2009年05月09日

王道TSラノベ、襲来『とぅ うぃっち せる!』

 変化球な作品というのは面白いのですけれど、それはあくまで直球な作品がそれなりの数出ている前提で光るもの。
 王道というものを示してくれる作品は、絶対に欲しいものなのです。

 しかしまさか、この方向からそんな直球が放たれるとは――
 やってくれたな一色銀河!!

 一色銀河『とぅ うぃっち せる!』(電撃文庫)

 正直に言ってしまいますと、強い期待はしていなかったのです。一色銀河さんのことを知ったのは『若草野球部狂想曲』。これはもう大変好きな作品でして、魅力的なスポ根書きの作家さんとして貴重な方だと思っているわけですが――スポ根モノ以外が、どうにも苦手そうに感じられまして。
 しかも不振続きの後のTSモノとなると、「最後の手段」っぽさを感じずにはいられなかったわけですよ。
 そういう状況で書かれたTSモノが、果たしてこちらの評価に耐える出来なのか。そういう不安があったのです。
 が、蓋を開けてみると……。

 TS好きでライトノベルを読む人間なら、買わないことは許さない。
 そんなことを言いたくなる作品でしたよ! ええい降参だ!

 TSに至るまでの日常・各キャラクターの描写。バッチリ。
 TS後の「気付き」の描写。バッチリ。
 女の子の体を得た少年(主人公)の「年齢相応な健全度」。バッチリ。
 TSに起因するドタバタやサービスシーン。バッチリ。

 オチ――おおっと、これは言えない!

 まさか。
 まさかここまで、こちらの望むものを押さえてくるとは……!
 ス、スパイだ。スパイがいる(笑)


 さて、そろそろ作品の中身を説明しないわけにもいくまいよ。
 人見知りの激しい小柄な金髪少女・美鈴川エステルと、淑やかで礼儀正しい少女・黒瀬さくらはいつも一緒。
 そんな二人をいつも眺めていた主人公・小林遼平は、夜に出歩く二人を追いかけて学校に忍び込んだ結果、非現実的な戦闘に巻き込まれ、体を串刺しにされて死んでしまいます。
 次に目が覚めた時には、美鈴川の屋敷のベッドの上。
 体は憧れの人、黒瀬さくらになっていました。
 なんでも、美鈴川は魔女の家系であり、主人公たちの住む土地を代々管理しているのだとか。そして、戦闘に巻き込んで死なせてしまった遼平を助けるため、急いで魂を肉体から切り離し、さくらと肉体を共有させたというのです。
 さくらの魂は普段、遼平(さくらボディ)の隣に浮いており、素質のある人にしか視えない状態。遼平を含めた魔女関係者とは会話可能です。
 分類的には、精神同居系の憑依モノということになりますね。
 遼平の肉体を修復するまでは、この状態で過ごすことになります。

 ショックを受けつつも、さくらの体で喜んで着替えようとする遼平に拍手!
 いやまあ、ウブな反応する子も可愛いんですけどね?
 やっぱり年頃の男の子ならさあ! 積極的に楽しもうとする子は絶対いるはずなんですよ!
 勿論バランスは大事なんですけどね。
 あんまり欲望に忠実なキャラでも、その後の展開に支障が生じますし。ラノベの限界線まで行かれても、人を選んでしまいますから。

 ちなみに、さくらの正体は人ではなく、元黒猫の使い魔。
 美鈴川に仕えるガーディアンです。
 使い魔であるがゆえに、遼平に課される制約もあり、これが色んな場面で利いてきます。上記のような状況や、それ以外でも。

 美鈴川の使い魔であるさくらになっている遼平は、立場としても、遼平本人の意思としても、魔女である彼女と常に共に過ごすことになるのですが――
 うん、面白かった。障害の乗り越え方など多少もどかしいところもあって、山場の展開にはもうひと工夫欲しいところではありますが、それを差し引いても満足できる。
 脇キャラも揃って良い味出してましたしね。
 粗暴で偉そうだけど、大事なところで気を遣う水落静久がかなり好みです。
 あと、和食に挑戦できると聞いて静かに気合を入れる自動人形さんとか、外見がやたらと若い奥様も(爆)
 そして、あのオチは巧いっっ!!
 いやあ、そう来るとは。確かに理屈も通ってるし……やってくれるっ!

 繰り返しになりますけど、「TSモノのライトノベル」としてかなり高い評価になります
 TS描写がお飾りではなく、読み物としてもそれなりに面白い。こんなバランスの商業作品が今、電撃から出てくるとは。
 ううん、参った。
posted by nekome at 18:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 感想・小説・TS
この記事へのコメント
うわー。それは、楽しみですね。
こちらは、月曜日か火曜日じゃないと入らないらしいのでorz
Posted by みのむー at 2009年05月09日 21:02
>みのむーさん
ええ、これはもう、楽しみにしておいて損はないですよ。
悔しいぐらいに大事なところを押さえていました。
今まで、それが出来ない作品がどれだけあったと……。
まさか一色銀河さんが書くとはなあ。
Posted by nekome at 2009年05月10日 08:28
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