2014年10月05日

憑依丸‐テニス部員編‐

「そこの男子たち! 見世物じゃないのよ。フェンスから離れて!」
 ポニーテール姿のキリッとした顔立ちの女子が声を張り上げる。女子テニス部の部長、九堂香澄だ。
 厳しい表情でラケットを突きつけられ、テニスコートの周りに集まっていた男子生徒たちは舌打ちをしながら距離を取る。中にはスマホを慌ててポケットにしまっている奴もいる。一応散ったように見える男子たちだが、九堂先輩がケチをつけられない程度の場所からテニスコートに視線を注いでいる。近くを通りがかっただけの奴も、一度はテニスコートの方に顔を向ける。
 あんな短いスコートを翻しながら動き回ってるんだから、野郎どもの目が集まるのは当然だ。ちょっと動いただけで中身が見える。勿論パンツが見えるわけはない。けれども、ヒラヒラのついたアンダースコートに包まれたお尻は、充分以上に扇情的だ。
 加えて、うちの高校の女子テニス部はなかなかに容姿レベル高めな子が多い。一度散らしたところで、どうせまたギャラリーは戻ってくるだろう。

 かく言う俺――井野崎恭弥もさっきまでフェンス前で目の保養をさせてもらっていたし、すぐに再開するつもりだ。
 ただし、未練がましくうろついている連中と違って、今はさっさとコートから離れていく。
 なにもコソコソと覗く必要はないんだ。夏休み前と違って今の俺には、特等席で拝ませてもらう方法がある。まあ、ある意味これ以上なくこっそりやるんだけどな。


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posted by nekome at 14:57| Comment(8) | TrackBack(0) | 創作・憑依
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