メインストリートから外れているとはいえ、それなりに人はいる。華やかなチア衣装で歩いている二人には、主に男性から、ちらちらと視線が向けられていた。
「なあ、やっぱり見られてるよなあ、俺たち」
「そりゃあそうだろう。こんなに可愛くてスタイルもいい娘が、短いスカートひらひらさせて歩いてるんだ。本当ならじっくり見たいとこだろ」
「ま、気持ちはわかるよなあ。へへっ、こっちは眺めるどころか、その身体を自由に操れるんだけどな――こんな風にっ!」
由梨――身体を支配しているのは清人――はニヤッと笑うと、突然自分のプリーツスカートを捲り上げてみせる。すれ違った男たちがぎょっとして立ち止まった。
「おいおい、あんまり目立つなよ」
「サービスだよサービス。いいじゃん。こんな格好してるんだから、自分のカラダには自信あるだろうし、見られるのも快感なんじゃねえの? どうせアンスコ穿いてるしな」
「……それもそうだな。じゃ、俺も少しだけ御裾分けだ」
早紀――身体を支配しているのは祐介――も自分のスカートの後ろをぴらりと捲り、アンダースコートに包まれたお尻を見せ付ける。後ろを振り返ってみると、案の定、数人の男たちが目を見開いて硬直していた。
「ははっ! 凄え顔してやんの、あいつら。……で、これからどこ行くんだ? 本当に保健室で楽しむのか?」
「いや、他はどうだか知らないけど、この大学の保健室はかなり狭っ苦しくてな。ベッドでゆっくり休んでいきなさい、って雰囲気じゃないんだよな。そもそも、確実に養護担当の人間がいるだろ」
由梨の問い掛けに、大学内を熟知しているらしい早紀が答える。
「だからいっそ、普通の教室の方がいい。今は学祭期間中だ。展示とか模擬店に使われてないところなら、他の人はまず来ない」
早紀の先導によって、二人は教室棟のひとつに足を踏み入れる。入口周辺こそ、学祭らしくチラシだらけの壁やら看板やらが目に入り賑やかだったが、半地下のフロアに降り、奥へ進んでいくと、飾り付けも人気もまったくなくなった。
「な? だから、こういった奥にある、それも展示に向かない階段教室ってのは、自然と無人になるんだよ」
そう言って早紀が開けたドアの向こうには、彼女(否、彼というべきか)の言葉どおり、誰にも使われていない緩やかな階段状の教室があった。
二人は教室の後ろのドアから中に入ると、室内の階段を下りながらカーテンを閉めていく。全てのカーテンを閉め終わると、教室の一番前、教卓の横の平坦なスペースで向かい合う。
「ま、念のためこうしといた方がいいだろ。騒ぎになっても面倒だからな」
「同感。で、どうする? 早速レズるかい?」
品のない笑みを浮かべながら、由梨が訊ねる。
「そうだな……俺はちょっと、早紀の意識を呼び起こしてみるよ。顔以外は俺が動かすからさ、お前は好きなように合わせてみたらどうだ?」
「おおっ、そいつは面白そうだなあ! じゃ、しっかり楽しませてくれよっ!」
意識を集中するかのように、早紀が目を閉じる。
「よし、ちょっと待てよ…………ん……んん? あれ? どこ、ここ……? え、教室?!」
目を開けた早紀は、何故自分がここにいるのかがわからないらしく、しきりに瞬きをしながら、周りを見回している。と、すぐ傍に由梨がいることに気付き、慌てた様子で話し掛ける。
「ゆ、由梨? ね、ねえ、なんでわたしたち、教室にいるの? 確か、さっきまでグリーンエリアで演舞やってて……それで、終わったから部室に戻ろうとして……あれ? え、あれ?」
しかし、友人の混乱した姿を見ても、由梨はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたままだ。
「ちょ、ちょっと、笑ってないで教えてってば。わたし、ここに来るまでのこと、何も憶えてないんだけど……。ねえ、何か知ってるの? どうなってるの?」
「やだなあ早紀ったら。早紀がわたしを連れて来たんだよ? 面白いものを見せてくれるって言ってさ。くくくっ」
「わたしが?! やだ、本当に憶えてないんだけど……というか、そんなこと言ったの? 面白いものって……何よそれ」
「え〜? それは勿論……その色っぽい格好をフル活用した艶姿なんじゃないっ?」
「は? ちょっと何言って……え? な、何っ?! ひゃっ!」
由梨の異常な発言を問いただそうとした早紀だったが、喋っている最中に突然後ろを向くと、由梨に向かってぐいっとお尻を突き出す姿勢をとってしまう。しかも、そのまま腰をくいっくいっと左右に振り始めた。
「うはは、そうそうコレコレ! ダンスの振り付けの中にあったんだけどさあ……格好良くも見えたけど、いかにも男を挑発してるみたいな動きだよねえ。あ、でも今の早紀はわたしを誘ってくれてるんだよね? ふふ、興奮してきちゃうなあ」
後ろに突き出しているせいで、お尻の大きさがより強調されているように見える。ギリギリまで太腿を晒した、ヒダ付きのスカートがひらひらと揺れるさまも扇情的だ。
「え、ええ?! な、何馬鹿なこと言ってんのよっ! ふざけてないで止めて、止めてよっ。身体が勝手に……くうっ、動いてるんだからっ」
「くふふっ、早紀こそ馬鹿なこと言わないでよ。身体が勝手に動くなんてこと、あるわけないじゃない。知らなかったなあ、早紀がケツ振って女友達を誘惑するような変態だったなんて」
「違うってばっ! わたしがこんなことやりがたるわけ……も、もうっ! なんで止まらないのおっ!?」
自分の望みに反して、恥ずかしい振る舞いを続ける肉体。そして、そんな自分の言葉を笑い、酷い言葉を投げつける友人。恥辱と困惑とで早紀の顔は歪み、真っ赤に染まっていた。
「うーん、お尻はもういいや。今度はさあ、開脚跳びやってよ。アンダースコートを思いっきり見せちゃうやつ」
由梨はその場にしゃがみこむと、いやらしく笑いながら早紀を見上げる。早紀の腰から太腿にかけて、じっと熱い視線を投げかけている。
「はあ? なんでそんなことやらなきゃ――ひゃうっ?! わ、わわっ?」
口では――いや、表情からして、本心から拒んでいるのに、由梨の要求どおり、その場でジャンプをしながら脚を大きく左右に広げてしまう早紀。演舞の時と同じように、股間にぴったりフィットした紫色のアンダースコートが露わになる。
「いいよいいよ! もっと見せてもっと! 凄い格好だねえ、ホント。アンスコなんて言ってもさあ、色のついたパンツみたいなもんだよね。こんなもの堂々と見せ付けてんだから、よっぽど恥ずかしい格好見られるのが好きなんだよねえ。下着でも平気なんじゃないの?」
「そ、そんなわけないじゃない! アンタちょっとおかしいよ!」
「ええー? それじゃあ、演舞でもないのに、それも、わたしが欲情してるって知ってて、そんな格好見せてくれる早紀は? 変じゃないの? 嫌ならやめてもいいんだよ」
「だ、だから……身体がいうこと……きかないんだってばっ! し、信じてよぉ!」
だが、どんなに懇願しても、由梨はそのおとなしそうな顔立ちに似合わない、下卑た笑みで答えるだけだ。そして、次々と早紀に恥ずかしいポーズを要求してくる。「止めて」「お願い」「違うの」。早紀は何度も、身体の自由がきかないのだと釈明するが、まったく聞き入れてもらえない。しかも、口では抵抗しつつも、身体は即座に由梨の要請に応えてしまうのだ。
「よーし、次はY字バランス行ってみようか! ――って、この名前でいいんだっけ? まあいいや、ほら、左脚上げて、固定っ!」
言われるままに、真っ直ぐ伸ばした左脚を持ち上げ、踵を左手で掴んだ姿勢で静止する早紀。
爪先は頭よりも固い位置まで上がっており、ぴんと伸びた左脚は、まるで腕と胴体に沿っているように見える。白くて引き締まった、かつ程よい肉付きの太腿が付け根まで完全に晒され、限界近くまで伸ばされ張り詰めた内腿の肉は瑞々しい色気を放っていた。
「ねえ、な、なにさせたいのよ……。わたし、なんでこんなことになってるの? アンタのせいなの? ねえ」
「さあて、なんでだろね〜。んん〜、たまらないねえ、チアリーダーのフトモモ。前からむしゃぶりつきたいと思ってたんだ。ってことで、しゃぶらせてもらうよ♪」
欲望に瞳を濁らせ、はあはあと熱い吐息を漏らしながらにじり寄る由梨。掲げられた早紀の左脚にがっしとしがみつくと、うっとりした表情で頬擦りをする。
「や、やめてよ……ひっ?! ちょっと、なに舐めてんのっ! ほ、ホントに気持ち悪いってばっ」
「う〜ん、スベスベだねえ。この美肌を味わわずにはいられないよ。んむっ、れろ〜〜っ。……うへへ、今度は齧り付いちゃおうか、かぷっ」
「ひっ。へ、変態じゃないの……?!」
嫌悪の表情を浮かべる早紀に構わず、太腿の匂いを嗅ぎ、舐め回す由梨。あさましく動き回る舌先は、徐々に脚の付け根、股間の方へと移動していく。
「さあて、早紀のアソコはどんな感触なのかなあ? むふっ」
嬉しそうに口の端を歪めると、アンダースコートに包まれた股間に鼻先を押し付ける。
「うひゃうっ? や、やだもうっ……!」
「んむ〜〜……うんっ? あれえ、なんか、もう湿ってない?」
「嘘っ!? そ、そんなわけないじゃん。あ、こらっ、そんなにぐいぐい押し付けないでっ! やめてってばあっ!」
「ほんとだよぉ。じゃ、隙間から指入れて、直接確かめてみよっか」
「なっ……! 何考えて、ちょ、そんなとこ、触んないでってば――うンっ! だ、だから、ダメだって……んくっ!」
「ほぉら、やっぱり感じてるんじゃん。それに、どんどん湧き出てきたよ。ほらクチュクチュ言ってる。早紀ってば、結構いやらしいカラダしてるんだっ」
「ち、違……感じてなんか――ひぁっ? そんなこと……あるわけ――ふあンっ!」
言葉とは裏腹に――否、本人の意識にすら反して、秘所を弄る由梨の指に反応し、愛液を垂れ流す早紀のカラダ。
……早紀の名誉のために言っておくならば、普段の彼女は、ろくな刺激や気分の盛り上がりもないうちから股間を濡らすような娘ではない。
ただ、早紀は知らないことだったが、今彼女の肉体に影響を及ぼしているのは、彼女の意識だけではないのだ。彼女と肉体の感覚を共有し、積極的に快楽を貪ろうとする、邪な男の意思。それに引き摺られる形で、早紀の肉体は刺激に容易に反応し、快感を得てしまうのだ。
(つづく)
2008年12月16日
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