー!『クロノセクス×コンプレックス@』

 はい、帯に書かれたキャッチフレーズを変換して並べ替えただけの記事タイトルですね。
 しかし、押し出すべき部分は間違いなくそこだと思うのですよ! その三つの要素が実にバランス良く、それぞれかなりのクオリティで書き上げ編み上げられていますからね。いっそ帯の文句そのままでもいいかと思ったぐらいですし。正しい売り方されていますね。
 
 壁井ユカコ『クロノセクス×コンプレックス@』(電撃文庫)

 平凡な時計屋の息子・三村朔太郎は、高校の入学式へ向かう途中に、返却する時間と場所を指定された奇妙な修理品の時計を届けるため路地へと入る。そこで見知らぬ少女とぶつかり、謝ろうとするも目に入るのは駆けていく男子学生の後姿のみ。不思議に思いながらも、時間の狂った奇妙な路地を進んでいくと、辿り着いたのは見知らぬ学校の入学式。そこに至って、朔太郎は自分がその学校――「クロックバード魔法学校」に入学予定の少女“ミムラ・S・オールドマン”になっていることに気付く。路地の入り口でぶつかった時に体が入れ替わったのだ。
 元の世界に戻る手段もわからず、少女ミムラとして魔法学校に通うことになった朔太郎。そこは時間を操る魔法を学ぶ学校で――

 超・面白いです!!

 まず魔法学校に迷い込むまでの描写が素晴らしい。平凡な日常とファンタジーな異世界との境界線が緩み、誘い込まれていく時の不安感とワクワク感はまさに理想的! 小道具も良い仕事してますね。

 またTS方面の描写ですが、トイレ前の葛藤が書かれていることに感激した!
 いやこれは別に下卑た理由ではないのですよ。
 長期間女の身体で過ごさねばならないのなら、「着替え」「風呂」「トイレ」の三大ハードルは絶対避けられないはずなのです。特に排便は不可避であり、思春期の少年が何の感慨もなしに乗り切れるわけがない。
 だから、女の身体でトイレに行っているはずなのに、そのことに一切言及しないとなるとすっっっごく不自然。登場人物人間ですよね?と突っ込みたくなってしまいます。
 にもかかわらず、着替えや風呂に比べて飛ばされる率の高いこと……。1行。1行書くだけで良いのに。
 その点、この作品はよくわかってました。

 しかしこればっかりは着替えや入浴以上に三村にとって難易度が高かったのだ。好奇心というレベルを通り越して脅威ですらある。
 (1巻79ページより)
 とすら書かれていたので、男子心理への正確な理解に感激です。着替えや入浴シーンは確かにウリになるから、商品で優先的に使われるのはわかる。けどね、萌えれば良いってもんじゃないんだよ、萌えれば良いってもんじゃ。

 さてストーリーの方へ。
 男っぽい性格を武器に「王子様」キャラとして自分を売り出すことになってしまったり、女子寮を統べる生徒会みたいな組織の候補者に推挙されたり……なんてことがカバー折り返しあらすじやらカラー口絵やらに書かれているので、ああはいはい女子校でちやほやされるTSライフのパターンですねなんて思ったりもしたのですが――そんな甘いもんじゃなかったよ!
 いや、確かにギリギリなスキンシップがあったり、女の嫌な面を散々見せ付けられてショックを受けたりとかそういうことはあるんですけどね。
 ちやほやされて、ちょっとしたトラブルがあっても乗り越えて、順調に進んでいけばエンドに辿り着ける、なんて簡単な話ではないのです。
 ちょっとしたトラブルどころか、洒落にならない騒動が起こってしまいますので。

 ここで舞台の中央へと踊り出るのが、時間モノとしての要素です。
 「クロックバード魔法学校」は時間を操る魔法を学ぶ学校。
 この学校で勉強することで、ある物・ある範囲の時間を加速させたり、停止させたり、遡らせたりといった現象を引き起こす時間操作魔法が使えるようになります。
 学長も最初に「諸君は時間を巻き戻すことができればと思ったことはないかな?」なんて言いますし、朔太郎がある後悔を引き摺っていることを知っている読者としても、その魔法の習得がエンディングの鍵となるのでは?と期待したくなります。
 しかし、時間の修正とは歴史の修正。非常に繊細なものであり、下手に手を出せば手痛いしっぺ返しを食らいます。
 では、実際に時間操作魔法が引き起こした騒動とはどれほどのものだったのか――は、実際に読んでもらうとして。
 ……いや、既に説明しすぎた気もしますけど。
 ぎょっとする展開もありましたが、時間モノが好きな人間としてはたまらないものがありましたね。

 『夏への扉』の一節が引用されているところからも、そういった時間SFへのリスペクト作品であることはすぐにわかるのですが、『夏への扉』や『時をかける少女』が思った以上に重要な役割を与えられていてびっくりしましたよ!
 何しろ、この魔法学校では文学の授業で習うのです!
 人間の想像力が秘める可能性を学ぶためだそうで、その知識は実際に魔法をつかう際の補助としても用いられます。
 いやー、これは面白い。

 
 時間を操る魔法を学ぶ学校、というのは実にワクワクさせてくれる舞台です。
 しかし同時に、そこで巻き起こった騒動と、その最中で出会ったとある人物の存在は大きな不安を与えてもくれました。
 「彼」の正体はだいたい想像がつくのですが……だとすると、ハッピーエンドに辿り着くのはそう容易ではないはずです。正直、入学当初には想像もつかなかった展開で、怖く思いつつも胸が躍って仕方ありません。
 1巻の間でもかなり大きく物事が動くので、どの程度続くのか想像できませんが、既に取り掛かられているであろう続刊の内容が実に楽しみですね!


 そうそう、「洋画に出てきそうなファンタジー」と「海外古典時間SF」と言うと「それTSと組み合わせちゃって良いの?!」と思われるかもしれませんが――もっと大枠、「ファンタジー」「SF」という括りで考えるならば、これほどTSと親和性の高いジャンルもないんですよね。TSと相性の良い二大ジャンルこそファンタジーとSF。
 そして、それらに分類される作品の比率が、漫画に比べて圧倒的に高いからこそ、ライトノベルでは頻繁にTSモノが出版されるのでしょう。
posted by nekome at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年10月18日

このTSっ娘はヒロインだよね『理の守護神さま。 一.黒使の少女・龍方時雨』

 GA文庫はTS方面の強化に入ったのだろうか、なんて書くと作者様に失礼だと思いますが、まさかニャル子さん3巻と同時にこういう作品を持ってくるとは。
 GA文庫の新人さんです。

 十目一八『理の守護神さま。 一.黒使の少女・龍方時雨』(GA文庫)
 
 「TSキャラがいる」という情報しかなかったうえに、作品そのものの評判も出回ってなかったので購入を躊躇っていたのですが、立ち読みしてみたところ思いのほか重要キャラがTSしていると判明。購入に踏み切りました。

 極めて強い力を持つものの穢れに満ちてしまった宝剣・天理。かつての森羅家当主だった少年・樹理(きり)はその浄化のために、即身仏と化す覚悟で富士の皇大樹の下に篭った。
 百数十年後、天理の浄化が成ったとの報を受け、現地に赴いた分家当主の少女・龍方時雨。彼女が大樹の根元で出会った樹理は、驚くことに生存しており、しかも身体は少女のものへと変化していた。
 その美貌に、時雨はすっかり惚れてしまい――

 わかりやすく言ってしまうのならば、カラー口絵で裸で胸揉まれているのが樹理です。
 まさかTSキャラがカラーで3枚描かれるほどの厚遇を受けていたとは……。
 しかもヒロイン格。主役でこそないものの、ばっちり重要ポジションです。TSを根幹に据えた物語でないのなら、てっきり脇役だろうと思っていたので驚きました。このポジションのみにTSキャラを置くのは結構珍しいんじゃないかと。

 カラーイラストにも描かれているような、マッサージや説得という名目で時雨に全身を責められて喘ぐ樹理が見所。
 外見も性格も可愛いのに年寄り言葉、というのも美味しいですね。

 ただし、樹理が女になってしまった原因のひとつ(推定)からして「本来その性別であるべきだった」というものでして、要所以外の外見的変化はほとんどない設定なのでご注意を。
 本人は女になったことに大層ショックを受けてくれているので良いんですけど。
 立派な胸も随分嫌がってくれてますしな。

 
 
 戦闘の最中にも気の抜けた会話を繰り広げたり、意図的に説明不足な書き方をしたりと、作品そのものはかなり癖が強いので、少々人を選ぶと思います。
 んー……文章スタイルは要修行、かも。
posted by nekome at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年10月15日

偉大なる種族の偉大なる功績『這い寄れ! ニャル子さん3』

 得体の知れない化物に追われていた主人公の少年・八坂真尋を救ったのは、触手様のアホ毛を供えた銀髪の美少女。
「こんばんは。いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」
 というところから始まったクトゥルーネタとオタク(主にゲーム)ネタ満載のラブ(クラフト)コメディ。

 逢空万太『這い寄れ! ニャル子さん』(GA文庫)

 超気軽に読めるネタ小説として、結構お気に入りなんですよねこれ。
 やっぱラノベには肩の力抜いて読めるものも絶対必要ですよねー、ということで。
 それにしても。
 まさか、シリーズがノリにノっている3巻目にしてTSネタを持ってきてくれるとはーっ!!

 しかも、入れ替わりの原理に「偉大なる種族」の技術を使うとは!
 わかってる! わかってるよ逢空さん! ラブクラフトファン的な意味で!
 名前が出てきた時点で超納得でした。
 ああ、「時間からの影」読んどいて良かったあ……。

 しっかしニャル子さんと入れ替わりかあ……いいなあ……。
 主人公の真尋はニャル子に対してツン100%なんで、全然喜んだりはしないんですけどね。
 「見た目美少女でも、皮一枚下は邪神(作中設定的には宇宙人)で、自分の平穏な生活を乱す存在」ってことで、普段からわりと容赦なく邪険にしてますし。
 けど! わたし的には「見た目美少女でも本性は邪神」なんて、魅力以外の何物でもないですわ!
 むしろもっと人外らしいおぞましい姿を晒せと言いたい! その方が興奮するから!
 しかも無貌の神たるニャルラトホテプとなれば、自身の容姿も結構自由に変えられるはず(作中では、美少女姿と戦闘形態しか見せてませんが)……。
 くうう、ますます欲しいですよニャル子さんの身体。

 じゃあニャル子と入れ替わったことに何の喜びも見出せない真尋少年の視点で、美味しい展開がないかというと、さにはあらず。
 ちゃんとお約束などきどきイベント、お風呂シーンがありますよ!
 普段邪険にしてるとはいえ、ニャル子の美貌と肢体にどぎまぎすることもありますから、真尋とて平常心でこなせるイベントではありません。まあ実際には極力身体を見たり触れたりしないように注意してくれやがるのですが――
 そこでクー子の出番ですよ!
 あ、クー子というのはニャル子にベタ惚れしているクトゥグアです。
 真尋inニャル子がまともに抵抗できないのをいいことに、風呂場に突入してガンガン攻勢に出てくれます。

「じゃあ何を血迷ってんだよ! 今は僕だぞ! 真尋だぞ!」
「……少年は思い違いをしている」
「思い違い!?」
「……ニャル子を身体だけで好きになったわけじゃない。でも」
「でも……?」
「……ニャル子の身体だけでも好き好き大好き超愛してる。だからいただきます」
「そういうオチかよ!?」

(118ページより)

 グッジョブ。クー子超グッジョブ。
 わたしだったらもう喜んで既成事実作りに協力しちゃうところですね。むふうー。
 ……ここ読んでる時はちょっと興奮しすぎた。

 性的な要素を除いても、入れ替わってのドタバタはなかなか笑えるところが多く、このシリーズで一番楽しませていただきました。
 相変わらずネタ塗れですし。魔方陣グルグルのEDネタまで出てきたのは噴きました。
 けど、あの敵はわりと笑えないよなあ……。
 言ってることが誇張抜きで元ネタの連中とまったく同じってのが、さらに笑えない。本来的な意味でのギャグですな……。


 
 ところで、「アトラク=ナクア星のアト子ちゃん」が「セーラー服の似合う黒髪ロングの和風美女」って……
 それどこの初音姉様。
posted by nekome at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年10月05日

短編ながらも美味しいNW TS小説「八番目の不思議」

 「八番目の不思議」は、ナイトウィザード The 2nd Edition アンソロジーノベル『大魔王は、世界滅亡の夢を見るか?』に収録された、はせがわみやびさんによる短編。
 本家ナイトウィザードファンにも賞賛された漫画『ナイトウィザード ヴァリアブルウィッチ』の小説版ですね。挿絵は勿論、猫猫猫さん。
 
 舞台は漫画版の事件が解決した後の学園。
 図書室に幽霊が現れ、七不思議ならぬ八不思議になってしまったという噂を聞き、幼馴染の珠美が調査に乗り出す前に解決しようとする竜之介。
 しかし、その幽霊は女の子の前にしか姿を現さないという話で――

 小説という別媒体の、それも短編ということで、どの程度のものかと思いましたが、予想以上に楽しませていただきました。

 おさらいになりますが、主人公の藤原竜之介は、戦闘に用いる能力の関係で、心臓の鼓動が高まると少女に変身してしまいます。
 その結果、変身しそうになって慌ててトイレの個室に駆け込むも、男子制服を着た女の子のままでは外に出られずに困り果てたり。さり気に頻繁に着ている女子制服で廊下を歩きながら、ついつい下半身の違いを意識してしまったり。幽霊の少年に迫られて慌てる羽目になったり。
 TS絡みの描写もしっかりしてて、なかなかに見所もたくさんありました。これは買って正解でしたねっ(^^)

 さて、残りの収録作も読まねば。

※10/7追記
 読了しました。ナイトウィザード小説として、どれも良い出来でした。
 何よりベル様が凄くベル様してて大満足ですよ! オォルハイィィィィル! ベール=ゼファー!
 っていうか、きくたけさん。「引かない。媚びない。顧みない」って、ベル様が世界の守護者代行だと公認しているようなものでは(笑)

 以下、思わぬTS要素があったのですがネタバレにつき収納。

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posted by nekome at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年09月25日

TS学園バトルラノベの決定版!『アンシーズ〜刀侠戦姫血風録〜』

 今年のTS名台詞は「てめぇの男を抜きやがれ!」で決まり!
 
 色々てんこもりで、実に美味しい作品ですよっ。
 
 宮沢周『アンシーズ〜刀侠戦姫血風録〜』(集英社SD文庫)

 男の子が体を女の子に変えられて戦いの中に放り込まれる。
 最近では珍しくなくなったこのシチュエーションですが、わざわざ男を女に変えて戦わせる理由はさまざまです。
 母親が魔法少女で、その跡を継がされたり。
 女しか選ばれないはずの役目に、何故か選ばれてしまったり。
 自分の体が死んでしまったので、女の子の体を借りることになったり。
 まあ、「理由になってないよ!」とツッコミたくなるような理不尽なケースも珍しくないんですが、その理不尽さこそが魅力になることもあります。
 とは言っても、納得のいく理由、逃れようのない性別変化の方が、より多くの人間を楽しませてくれる気がしますね。
 
 さて、それでは『アンシーズ』におけるTSの原因とは――
「自らの“男”をカタナと呼ばれる武器に変換して戦う。「男を抜いた」結果、身体は女子へと転じてしまう」
 
 うん! それはもう、女の子になるしかないな!
 
 こんな愉快な理由もなかなか無いですわ。
 少年漫画にありがちな「専用武器の発現」が必然的に性別変化を引き起こしてしまうとは……ナイス設定。
 しかもリスクが半端なく高い。
 なにせ戦闘時に振り回してるモノは、その、ほら、まさにアレそのものとすら考えられるじゃないですか。
 それを折られるようなことがあったら……ガクガクブルブル。
 (↑この震えは、あくまで一般男性の心情を代弁しただけのものです。と逸般的な注意書きを挿入してみます)
 光羽がああなってしまったのも当然と言えますわなあ。実にハイリスクです。

 そしてもう一つ愉快なことといえば、そうやって美少女に変身して戦う少年ばかりが登場するため――
 絵的には美少女だらけだというのに、生まれついての女性がほとんど登場していないという事態に!
 な、なんという思い切りの良さ。
 ……ここはむしろ、そんな作品を受け入れてくれた編集部を褒めるべきかもしれない(笑)
 
 しかし、なんということでしょう。
 これだけTSっ娘がよりどりみどりだというのに――わたしの最萌えキャラは、男性時のリキオウマル先輩なんだよおォーーーーうっ!!
 ああもう可愛いなあくそうっ!
 そして心情的にやたら共感できる……(^^;


 それにしても、これだけ発売が待ち遠しく、嬉しく、かつ落ち着かない気持ちになる本は初めてですよ。
 友人で、かつTS好きの同士でもある人間がプロ作家デビューなわけですから。
 しかも、出版されるのは書き始めた時から付き合ってきた作品。まさか自分が読んできたものが商業出版物になるとは……。
 文庫を手に取って読んでいて、「ああ、あの台詞がそのまま載ってるんだ」とか「このエピソードを追加したんだな」とか、感慨深いというかなんというか、不思議な気分になったもんです。

 あらためて、佳作受賞、そしてデビューおめでとうございます!
 色々大変になる(なってる?)と思いますけど、今後も応援していきますよ、宮沢さん!
posted by nekome at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年07月29日

タシアナさんメインヒロインの巻『ぷりんせす・そーど!B 戦うサツキと恋の道』

 ゲームの盤面どころかルールまで変える勢いの大激変で読者の度肝を抜いた2巻。
 それを受けてのシリーズ3作目は、不安と期待で待つのが長く感じられたものです。

 神野オキナ『ぷりんせす・そーど!B 戦うサツキと恋の道』(GA文庫)

 序盤の見せ場、というか今巻最大の見所は、すっかりメインヒロインと化したタシアナです!
 今まで「汚い騎士」を演じなければならなかった立場上、派手な服を着てはすっぱな口調で通していたタシアナですが、その中身は品もあればぬいぐるみも大好きな乙女。
 しかし、今更そんな素の自分を見せても大丈夫なのか、受け入れてもらえるのかと思い悩むタシアナが――無茶苦茶可愛いのです!
 もう完全にニファーリア食っちゃってますよ!
 サツキとの初デートを皆に覗かれていたと知って、喚く姿もまた可愛らしいったら……。

 デート&出歯亀シーンで一息ついた後は、物語の本筋に戻るかのように戦闘の連続となります。
 正式な国交決闘もあり。
 ということはつまり、性転換魔法の出番です!
 まあ表紙見た時点でわかりますよね。胸元の大きく開いた「クノイチ」衣装を大きく押し上げる魅惑的な膨らみがはっきり描かれ、「女体化しますよ!」と思い切りアプローチしてくれています。
 実に購買意欲を刺激されます。
 ていうか、なんて羨ましいボディラインだ……。

 女体化それ自体は「戦闘のため」と割り切ってあるので、作中での存在感はそれほど強いわけではありません。
 しかし、表紙に加えて、挿絵にも2枚。しかも二つの衣装で女サツキが描かれているのは嬉しいところ。
 ……本文準拠なら、252ページの挿絵はもっとこう、あられもない姿になっているはずなんですけどね<全年齢対象だってば

 
 正道に戻ったように見えて、新たな立ち位置のキャラクターが登場するなど、目の離せない状況が続いています。
 引き続き楽しみなシリーズですね。
posted by nekome at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS

2009年07月27日

魔王は福山ヴォイス推奨『Xの魔王』

 横になっていればわりと平気なため、読書だけは進んだのですよ。

 伊都工平『Xの魔王』(MF文庫J)

 魔王軍と人間の軍勢が激突する中、魔王の城に単身乗り込み、魔王ミトラスと対峙する勇者アティス。秘策を抱えている様子の勇者だったが、戦いの中城は崩壊。魔王ともども生死不明となってしまう。
 1年後。勇者アティスが再び現れたという噂を聞き、婚約者であるカルセ王女は彼の元に駆けつける。しかし、アティスの瞳には魔王の証である銀の十字が輝いていた――


 独特な魔法・魔術の設定と捻くれた展開で魅せる伊都工平の最新作。
 今回も先の展開をなかなか読み切れませんでした。

 しかし、そんなことよりも、いっちばん口にせずにはいられない感想は――

 魔王が福山潤すぎる(爆)

 アティスの姿で(よりによってレジスタンスの拠点で)再登場して以降、その声でしか脳内再生できませんでした。
 偉そうな喋り方もそうなんですけど、色々とダメキャラな部分も含めて、イメージがぴったりすぎです。
 多分、身振り手振りも大仰なんだろうなあ……。

 
 以下ネタバレ。
 既に情報も上がってますが、終盤のことも書いてしまったので、格納で。

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posted by nekome at 20:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS
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