2010年01月29日

真摯なまでの入れ替わり描写『ココロコネクト ヒトランダム』

 事前に公開されていたカラー口絵のおかげで、買う前からワクワクが止まりませんでしたよっ!
 集団入れ替わりってわかっててあのシーンの絵を見るともう……!
 まだ買うかどうか決めてないたわけは、さっさと公式サイト行ってこいっ!

 庵田定夏『ココロコネクト ヒトランダム』(ファミ通文庫)

 既存のどの部活にも収まらなかったはみ出し者の集まり、文化研究部。そこに所属する(させられた)、八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文の5人。
 趣味嗜好はバラバラながらも、なんでもありな文研部をフル活用していつもバカ騒ぎしていた彼らの身に、前触れもなく人格入れ替わり現象が降りかかる。
 同時に入れ替わる人数も、入れ替わっている時間も完全ランダム。
 どんなタイミングだろうがお構いなしに起こる人格入れ替わり。この現象が常態化する異常な日常を強いられることになった5人は――

 
 本気ですね、この作者。
 「人格入れ替わり」でも「男女入れ替わり」でも「集団入れ替わり」でも、どの切り口で見たとしても、入れ替わりにまつわる描写に本気で力入ってます。
 突然人格が入れ替わる現象に直面した少年少女たちが何を思い、どう行動するのか?ということを真剣に想像して書いていることが確信できます。
 やっつけ仕事はありません。

 堅っ苦しいこと言ってるのもなんですよね。具体的に、どんな場面が書かれてるかというと――


 まず、太一と永瀬の初入れ替わり。入れ替わりの瞬間から、女子になっていることに気付いた太一が胸を揉むまで、丸4ページ。

 どうよじっくり書かれてるでしょう!

 他にもニヤニヤしてしまうシーンはいっぱいあります。

 入れ替わりの事実を確かめるため、永瀬になった太一に「最近太一が青木から借りたアダルトビデオのタイトルは!?」と稲葉が質問。
 答え合わせのためタイトルを耳打ちしてもらい、「大正解であります稲葉隊長! 後、エロい単語が【伊織ちゃん】の声で聞けてちょっとおいしかったです!」と喜ぶ青木とか。
 そうだ! 青少年を主役に据えて性別変化を描くなら、適度なエロス要素は必須だ!
 あくまで適度な、なわけですけど、その辺のさじ加減も上手い。

 ランダム入れ替わり開始1週間後の反省会での遣り取り。
「まず、初歩中の初歩! 誰か異性と入れ替わっている時、男子トイレと女子トイレ間違えたことのある奴っ!」
「はい」「はい」「はい」「はい」
「なぜ間違う!? 男と女で入れ替わったら注意すべきことナンバーワンだろ! べったべた過ぎてネタにもならんぞっ!」

 稲葉以外全員間違ってんのかよ!というツッコミと共に、「全年齢向け作品で性別変化描くならトイレへの言及必須」主義者として賞賛せずにはいられないシーン。
 直接そのシーンを書かずして、ちゃんと面白くかつこの作品・キャラクターらしい会話が繰り広げられていくところもナイス。

 そして欠かせないのが、二つ目のカラー口絵で描かれてるシーンですね!
 詳細を教えちゃうのも勿体無いので、絵から読み取れる情報だけ書きましょう。
 男子が体を使っているとおぼしき女子二人が、ノリノリな様子でポーズと取りながら、携帯を構えています。
 そ・れ・だ!!
 可愛い女の子の体使えたら、そりゃあこういうことやってみたいだろう? 欲があんだよ、男の子にはァ!!

 
 暢気なシーンばかり取り上げましたが、裏表紙あらすじでも仄めかされている通り、入れ替わりがもたらす危機もあります。
 ここは作品の重要な部分に関わってくるため、あまり詳しく語るわけにもいかないのですが……喩えを用いるとして、親から虐待されてたりしたら、それが仲間にバレちゃうんですよね。
 秘密を抱えているのには限界がある。それがたとえ、友人にこそ話したくないことであっても。
 ……この辺もなかなか絶妙でしてね。上手い等身大具合というか。
 わたしの趣味嗜好は別として、中高生に読ませたい作品だなあと思いました。
 
 あ、そうだ。ちょっと後半の展開の一部を匂わせる台詞として、ちょうど良さそうなのがありました。

「そうつまり、【身体】というものは、我々にとって絶対のよりどころとなるものなのです。しかし、もし、その【身体】が――例えば人格入れ替わりで――曖昧なものになってしまったら? 我々は我々として存在し続けることができるのでしょうか? ……なんちって」
 
 入れ替わりのことを知らない人間は、【身体】でその人物を判別する。多少おかしなところがあっても、それはその【身体】の持ち主がおかしくなったと考える。【中身】が別人だなんて考えない。
 おおっと、最近の「少年式少女」に通ずるものもありますね。
 ましてや頻発する集団入れ替わりともなれば、【中身】の揺らぎも大きいものとなるでしょう。

 最初から最後まで面白かったです。
 いや本当に、「入れ替わり現象」に真摯に向き合い、かつ最大限に利用した良作でした。
 必読。
posted by nekome at 17:42| Comment(9) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS
この記事へのコメント
おおー。
おもしろそうですね。
こちらでの発売日の月曜日が、待ち遠しいですよ。
Posted by みのむー at 2010年01月29日 20:45
>みのむーさん
期待しておいて良いと思いますよ。
これはがっつり語りたくなる人も多いでしょう。
Posted by nekome at 2010年01月30日 19:51
面白くて一気に読んじゃいました。

物語後半の、
各々のキャラが心の内を吐き出していく展開には、
ぐっときましたね。

中高生に読ませたい作品というのはよくわかります。
ぜひ読んで欲しいですね。
Posted by ひよとーふ at 2010年01月31日 23:18
おぉ〜なんか良さそうな名前の本ですね〜w
興味そそりまくりです。TS系の書籍等情報全くわからないので、明日買ってきますw
Posted by はっぴなた at 2010年02月01日 00:05
>ひよとーふさん
擦れた大人だとピンと来ない悩みもあるかもしれませんけど、当人たちには結構深刻だったりするんですよね。
「入れ替わり」を用いてそれらを浮かび上がらせる手法に拍手。

>はっぴなたさん
これは自信を持ってお薦めできますね!
うちで力入れて感想書いてる作品は、かなりTSモノとしてのクオリティ高いかと(^^)
Posted by nekome at 2010年02月03日 18:01
お身体の調子は如何ですか?
翌日に早速買いました。
寝る前に、読んで見たんですが
気付いたら3時半w
一気読みしてしまいましたw
Mな私は、稲葉んお気に入りですw

良い作品ご紹介ありがとうございました。

Posted by はっぴなた at 2010年02月05日 18:33
>はっぴなたさん
インフルからの回復は早かったんですけど、首はなかなか良くならんですねえ……。

楽しんでいただけて良かったです。
稲葉ん良いですよね!
稲葉んと入れ替わったら、絶対思い切り可愛いポーズで写真撮ってやるんだ……。

稲葉の抱えていた悩みは、入れ替わりという状況においてはかなり重要なものだったりするんですよね。商業作品ではまず描かれないところなんで、よくぞ言及してくれたと言いたいです。
Posted by nekome at 2010年02月06日 20:17
中2なのですが、友達が持っていておもしろいというので借りてみることにしました。最初の30ページぐらいは理解するのに必死でしたが、その先はあっという間に終わってしまい、2時間ほどで読み終わりました。これほど面白い本は初めてでした。自作も見たいと思います。
Posted by 流星群 at 2010年11月26日 15:55
>流星群さん
すいません、長い間コメントをチェックしてませんでした。

ココロコネクト読まれましたか!
入れ替わりでここまで丁寧に、その設定を活かして書かれている作品はなかなかありませんからね。
またこういう作品を出してほしいものです。
Posted by nekome at 2010年12月22日 21:36
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