神野オキナ『ぷりんせす・そーど!A 戦うサツキとヴァルキリー』(GA文庫)
えー、最初に断ってしまいますと、今巻にTS&女装関連の描写はほとんどありません。
残念でしたーっ!
一応チャイナドレスも着てるし、女体化もするんですけどね。
文中でも指摘されてますが、腰部のスリットはあまりにも深く、何故下着が見えないのかわかりません(笑)
あと胸元も結構開いてるっぽいんですが……くうっ、この描き方だとよく見えんっ!
……とまあ、悩ましい格好をしてはくれるのですが、その辺に言及されてるシーンはほとんどないのです。設定がおいしいだけにちょっとがっかり。
とはいえ、元よりラノベ読みですので、TSモノを「TSモノとしてしか読まない」なんて勿体無いことはいたしません。
ていうか、かなり面白いですからーっ。
2巻目とは思えないぐらいに事態が大きく動くのです。
冒頭の出来事は裏表紙や帯にも書かれていますが、それは大動乱の兆しに過ぎませんでした。
1巻で綺麗に整った舞台を用意してくれたので、「さあこれから暫くはシリーズ物らしく順調に物語が進んでいくんだろうなあ」と思っていたら、いきなりまったく新しい要素が、舞台への乱入をかましてくれました。
いや、存在自体は明かされてたんですけどね……このタイミングで来るのかとびっくりです(^^;
早々に盤面が変わってしまったので、まったく先が見えなくなりましたよ。
もうちょっとパターンに則ったお話を続けても良かった気がしますが……色々と狙いもあるのでしょう。不安を抱えつつも期待しています。
あと、わたしのツボに嵌った細かい箇所。
やはり笈也雅は良いキャラですね(^^
突然ニファーリアに「性転換の魔法を授けてくれ」と頼み込むのですが、その理由というのが
「このままだと、五月君が異性愛に目覚めてしまうの、リアルがフィクションを浸食するのよ!」
ああわかるっ、それはなんかわかるっ……!
マス向けなメディアの言説を聞き慣れてると「え、逆じゃないの?」と思ってしまうかもしれませんが、この台詞は間違ってないんです。侵食するんですよ、リアルはフィクションを(^^;
しかし、性転換魔法は誰にも無闇に使えるわけではないようですねえ……。
失敗すると「蝋細工の人形を暖炉のそばにしばらく置いた後、思いっきり壁か木に叩きつけ、さらに巨人の手でぐしゃっと握ったような感じに」なるのみならず「意味不明な叫び声を上げながら跳ね回りつつ闇の奥へと消えた」なんて言われてしまっては、流石のわたしでも二の足を踏みます。
ところで、バスケ部のエース三神裕太はもしかして……同士?(笑)
その気持ちはわかるぞっ……!
似合わないってのはさあ、辛いんだよなあ。理想から遠いってのはさあ。
しかも、持てる者はその価値に気付かないのです。ああ、ティシアも「持てる者」でしたな。邪魔ならその乳尻太腿寄越せっ! ……まあ、彼女は生き方が生き方ですから、仕方ないのでしょうけどー。
そして、この巻で最大のインパクトを与えてくれたのは――
なんと言っても、あのダメすぎるヴァルキリーでしょう。
最初の登場時との落差がひどいよっ! あんまりだよっ!(笑)
しかも、凋落の過程が何度も挿入されるだけに、憐れを誘います。何故ここまでされねばならないのか、何故こんなキャラになってしまったのか。
恨むんなら神(作者)を恨むんですよ、お嬢さん。
2008年09月16日
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