2009年05月13日

連戦連勝は強さを意味しない『迷宮街クロニクル』

 どんなにレベルアップしてもHPも防御力も上がらないし蘇生魔法も覚えない。勿論、どんな重傷でも即座に全回復するような便利アイテムは存在しない。
 そんなRPGがあったら、消費者にはそっぽを向かれてしまうでしょう。
 しかし、そんな「RPGのような世界でありながら、ゲームのような都合の良さを排除した世界」を描いた小説は――とんでもなく面白かった!

 林亮介『迷宮街クロニクル@ 生還まで何マイル?』(GA文庫)
    『迷宮街クロニクルA 散る花の遺すもの』


 話題に完全に乗り遅れ、今ごろ読んだことを悔やまずにはいられない……。
 やばいぐらいに面白かったです。
 
 現代日本の京都に、突如出現した地下迷宮。
 そこに蔓延る怪物の死体からは、人類では調合困難な化学物質が大量に抽出できて、手に入れば多額の利益につながる。
 かくして、命懸けで地下ダンジョンに挑む探索者が集う街、「迷宮街」が出来上がった。
 探索者や、探索者と関わる多様な人間たちのドラマを描いた群像劇。それがこの小説です。

 この作品の特色を表わした一文を挙げるなら、なんといってもこの言葉。
「ここでは、人が簡単に死ぬらしい」

 冒頭でも書いたように、どんなにダンジョン探索RPGっぽい舞台でも、どんなに怪物を倒そうとも、ゲームみたいなレベルの上昇なんかは発生しない世界です。
 上がるとしたら、せいぜいSTRやAGIぐらいでしょうか?
 LUKなんて上げようがないですし、何より致命的なのは、HPが上がらないこと。伝説級の防具だって存在しない。
 常に一撃死の危険が付きまといます。特殊攻撃だろうとなかろうと。

 だから、街中にその強さが知られてる人でも、信じられないほどあっけなく死んでしまうんですよね。
 読者の誰もが通った道だとは思いつつも、
「ここでは、人が簡単に死ぬらしい」
  この一文が出たときの衝撃は、凄まじいものがありました。
 以降、まったく気が抜けません。
 死にフラグが存在しないことが、こんなにキツいとは……。
 2巻の展開も容赦がなく、つくづくこの作品世界の非情さを思い知らされます。

 それでも、読み進めずにはいられないんですよねえ。
 最近しばしば目にするようになった「Web小説の商業作品化」なんですが、半端なく上手い。
 よくぞ、老若男女さまざまな何人もの人物の心情を、ああも見事に書き分けられるものです。各キャラクターの日記やメールの文章まで駆使していて、それがまた自然なことにも唸らされます。

 
 死亡率14%は伊達ではなく、「この作品世界で生活してみる」妄想にもちょっと躊躇してしまう世界。
 けれども……ああっ、無性にダンジョン探索型RPGがやりたくなるっ!!
 ……そういえば、手元には何故か、手付かずの「世界樹の迷宮U 諸王の聖杯」が(爆)
 いや違うよ! 最近買ったんじゃないよ!
 昨年末にね? こう、熱にうかされてて(比喩でなく)、プレイする時間のあてもなかったのに買っちゃったんですよねえ。
 ああなんて余計な買い物をしたんだと思ってたんですが、まさか今になってやりたくなるとは(^^;
 まったく思わぬ刺激をしてくれたもんです、この小説も。

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