2009年01月23日

リアル寄りのTS? 「逆まわりの世界」

 そのままの姿で「性転換」したセカイへ。海野螢「逆まわりの世界」(たまごまごごはん)

 うはあー、こっちに話題振られてるぅーっ!?(汗)
 えー、それでは、一応この界隈の外の人を意識した記事を書いてみましょうか。
 あ、昨日朝イチで注文したのが正解だったようで、『ぺたふぇち5』は今日帰宅するまでに届いてました。

 んーと、まずリンク先の記事における「性転換」という言葉は、TSファンが言うところの「変身モノ」と同じようなニュアンスで使われてるみたいですね。
 ここ押さえとかないと混乱してしまうので。
 TSファンの感覚ですと、憑依とか入れ替わりとか変身とかその他諸々全部ひっくるめて性転換モノ――TS(transsexual)モノという扱いになるんですよね。
 言葉を厳密に解釈すれば、本人の肉体が異性のものへと変化した場合のみが「性転換」と言えます。
 けれどもフィクションとしてのTSを語る場合には、他人の肉体を手に入れた結果異性となる場合も「性転換」に含ませてもらいます。この界隈の人間にとって、最優先事項は「後天的に、男が女になること」ですんで、手段は二の次です。いや、手段も重要なんですけどねー、萌え方に影響しますから。
 後天的な変化であり、かつ最初は男性的人格であることも重要なんで、「キョン子作品は一部、TSに該当するが、他多くの作品は該当しない」ということになるわけです。

・性別が変わったら容姿も変わる?

 さて、前置きはこのぐらいにして、話題に上がっている「逆まわりの世界」の話。
 これすっごく珍しいですね。この界隈では不利にすら働く珍しさですが。何しろ「容姿が変わらないまま、肉体が異性になっている」んです。TSファンは、「男が美女・美少女になる」ことを好みますからねー。
 ……ふむ、となると「変身モノ」という言葉でも、たまごまごさんの意図するところとは若干ニュアンスが変わってしまいそうですね。
 もっと厳密に、相応しい言葉を探すのなら、「女体化(&男体化)」が良いのかもしれません。精神面が元の性別のままなんで、「女性化(&男性化)」とは呼ばない方向で。
(※追記:誤解を招いたかもしれませんが、「この呼び方が普及している」「この言葉の使い方が正しい」という意味の文ではありません。
 「リアル系」というと手術を連想しますし、難しいところです。あと意味が合いそうなのは「変異系」でしょうか)

 話が逸れましたが、何故TSファンにとって「容姿が美しくなる性転換」が好まれるのか。
 これは説明するまでもないかもしれませんね。
 やっぱり、折角なら「可愛くなりたい」。
 あるいは、「可愛くなった子を見るんでなければ面白くない」とゆー思いがあるわけです。
 「俺の顔は、女になっても通用する美しさだぜ!」なんて思ってる男性TSファンは、まずいませんしね。むしろ、今の容姿からかけ離れた方が嬉しいのです。
 「科学的には女性」レベルでは満足できない。
 肉体からは、極力「男っぽさ」を取り除きたい。精神面にだけ男らしさが残っていれば良いのです。

 そういった願望の行き着く結果、「変身モノ」ですら受け入れられない!という人もいます。
 「自分の肉体が変化したものなんて、いかに完璧な外見であっても、「本物の女性の肉体」とは思えない、浸れない。男の肉体から逃れた気がしない」という感覚ですね。
 その場合、もういっそ「生まれついての女性の肉体」を手に入れないと満足できなかったりします。
 また、「他人の肉体を使う」ことに興奮を覚えるケースも多いですね。
 こういった感覚の持ち主は、第一に憑依モノを、次点で入れ替わりモノを好む傾向があります。
 特に女性化願望があるわけでもなく、傍観者として楽しみたいだけの人であっても、その辺は似たようなものですね。

 ――とまあ、そんな風に、「変身モノ」ですらNGな人がいるぐらいですから、「男の身体が変化した結果としての女の身体」であっても、美しくなるのが当然というわけです。
 普通に考えれば、ただ性別が変わったぐらいでは、容姿まで劇的に変わることはありません。
 しかし、大多数に求められているのはファンタジー。
 TSによって生じる容姿のギャップは大歓迎なのです。
 同人ゲーム「ふたば☆ちゃんねる」では男子大学生がロリ美少女に変わってしまうわけですから、もうとんでもないギャップです。
 だが、それがいい。

・商業作品の中におけるTSキャラの容姿

 では商業作品において、TSのビフォアーアフターで大きく容姿が変わるキャラが多数を占めるのかというと、むしろその逆です。
 憑依モノや入れ替わりモノであれば、それは当然、はっきり外見が違います。双子を除きますが。
 しかし変身モノですと、「元々女顔だった」が多数を占めるのですね。漫画のみならず、エロゲもその傾向が強いです。

 これは正直、濃いTSファンにとっては物足りない状況です。
 「可愛くない者が可愛くなる」ことに意義があるのであって、「可愛い子が可愛い子になる」のでは、ありがたみが半減してしまうのですね。
 極端な醜男を出せとは言いませんが、せめて普通に男らしいキャラを使ってほしい。
 にもかかわらず、「可愛い(男の)子が可愛い(女の)子になる」という作品の方が多い。
 ぱっと思い浮かぶ理由は、二つあります。

 まず「作者(スタッフ)が、TSにさして思い入れ、理解がない」場合。
 なんか最近そういうのがウケるみたいだから、なんて安易な理由で手を出した場合は、TS描写が浅くなってしまうのも当然ですね。

 しかし、TSキャラが元から女顔ならば即ちTSへの理解がないのかというと、そんなわけはありません。
 「より多くの読者に受け入れられるため」という理由が考えられるからです。
 TSファンは「TS後の外見から男性要素を排除」することを望みますが、一般読者層の場合、それに留まりません。TS後のみならず、そのキャラの過去からすら、男性要素が取り除かれることを望む人が少なくないのです。
 TSライトノベルの表紙イラストに対して、「これが男の子だと思うと悲しくなりますが」みたいなコメントが付いたりします。
 また、杉井光さんの『ばけらの!』には、『狼と香辛料』作者である支倉凍砂さんをモデルにした狼耳ヒロイン、「葉隠イヅナ」が登場しますが、彼女に本気で萌えるのは難しいという意見が大勢を占めます。特に、支倉さん本人を知っている人の間では。
 某ラノベ読みの人も「モデルとキャラは別人なので、葉隠イヅナ萌えとか余裕です」と言っています。
 そう、言い換えれば、「別人だと思わなければ萌えられない」のです。
 美少女キャラから漂う男臭は、彼らの萎えを誘う。
 一般読者層を相手にするのならば、「美少女キャラが美少女でなかった時」の描写は、薄ければ薄いほど良いというわけです。

 文章ならともかく、漫画であれば、なおのこと「男だったころ」というのは描き難いでしょうね。
 やはり、視覚情報というのはインパクトが強いです。
 下手に男臭いキャラを描いてしまうと、そのイメージが後を引きかねません。


 ――となると、ううん、「逆まわりの世界」はますます商業的に厳しい方向性の作品ということになりますね(^^;
 けれど、不利な要素が多いということは、魅力がないという意味にはなりません。 


・リアル寄りのTS? 「逆まわりの世界」


 受け売り混じりであることを、先に断っておきますねー。
 まず、上のほうで言ったように、本来、性別が変わったぐらいでは、容姿まで劇的に変わることはありません。
 と言いますか、外見的特徴は、厳密に男女を判別する際の指標足り得ないのです。
 ほら、(生前の)外見がどんなに可愛くても、貞子は男だったじゃないですか。
 科学的には、男女の区別は「Y染色体の有無」なのです。

 けれども、そういう意識は社会一般に浸透してませんからねー。
 それに加えて、高いファンタジー性が歓迎される創作TS界隈。そんな「厳密な意味での性転換」が描かれることはそうありません。
 リアル志向な人間は、ファンタジー全開なTS作品群に対して「なんか違う……なんか違う!」という思いを抱いていたりするわけです。
 そんな人にとって、「逆まわりの世界」は非常に貴重なリアル寄りのTS作品ということになります。

 さらに、わたしが感じたこととしては。
 「容姿の変化」を取り除いたことで、「性別の変化」に集中して描く・読むことができる、という利点があると思いましたね。
 ほら、容姿が変わらないということは、「容姿の変化を理由に、周りからの扱いが変わる」ということがない、ってことになります。
 簡単に言うならば「急に可愛くなってちやほや」とかは起こらないのですね。
 そして、余計なことに煩わされない若者たちの興味は、必然、自身の変化の一番肝心なところへ集中するというわけです。
 当事者以上に、読者もそこに集中せざるを得ません。
 うあー、もう、これ長編でじっくり読みたかったなあ。掲載できるとこなさそうですけど、短すぎるのが惜しい。せめて3話あれば。

 あと、こっちにも言及しとかないと。
 女の可愛らしい顔立ちのまま男の身体になっちゃった女の子。この子が出てくるのが良いんですよね。
 突然自分の身体に生えてしまった男性器に対して「でも…なんか…男の人ってこんなのつけてて邪魔とか思わなかったの?」と言うところとか、やたらリアルっぽさを感じます。
 そして、経験したことのない男性の快感に驚き、押し流されていくさま。ここは実にポイントが高い。

 入れ替わりであれ変身であれ、男の身体になった女の子が、男の肉体の感覚に戸惑ったり、性欲に押し流されて暴走してしまう描写というのは、この界隈でもちょくちょく見かけます。
 (男体化そのものを好む人間は少ないんですけどね。少ないだけで、確実にいますけど)
 やっぱり倒錯的な喜びがあるんですよね、女の子に男の感覚を経験させるというのは。
 あと、「男性の体になった女性」に対してこそ、男は確実に優位に立てる、というのがあるかもしれないです。
 なにしろ、男の体は知り尽くしています。外からは本当にイったかどうかもわからない女の体とは違うのです。
 もはや「未知の存在」ではない。これは大きな安心感につながるんじゃないですかね。


 ふひー。
 あっちを拾いこっちを拾いしながら書いてたら、えらい分量&時間がかかってしまいました。
 これでもかなり端折ってるんですけど。
 TSエロ漫画の紹介と組み合わせたり実例挙げたりしながら書きたかったんですけど、とてもそんな余裕はありませんでしたわ。
 このブログでは最近読んだ本の記事しか書いてませんから、思い入れのある作品なんかは、一度きちんと書いておきたいですね。
 特に、おがわ甘藍さんの「チェンジング・ツアー」(『甘美少女DX』に収録。DL販売もあり)とDISTANCEさんの『堕ちる天使』1巻は外せない。
 時間がありましたら、またその辺の話も。

この記事へのコメント
私とかは、容姿が変化せずに性別だけが変化する場合には「変身(trans)」ではなく「変異(mutation)」という言い方をするのが好きー。<勝手に用語作るな(爆)

TS女体化ものと見せかけつつ、実は女装少年萌えな話とかを作る場合には、女体化してクラスメイトの男子が露骨に態度変えて、一方で女子の男子には見せない黒さも知って微妙に人間不信に近くなった時に、女体化前と主人公に対する態度が全く変わらない幼なじみの女装少年に――とかそういうのはすごく好きなんですけどもね、うん。
Posted by Alena at 2009年01月24日 00:46
初めてだけどちょっとつっこみたいとこがあったので言わせて頂きます。

>もっと厳密に、相応しい言葉を探すのなら、「女体化(&男体化)」が良いのかもしれません。精神面が元の性別のままなんで、「女性化(&男性化)」とは呼ばない方向で。

某所で見かけたんですが、女体化は定義としてたぶん合わないと思いますよん。
アドレス参照です。


それと上記の分が受け入れられるならあまり意味のない指摘になりますが、精神面が異性に変わるのが「女性化(&男性化)」と受け取れそうな書き方になってますけど、精神女性化しない女性化もずっとこの界隈じゃ女性化ということになってて「精神変化しないTS」愛好家もずっといるんです…

精神面が異性に変わるのは少年少女文庫でも昔からタグがついて分けられるようになってる「精神女性化(&男性化)」というジャンルでして、まあ、たいがいの作品で後半はこのタグがつくんですが、棲み分けられるようになってるわけなんですよ。

このあたりを無視して肉体が変化するのと同様に精神面が異性に変わるのが女性化(&男性化)と言われたうえ、それをTSの代表的な考え方として外部に発信されてもちょっと困る。

我々のことも少し考えて貰いたいなぁと思う次第。
Posted by とおりがかり at 2009年01月24日 01:04
>Alenaさん
>「変異系」
いっそそういう新しい言葉を当て嵌めた方が良いのかもしれませんね。
既存の言葉だと他の使われ方と混ざっちゃってややこしい。

――って、後半趣味全開になってるっ!(笑)
うん、読んでみたいですけどさ。

>とおりがかりさん
誤解を招きかねないのは確かでしたので、追記にて説明しておきました。

ただ、ご理解いただきたいことはいくつか。

一つ。女体化云々は「この状態を説明する言葉として、より意味が近いのはどれか?」という文脈の中における発言です。
悩みながらの提案であって、言葉の定義を断定するような言い方は用いていないつもりです。
少なくとも、「精神変化しないTS」を否定するような発言は一切存在しませんので、読み返していただければと思います。

一つ。Wikipediaはソース足り得ません。
あれが保証できるのは、あくまで「こういうことを主張している人がいる」というところまでです。
普遍的真実が書かれているわけではありません。
今後は発言の根拠に利用されるのは控えることをお勧めいたします。

一つ。外部に主張を発信する権利は、わたしが独占しているわけではありません。
貴方の考え方に合わない意見が、あたかもTS界を代表する意見のように扱われてしまうことに不満があるのでしたら、ご自身でサイトを立ち上げ、同じように意見を発信すれば良いのではないでしょうか。
このジャンルにそれなりの期間関わっているのでしたらご存知だと思いますが、TSは嗜好が細分化し、かつ小ジャンル間の対立が起こりやすいため、すべての嗜好・思考を網羅した解説を用意するのは困難です。
ならば、一人にすべてを語らせるのではなく、各人が得意な分野、愛情を抱いている分野について大いに語ってくれれば良い。
情念は建設的に活用しないと、楽しくありませんよ。
Posted by nekome at 2009年01月24日 20:59
長文お憑かれさまです!
非常に良くまとまっていて感動しました。
後出しですが、自分も同じように考えていました。(乗っかっておこう的な)

全面的に支援しますので、これからもこういったコラム、楽しみにしてますね。
Posted by Mk-弐 at 2009年01月25日 02:26
気を悪くされたようなのでまずは陳謝を。
ごめんなさい。
たしかに重箱の隅をつつくような只の言いがかりにも見え、不快を誘う書き方でありました。

しかし誤解もあるようなので少しの反駁を。

まず、こちらの立ち位置を明確にしておきます。
こちらはnekomeさんの文章は【内容的には】過不足無く命題の漫画を説明できていて同意できると考えています。
しかし、その説明の【表現】につっこみどころが2点ありました。

1:「女体化」という言葉を、『自作の言語として文脈上使用された』点において、この言語は【別の場所で別の意味を持つ】ためこの文脈を論拠とし、ここより離れて使用された場合にnekomeさんの意図とは別に【混同がおこり混乱の元となる】可能性がある点。

2:一部のみを抜粋すると精神面が異性に変わるのが「女性化(&男性化)」で体のみが異性に変わるのが「女体化(&男体化)」と受け取れそうな書き方になっている点。

普通ならばそのまま気にもしなかったことなのですが、今回の記事が他所より説明の欲求が回ってきたものでTSFというものを知らない人間が読み、文言どおり信用する可能性が高いだろうと判断し、懸念が将来的に発生するならあまり良くないことなのでコメントしたわけです。

この表現の問題点においては理解して頂いたようで若干の修正をいただきました。

しかし、つっこみどころ以外に言及した部分は誤解されたままの様子で長々とご指摘を頂きました。
誤解を残しておくのは心苦しいので弁明をさせて頂きます。

わたしはnekomeさんが「精神変化しないTS」を否定しているといっているわけではないのです。
そのようなことは一言も触れず気にも留めていなかったのが文脈から見て明らかです。
これは、現状の説明の表現が問題を生じさせた【結果】、「精神変化しないTS」が否定されるようになると言ったわけで、これは【放置した場合に発生する問題】と言ったわけです。
それを好む人間が居ることと精神女性化のジャンルの存在については確かにミスリーディングをさそう蛇足で、申し訳ありませんでした。
でも、この心配は杞憂でしょうか?
人口に膾炙した言葉というものは独自に変化をします。
ツンデレが良い例でしょう。
勝手に誰かによってカテゴライズされいつの間にかあったはずの居場所を失うというのは二度と見たくは無いのです。

以上、長文と無礼な文言、失礼しました。
Posted by とおりがかり at 2009年01月25日 03:23
>Mk-弐さん
お読みいただき、ありがとうございます。
いやあ、当初書こうと思っていたことの半分〜1/3程度なんですけどね(^^;
「憑依・入れ替わりは苦手だけど変身は好き」な人の説明とか、他色々入れられなかったっ。

各嗜好の把握にはそれなりに自信があるつもりですが、作品の傾向とかになると……データが欲しくなりますね。
誰かデータベース作ってくれないかしら。あるいは、一大レビューサイトとか。

>とおりがかりさん
丁寧な再説明、ありがとうございます。
とおりがかりさんが懸念されている点については、理解しているつもりです。
>勝手に誰かによってカテゴライズされいつの間にかあったはずの居場所を失う
外部からの定義付けに抗しきれなくなるのは恐ろしいことです。対応できなければ、衰退あるのみ。
まさに、そういう事態を防ぐためにこそ、充分な発信能力を持った人間が相当数必要なわけです。
しかし、同人サークルすら僅かしか存在しないTS界は、発信能力が極めて低いジャンルだと思われています。
この状況に危機感を抱いている人には、是非次代の発信者として立ち上がっていただきたいものです。
Posted by nekome at 2009年01月25日 09:32
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/25833832
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
banner4.jpg