2009年07月14日

広義のTSに含まれる異性装とは

  昨日の記事で
「「異性装もTSに含めて良い」と考えている人は“gender”という語を用いるべき場面で“sex”という語を用いているから混乱しているだけ」
 と書きましたが、それ以外にも思い当たる原因がありましたので、追記させていただきます。

 ※追記:より厳密な翻訳に切り替えさせていただきます。

 “transsexual”の辞書的意味の中には
「a person, especially a man, who feels that they should have been the opposite sex, and therefore behaves and dresses like a member of that sex」
 というものがあります。
 翻訳するならば
「人物、特に男性において、現在の肉体的性別が本来の性別ではないと認識しており、その為に、自身が感じる本来の肉体的性別として扱われる目的で、自身が感じる肉体的性別の服装をし、またその振る舞いを行う事」
 ですね。
 こういう人間の状態を一言で表わすのならば「女装」となります。
 それ故に、「肉体変化前の女装状態を描いているTS創作物」が存在しますし、そのことを以って「女装もTSである」という解釈をする人がいるのかもしれません。

 しかし、だからと言って「すべての異性装がTSと言える」というのは勘違いです。
 もうちょっと良く考えてください。

 「現在の肉体的性別が本来の性別ではないと認識して」いる人間というのは、身の回りの環境がそれを許せば、ホルモン注射、外科的手術を経て性転換を成し遂げます。
 まあ絶対到達できるとは限りませんが、成し遂げたいという強い意志があります。
 手術等による性転換はTSにあたります。
 そして、その前段階、徐々に変化していく最中を切り取って「まだTSとは呼べない」と断言するのは難しい。
 区切るのが難しく、かつ将来的なTSが約束されているため、外科的手術あるいはホルモン注射の前段階である異性装も、「変化過程」としてTSに含めることができるのです。

 重要なのは、「将来的にTSする」ということ。あるいは「TSする強い意志がある」ということです。
 この前提条件が満たされるのであれば、現時点で肉体的変化をともなわない異性装状態であっても、TSとして扱えるのです。

 だから、“transsexual”の辞書的意味の中に
「人物、特に男性において、現在の肉体的性別が本来の性別ではないと認識しており、その為に、自身が感じる本来の肉体的性別として扱われる目的で、自身が感じる肉体的性別の服装をし、またその振る舞いを行う事」
 が入っているのです。

 つまり、そのような到達点、性転換願望をともなわないカジュアルな異性装。プレイとしての異性装は、TSには含まれないということになります。
 わたしが「異性装はTSとは別ジャンル」と言っているのはそういう意味です。

 
 おそらく、「TSとしての条件を満たす異性装」を扱った創作物は、かなり少ないでしょうね。
 どうしても重い展開になりやすいので、商業作品向けではないのです。
 (まったくないわけではありませんが……)
 少なくとも、エロコメ作品の中には、ほとんど存在しないでしょう。
posted by nekome at 19:25| Comment(12) | TrackBack(0) | TS雑談
この記事へのコメント
創作上では、性転換は手術もホルモン投与も必要ない。性転換のルポルタージュ的な表現をするのならともかく、そうではない創作上では、転換は容易であり、非現実的である。であるから登場人物に『将来的にTSする』といった強い意志は必ずしも必要ではない。

また創作上では『性転換願望をともなわないカジュアルな異性装』が、登場人物にとって、後発的なTSの始点ともなりうる。

余談だが、女装ハヤテは、設定上男性が女装していることになっているが、ハヤテとは別キャラ扱い、骨格は女性化されていて、中の人は女性。彼の女装姿はTSに入りますか?
Posted by kkk at 2009年07月14日 23:21
ああ、それはオレの訳w
辞書に載っているのはあくまで、”a person, especially a man, who feels that they should have been the opposite sex, and therefore behaves and dresses like a member of that sex”ですんで、オレの訳を使われるのは問題ないですけれども原語表記も併せて使うべきだと思うのです。

ここでは定義の話をしているのですから。

オレの翻訳は格段におかしいとは思わないですけれども原語とは必ず微妙な差異があるはずですので、オレの訳を出発点とした議論はよろしくないかと。

で、議論はまぁ、お互い落ち着いてから思い出したらしますかー。

nekomeさんは、『「将来的にTSする」ということ。あるいは「TSする強い意志がある」ということ』が必須条件と解釈されていますが、”they should have been the opposite sex”にそこまでの強い意味があったかなー。ネイティブの人はどこかにいませんかね。
Posted by あむぁい at 2009年07月15日 00:39
質問です。
この場合の「TS」可逆ですか?不可逆ですか?
ここは重要だと思います。
ところで、憑依って、『女性になりたいから』じゃなくて『女性の身体を体験してみたいから』じゃないですかね。
だとすると「性転換願望」とはいえないのじゃないでしょうか?
女装する人は、女性になりたい人もいますが、女性になってみたい、体験してみたい。でも基本は男性のままでいたい。という人がほとんどだと聞きました。
だから、不可逆的なTSをしたいかというと、したくないというのがほとんどかな?
Posted by よしおか at 2009年07月15日 19:05
おお、ブラッシュアップされてますね。
 <重要なのは、「将来的にTSする」ということ。あるいは「TSする強い意志がある」ということです。
 この前提条件が満たされるのであれば、現時点で肉体的変化をともなわない異性装状態であっても、TSとして扱えるのです。>

この部分なのですが、TSを定義する文なのに中にTSが使われているのでループしちゃっているように思います。最初の2個のTSを『肉体的変化』とか『性転換』とかTS以外の言葉に置き換えた方が、nekomeさんの意見がクリアーになるのではないかと思うのですが如何でしょうか?
Posted by あむぁい at 2009年07月15日 20:14
>あむぁいさん
ああ、ちょうど件のケースを説明するのに都合の良さそうな記事が最近あったなあと思って、利用させていただきました。
しかし、ご指摘の通りちょっと不完全だったようで。
より厳密な訳に替えさせていただきました。

あと、あむぁいさん個人と揉めていると勘違いする人が現れても困りますしね。

まあわたしの記事は議論自体が目的というよりも、出版社の方針に押し流されてTSというジャンルが消滅するのを防ぐのが目的ですので、何か振られても確実にお応えできるとは限りませんが。

定義文は……「結果がTSなので過程もTS」ということを言いたかったので、あれが良いかとも思ったのですが。
ちょっと検討してみますね。

>よしおかさん
あの、あくまで「TSの定義のひとつ」について語っているわけですので、いきなり別の話を持ち出されても困りますよ。
「この英文のみがTSの定義である」とは言っていないじゃないですか。
「肉体的性別が変化していればTS」ということは既にお話しました。
その上で、「じゃあ肉体的性別が変化していなくてもTSに含まれるケースはあるのか?」という話を今回しているわけです。
ご理解いただけませんか?
Posted by nekome at 2009年07月15日 22:15
誘導&突っ込み記事をあげましたー。アキバBLOGに取り上げられたので、熱い思いを伝える事はできたんじゃないでしょうか。2号で改善が見られればいいなぁ。

Posted by あむぁい at 2009年07月15日 22:33
>あむぁいさん
後ほど読ませていただきます。
まあわたしの説明もところどころすっぽ抜けていますので、さらに修正を加えることになると思いますけれども。
Posted by nekome at 2009年07月16日 17:55
アドバイス記事作ってみたよんw
Posted by あむぁい at 2009年07月18日 22:58
ありゃ!?

a person, especially a man, who feels that they should have been the opposite sex, and therefore behaves and dresses like a member of that sex

のsexを肉体的性別って、訳しちゃったんですかー。それはBADですよ。スカートを穿くとか、お化粧をするとか、女の子らしい仕草やふるまいをする、って事はまさに”社会的文化的な性差”であって、肉体的性ではないでしょう。そのsexは『性』と素直に訳さないとダメですよ。sexを肉体的性と取るかどうかはその文脈から判断すべきであり、なんでもかんでも肉体的性って訳してはいけません。
後の方のsexは社会的文化的な性の話。そうなると前の方を”肉体的な性”と訳すのは無理ですよ。単なる”性”としか訳せません。
あと、仮定法過去完了が翻訳に反映されていませんよ。『仮定法過去完了(Subjunctive Past Perfect)とは、動詞および助動詞の過去形+完了形を用いて過去の事実とは反対の仮定、想像、実現不可能な願望を表現する。』ですよん。
「自分たちが反対の性であるべきと感じており、それゆえに異性のように振舞ったり、異性装をしたりする人、特に男」のままの方が良かったです。
Posted by あむぁい at 2009年07月20日 17:47
日本で「TS」って言葉は「肉体が女性になる」という意味で浸透してるから、翻訳や定義とかは関係ないと思う。

「アルバイター」って言葉が日本では「正社員じゃない、仕事をする人」とか「勉学の傍らで仕事をする人」という意味(大体)。
だけど、ドイツじゃタダ単に「労働する人」という意味。

翻訳はどうあれ、こういう風に日本では定着してるのに、内容が女装ばかりの本を「TS」を銘打つ、もしくは匂わせる売り方は、卑怯。そう思う。
Posted by at 2009年07月20日 19:37
>あむぁいさん
いや……ちょっとその否定の仕方は強引でしょう。
日本語としてわかり易い訳文にしたつもりなんですけれど、ご不満なようでしたら直訳を載せましょう。
「異性である筈だったと感じる人物、特に男が、その為にその性の一員として見なされる振る舞いや服装をする」
です。

「肉体的性別」と訳しているのは、正確な理解を助けるためですよ。
まず、これはわたしが説明をすっ飛ばした部分でもあるんですけど、
「異性である筈だった」
なわけですから、この文章は性同一障害の説明なのです。そこは訳文からご理解いただけているのでしょうか。
そして、「性同一障碍の男」というのは、「自身が感じる肉体的性別」すなわち「女」が身に着けるような服を着たり、それらしい振る舞いをすると書いてあるのです。
「性同一性障碍」の人間にとって重要なのは「肉体的性別」が自身の意識と異なる、という点ですよ。服装や振る舞いのみに憧れているのではありません。「自身がそうある筈だった肉体的性別」に近づくため、それらしい服装や振る舞いを用いるわけです。
「社会的文化的な性」だけを求めているのではないのですから、「肉体的性別」と書かなければ誤解が生じるではありませんか。まさに、今あむぁいさんが陥っているように。

そして、辞書に
「異性である筈だったと感じる人物、特に男が、その為にその性の一員として見なされる振る舞いや服装をする」
が載っていることが意味するのは、
「性同一障碍はTSに含まれる」
ということ。
性同一性障碍についての説明である以上、言外に「可能ならば、自身の肉体的性別を本来の性別にしようとする」という意味が含まれますから。
そして、性同一障碍を扱った創作物も存在し、その中では異性装も描かれる。
だが、それをもって「異性装もTSに含まれる」と結論するのは誤り。
何故なら、単なる異性装は「肉体的性別の変化」という最終目的地がないからです。
――はい、すっ飛ばし部分も含めた再説明でした。これも簡易版ですけど。

>名無しさん
翻訳を持ち出しているのは、「その語が本来持つ意味」を無視して話し出すと、結局は思い込み同士のぶつかり合いになってしまうからです。
それは不毛ですから。
まあ、結局は発言者次第なんですけど。

画報がリサーチを怠ったのは間違いなく、かような商法は非難されて然るべきもの、ですね。
Posted by nekome at 2009年07月22日 20:58
なんか色々都合よくスライドさせてる人たちがいるみたいですけど、このエントリで言ってるのは
「単なる異性装はTSには含まれない」
ということですよ。

「辞書にこう載ってるけど誤解しないでよ」と言ってるのに、何で前説明がメイン扱いされてるんだか……。
Posted by nekome at 2009年07月22日 22:52
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